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赤い月光に揺れる

お腹でスクスク育った大きな子宮筋腫。
子宮全摘手術を受けるまでと、その後の日々の徒然を記録します。

~第20話~

さて、いよいよ非常にデリケートな話を書いてみようと思う。

傷問題

私がこの手術を受けるに当たり、一番嫌だったのが、お腹に傷ができることだった。
我ながら良いお腹の皮膚だったのだ。
1枚皮の、ランドセルにだってできそうな艶のある良い皮膚で。

私は母も過去に同じ手術を受けていたから、子供の時からこの手術でどんな手術痕が残るのかを知っていた。
母のようにお腹に傷ができるのが嫌で嫌で…。
(ちなみに、手術から何十年も経った今は、母の傷痕はしっかり皮膚と同化して、言われないとどこにあるかわからないくらいまできれいになってる。)
何とか腹腔鏡で手術できないか?
地元の病院だと難しくても、全国規模で考えたって構わない。
私のお腹に残る傷が最小限で手術できる病院があるならば、遠いところだって構わない。
年末辺りはそのように思っていたし、実際全国の病院情報を調べた。
また、知り合いのツテで、その界隈で力のある医師に私の手術のことを聞いてみてもらったりもした。

しかし、結果はどれも「開腹手術が最も安全で適切。」というものだった。

その後、担当医師から連絡があり、通常の子宮全摘出よりもリスクの大きい手術であることを知らされ、傷痕がどうの…なんて言っていられなくなってしまった。

↓その辺りのことは第13話に綴りました↓

傷がどんな形で残ろうと、とにかく無事に手術を終えたい。
それだけに気持ちが向かうことになった。

ところが手術が終わってみて、そんな私の年末の悩みは全く無用だったことがわかった

私が想像していた傷痕

私が想像していた傷痕はこんなものだった。
傷痕が大きい場合はこんなかな?と。

医療系のドラマでも、医師が最後にホチキスみたいにガシャッガシャッとガッチャンコしてる場面が出てくる。
こんな風に線路みたいになるのだろうと思っていた。
手術直前には、せっかくだからもっと線路を延ばして、電車の絵も描いちゃおうかしら?
またはツルや葉を足して、ブドウの絵にしようかしら?
なんて考えていた。

実際は…

しかし実際は違った!
シュッと一本線。
図では生々しくないように青線で描いてみたが、実際には赤い線。
まるで荒野で赤い月光に照らされたススキの葉1枚!
水墨画のような風情なのだ。

実際の傷痕を表現した図

これには驚いたし、この傷跡を初めて見た瞬間、術後に「なんで手術なんかしちゃったんだろう?」という鬱々とした後悔の気持ちが吹っ飛んだ。
中2病的かもしれないけど、この傷跡は風流でカッコいい。
先生、気に入ったよ!
と思って、回診に来た担当医師に早速そのことを話したら…
「あー、線路みたいに縫うのは昔ね。
イマドキはみんなこんなですよ。特に産科はね。もっと大きな手術だと線路みたいに縫うこともあるけどね。」
とのこと。
とにかく、きれいに縫ってくれてありがたいと伝えたら
「あー、縫ってないですよ?
自分が切ったところの中を縫って、表は切り目を合わせてあるだけ。
あとはそれくっつけるのはBECOさんの力ですから。ケロイドみたいになっちゃうことだってあるし、それは治ってみないとわかりません。場合によっては、その線路みたいな傷痕より大きく残ることだってありますよ?」
とのこと。
あ、これはまだ完成形ではないのか?!
そして、あんなにいろいろ調べたけれど、どんな名医か?先進医療か?なんて関係なくて、
きれいな傷痕になるかどうかは結局は自分の治癒力次第だなんて?!
自分の力の結果ならば、どんな傷痕だって受け入れるしかない。
いや、そもそも自分ががんばった証だ。
どんな傷痕だって受け入れよう。
でも、それでも、なるべくきれいに治りますように…よく栄養を摂って、よく眠ろう、とあらためて思った。