ミルクボーイ風季語漫才「滝」
「どうもーミルクボーイですー。お願いしますー」
「ありがとうございますー」
「いま夏雲システムで、コメントなし予選をいただきましたけどもね」
「ありがとうございますー」
「こんなんなんぼあってもいいですからね」
「言うとりますけれどね」
「いきなりですけどね、うちのおかんがね、
好きな季語があるらしいんやけど」
「あっ、そうなんや」
「その季語をちょっと忘れたらしくてね」
「季語の名前忘れてまうってどうなってんねん」
「いろいろ聞くんやけどな、全然わからへんねん」
「ほんだら俺がね、おかんの好きな季語一緒に考えてあげるから、
どんな特徴言うてたか教えてみてよ」
「川とかで水が落下するやつって言うてた」
「滝やないかい。
その特徴はもう完全に滝やがな。
すぐわかったよこんなもん」
「俺も滝やと思てんけどな、おかんが言うには、
上五にちょうどええっていうねんな」
「滝と違うか!
滝はね、二音しかなくてどこに詠み込むか困るねん。あれは。
音が少ない季語ってそういうもんやから。
ありきたりな動詞つけて組長に怒られるんや。
ほな滝ちゃうがなそれ。
もうちょっと詳しく教えてくれる?」
「なんでも定番句が二句あるらしい」
「滝やないかい!滝はな、
虚子の『神にませばまこと美はし那智の滝』と
夜半の『瀧の上に水現れて落ちにけり』の
二句があればあとはもういらんくらいに言われるんや!
俺はなんでもお見通しやねんから!
滝やそんなもんは!」
「わからへんねん、でも」
「何がわからへんねん」
「俺も滝やと思てんけどな、おかんが言うには、
傍題がないっていうてた」
「ほな、滝ちゃうやないかい!
滝はね、傍題がぎょうさんあって、
音数調整でテキトーに傍題使うと組長に怒られるねん!
もうちょっとなんか言ってなかった?」
「アメリカに馬鹿でかいのがあるらしい」
「滝やがな。ナイアガラの滝や。カナダにも面してるわ。
あれはでかすぎて季語としては詠みにくい言われてんねん。
滝やそんなもん」
「わからへんねん」
「なんでわからへんのそれで」
「俺も滝や思てんけどな、おかんが言うには、
去年、組長が兼題にしてへんって言っててん」
「滝ちゃうやないか!
滝は俳句生活で5月の兼題になってるのよ。
組長が兼題にした季語はね、没でも入選でも覚えてるの!
滝ちゃうがな。もうちょっとなんか言ってなかった?」
「季節が違うと、涸れたり凍るらしい」
「滝や!
滝涸ると滝凍るは冬の季語やから!
滝やん絶対!」
「わからへんねん、でも」
「なんでわからへんのこれで」
「おかんが言うには、たまに載ってない歳時記があるって言うねん」
「滝ちゃうやないかい!
滝はな、どの歳時記にも載ってるメジャー季語なんよ。
一句一遊の『おしあな』みたいに歳時記に載ってないことはないのよ。
じゃあ滝ちゃうやないか。もうちょっとなんか言ってなかった?」
「群青世界がとどろくらしい」
「滝やないか!
滝が落ちたら群青世界がとどろくねん!
群青世界言うたら秋桜子の滝か、相子智恵のセーター!
ほんで、とどろくのは滝の方!
滝に決まり!」
「わからへん」
「わからへんことない!
おかんの好きな季語は滝!」
「おかんが言うには滝ではないっていうてた」
「ほな滝ちゃうやないか!
おかんが滝ではないと言えば滝ちゃうがな!」
「そうやねん」
「先言えよ!俺が群青世界とどろかせてるとき、どう思てたん?」
「申し訳ないなと思って」
「ほんまにわからへんがな、それどうなってんねん」
「おとんがいうには、湯豆腐ちゃうかって」
「いや、絶対ちゃうやろ!
もうええわ。どうもありがとうございました」
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