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百人一首を散らかす 22.文屋康秀

本日は巧いこと言った感のあるこの歌。



吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風をあらしといふらむ



一字決まりの歌ですね。
一字決まりってなんだか皆さま覚えてらっしゃいますでしょうか。
詳しくは4つ前の百人一首を散らかしてください!


こちら比較的意味は分かりやすい歌かなと思います。

「吹くからに」の「からに」は、”~するとすぐに”という意味です。

「しをるれ」は「しをる」の已然形ですが、漢字で書くと”萎る”。

「むべ」は”なるほど”や”いかにも”と言う意味を持つ副詞。

「あらし」は”嵐”と”荒し”を掛けています。


要するに、「吹いたそばから秋の植物が萎れてしまうから、山から吹いてくる荒々しい風を嵐っていうんやなあ、字も山+風やし…」と発音と漢字、両方の由来に思い当たり感心して詠んだ歌ですね。
ちょっとオヤジギャグ感があって微笑ましく思えるのは私だけでしょうか。


作者・文屋康秀は六歌仙のひとりです。

生没年が分かっておらず身分は高くなかったようですが、当時から歌人として有名で、十七首在原業平、二十首素性法師らとともに二条后(清和天皇の皇后で業平の元カノ)に歌を献じたりしています。

また九首小野小町とも親交があったようです。

繋がる百人一首歌人の輪!


こちらの歌ですが、技巧に走りすぎて趣に乏しいという否定的な見方をされることも多いそう。

言われてみれば確かにと思わなくもないですが、とは言え読んで目を閉じると、横暴な風に撫でつけられた草や木の葉が枯れて散って秋から冬に移ろう山々の景色が想像されます。

これで趣がないなら私の歌なんてどうなってしまうのでしょうか…


そう言えばこの歌、康秀ではなく、その息子の朝康の歌なのではないかという説もあるそうです。
朝康の歌は百人一首第三十七首で出てくるので、個人的には定家が同じ歌人の歌をダブらせて選ぶようなヘマはしないんじゃないかなあ、と考えていますが真相はいかに…!?

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