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心理的安全性の前に、あるべき『緊張感』を高めよ

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突き上げられるマネージャー

あなたが部門マネージャーで、とても忙しくて、部門の戦略を慌てて自分で立てたとしよう。ちょうど4月です。年間計画も立てて、役員から予算やメンバー補充の許可もおりて、「さぁ!4月からスタートダッシュだ」と考えていたとします。

同時にあなたは自分のチームに心理的安全性とは、言いたいことが言えることだと教育を施してきたとしましょう。そんなメンバーにも満を持して、戦略をお披露目しました。すると部下の反応は以下の通りでした。

「マネージャー、こんな戦略じゃ絶対上手くいきませんよ。」

「ホント、現場のこと知らなすぎでしょ。」

「作戦を練り直した方がいいです。GW明けを再スタートにしましょう。」

「考えが浅すぎです。理屈が破綻してます。誰がやるんですか?これ。」

マネージャーの教育の賜物です。みんな言いたいことを言ってくれました。

この時あなたは、どう感じるでしょうか?正直言って、いい気はしないと思います。せっかく作ったのにという思いでしょうし、悲しい・または怒り、そうした気持ちが湧き上がって来るかもしれません。とてもじゃないが、大喜びはできないと思います。

あなたは辛抱強く傾聴の姿勢をとり、必死でメンバーたちの考えを汲み取ろうとするかもしれません。心理的安全性を破壊する訳にはいかない、そういう考えを巡らせるかもしれません。気になるのは、あなたの中で、落とし所を探っているかどうかです。

もし、「そうは言っても、経営サイドとの調整も終わってようやくまとまった戦略だからこれで進めちゃいたい」という思いであれば、やんわりとそちらで決着しないか誘導しようとするのだと思います。

マネージャーを張るだけあって、あなたは頭の回転が速く、彼らの不満を次々にその会議の場で説得し、全員から合意を取り付けました。なんとか自分の戦略通りに進めることにチーム内でも決まりました。

さて、このような状況を素晴らしい組織と呼べるでしょうか?おそらくは、そうは言えないでしょう。では、何が問題なのでしょうか?もう一度整理したいと思います。

何が問題なのか?

順番に見れば、そもそもマネージャーが一人で戦略を立てている時点で、もう問題な訳です。しかし、実際問題、一人で作ることは少なくても、チーム全員で戦略を立てていくことは、現実的に大変だったりしますので、どうしても限られた人数で考えざるを得ません。

次に、メンバーの反対意見に対して、激昂などはしなかったものの、このマネージャーは、初めから自分の戦略を押し通すことに力を注ぎました。じわりじわりと皆の意見をかわしていき、説得し切りました。ただ、これは感情的な面も含めて受け入れた、すなわちチームメンバーが「共感した」したというレベルではない訳です。メンバーと一致団結してチームの力を結集して成果が出せるかは不明です。

3つ目に、なぜこのマネージャーは変更を嫌がるのでしょうか?を考える必要があります。それは、もちろん単純に戦略の練り直しの時間的な手間もありますが、何よりも経営陣との再調整が辛い訳です。経営陣が上司、マネージャーが部下というチームの視点で見れば、マネージャーには心理的安全性が働いていない状況です。

4つ目が、メンバーの反応です。言いたいことは言えてますが、対案までは出ませんでした。批評家、評論家の域を出ない人材に囲まれては、マネージャーが自分で戦略を作ってしまいたくなる気持ちもわからなくはありません。

誰に貢献するのか?

さて、少し話を変えると、そもそも会社やチームはなんのために存在するのでしょうか?例えば、そのチームが経営陣のご機嫌を取ることに貢献するチームであれば、ある意味で上述のマネージャーのやり方は成功しているとも言えなくはないです。

言い尽くされていますが、会社やその一部であるチームは、社会やお客様から価値を感じてもらえなくてはなりません。社会やお客様に貢献する必要があります。

そのために心理的安全性が必要だという順番になります。

会社は成長し続け収益を上げ続ける必要がある→そのためには社会やお客様に貢献し価値を認めてもらう必要がある→価値を作るにはチームがイキイキしている必要がある→イキイキしたチームには心理的安全性が必要である

つまり、根本的にメンバーやマネージャーには、より高度な視座が必要とされます。上述の原則をメンバーがきちんと理解していないといけない。我々は社会やお客様のお陰で存在でき、これからも価値を提供し続けないといけない。これを顧客視点と呼ぶことにします。

顧客視点

すなわち、顧客視点だけはブレてはいけない訳です。

「顧客視点であるか」これだけは全員が緊張感を持って判断しないといけない。

あるいは、別の説明をするならば、安全であることは、フラットであるということです。安全であることは、危険がないという意味以上も以下もないのです。

私が意見を言えるということは、誰かも意見を言えるということです。それはつまり、私の意見は最終的には通らないかもしれない。私自身が、人の意見だけでなく、自分の意見にフラットでいれるか?固執しないか、も大事な訳です。

先ほどもお伝えしている通り、顧客視点が判断軸な訳です。より顧客視点な意見やアイデアが生まれたら、素直に喜べないといけません。それが、たとえあなたから生まれた意見でなかったとしても、です。

できますか?

普通できないと思います。みんな自分が可愛い訳ですから。出世したいかもしれない、給料を上げたいかもしれない、他の人よりも評価されたいかもしれない。

だから、先ほどのような問題が起きるのです。みんな、自分を守るので必死な訳です。4つ問題点を指摘しましたが、結局どれも、根本的には自己保身に起因する問題です。

すなわち、自己保身の緊張感から、顧客視点の緊張感へ。このシフトが上手くいけば心理的安全性が生まれ、機能し、個人やチームとして成果を上げれるのだと思います。

ということでまた。


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