短編記録映画『Godiego CELEBRATION ‘79』(1979年4月8日 日比谷野外音楽堂)から見えてきたいくつかのこと。Part.1

ゴダイゴ『西遊記~シン・ミックス~』(UHQCD 2枚&DVD1枚)が先日11月24日、満を持してリリースされた。https://note.com/abcde_kimochi/n/nc38f863b936f
今回初めてソフト化された、1979年4月8日(日)の日比谷野外音楽堂コンサートの模様を収録したDVDを早速視聴したが、あっと驚かされたのがこれが短編映画の体裁だったこと。冒頭のカウントダウンフィルムから始まり、航空機着陸~メンバーが帰京(おそらく、九州ツアーから戻った4月7日の映像)、会場設営、メンバーの会場入り、楽屋から舞台袖へ、そしてオープニングタイトル『Godiego CELEBRATION ‘79』が現れる。そういうタイトルの短編映画だったのか…今まで映像作品として発掘されず、ファンの間でも殆ど語られることもなかった、幻の作品が遂に日の目を見ることになった。

『Godiego CELEBRATION ‘79』が製作された背景として、今で言うMVによる楽曲のプロモーションを行う土壌がハード的、ソフト的ともに乏しかった1970年代当時において、「映画上映」という形で宣材映像として製作されたものらしい。一般劇場公開はされなかったものの、一説には同年6月リリースのアルバム『OUR DECADE』の予約者への特典として開催されたフィルムコンサート用の素材として使用されたらしく、他にも1980年1月に西武池袋本店で開催されたファン対象のイベント "HAVE A GOOD DAY in GODIEGO LAND" でも上映されたという。

エンディングでは制作スタッフもクレジットされているが、
「監督 岡本 弘/制作 南條記良 明田川 進」の名前にピンと来た方もいるかもしれない。1979年10月27日よりサンリオ配給で全国劇場公開された映画『マジック・カプセル ゴダイゴ』とまったく同じ布陣だ。『マジック・カプセル』の本編中で野音公演の映像(「ビューティフル・ネーム」の一部分)が挿入されていた理由もこれで納得できる。あくまで宣材映像に過ぎなかった『Godiego CELEBRATION ‘79』からスケールアップして、武田薬品工業の広告・テレビCMやレコードリリース、特集本などの出版物展開、そして映画の劇場公開まで含んだメディアミックスを実現したのが、半年後の『マジック・カプセル ゴダイゴ』といえよう。

ここで制作に名を連ねる明田川と、ゴダイゴのコラボレーションの経緯を記しておきたい。明田川がサンリオ映画部新設の際に社員として入社し、『キタキツネ物語』(1978年) に音響制作で参加。同作の主題歌・挿入歌の作曲・演奏・歌唱を担当(主題歌は町田義人)したのがゴダイゴだった。そして78年末から制作がスタートした、手塚治虫原作『ユニコ』のパイロット版映画『UNICO』のプロデューサーを明田川が務めている(当時は劇場公開されず、10年後の’89年に『短編ユニコ 黒い雲と白い羽』と改題の上、OVAとして発売された)。ここでも劇中音楽の作曲・演奏をゴダイゴが担当しており(歌唱は当時ゴダイゴの事務所に在籍していた、元ザ・タイガースの加橋かつみ)、その流れで『Godiego CELEBRATION ‘79』の制作に明田川が参加したのは自然の成り行きと言えよう。

余談だが、明田川が独立して自らの音響制作会社の社名を「マジックカプセル」と名付けたのは、ゴダイゴの映画のタイトル決めが難航する中、それが決定したら自社名も同じものにしようと考えたからだという。明田川の会社「マジックカプセル」は設立当初はゴダイゴの事務所「ジェニカ・ミュージックグループ」と同じフロアに籍を置き、同グループの映像制作部門として提携していた。そして現在もなお、音響制作会社としてアニメーション作品を多数手掛けている。

もうひとつ、エンドクレジットで注目したい点が、野音公演でのブラスセクションのサポートメンバーだ。以下の6名がクレジットされている。
トランペット…吉田憲司、中沢健次(中沢健二)、岸本 博
サックス…淵野繁雄(渕野繁雄)
トロンボーン…鍵和田道男、及川芳雄
ブラスセクション編曲…岸本 博

サポートのブラスセクション「ゴダイゴ・ホーンズ」は前年1978年11月3日の「芸術祭コンサート」出演時(この時に「威風堂々組曲」を初めて演奏した)に結成されたのが初めてで、吉田、中沢、鍵和田、及川+トランペットの我孫子 浩とトロンボーンの西島泰介の6名体制だった。’79年3~6月に開催された “セレブレイション・ツアー” ではテレビ映像・ライブアルバム音源の収録会場のみホーンセクションが帯同しており、そのメンバーも流動的だったことが窺える。そして同年夏以降のツアーでのメンバーは岸本 博、永井 真(トランペット)、松風鉱一(サックス)、井口秀夫(トロンボーン)の4人体制に変更され、’80年1月までこの4名で活動している。

なお、肝心のコンサート映像の内容だが、個人的な感想としては「圧倒的」であり、心震わされるものだった。現時点でまだDVDを未見の方もいると思うので、コンサート内容の感想・解説は次回以降のnoteで書きたいと思う。何はともあれ、1979年のゴダイゴの活動における、“ミッシング・リンク” が発掘されたことに、改めて感動を覚えている…!

※以上、敬称略