記憶

最近、記憶について書いている小説を読んだ気がしていて、でもなんだか思い出せない。記憶について登場人物が語っていたのかも、記憶が主題にあったかのかも、思い出せない。もしかしたらそんな小説などないのかもしれない。

あることをきっかけに何かが思い出されるということは往々にしてあって、最近だと、くどうれいんさんの盛岡のおいしい手土産を紹介する記事に出てきた青紫蘇をみて、青なのか紫なのかどっちなんだよ!(くどうさんではなく、青紫蘇に対するツッコミです)と思いつつ、「ああ」と思わず声を出してしまった。「大葉と紫蘇って違う?そういえば、紫蘇って紫が入ってるから大葉とは別か」という会話をつい先日の飲みの場でしていたことを思い出したんだ。それなら青紫蘇はなんなんだろう。大葉と一緒なんだろうか。とモヤモヤしつつ調べない。そのままにしておくことが、友人との会話を輝かせてくれるだろうから。

こういうことは誰しもが経験したことがあると思う。多いのは、たぶん写真で振り返ることができるものではなくて、会話やことばのようなその場で消えてしまうようなもの。ある出来事、今回のような記事や会話、または小説のような様々なものがあって、それらが意図せずに受け手側にはたらきかけて、かつて経験したものがわたし記憶の中から浮かびあがって、今のわたしが触れられる状態になる。そして、その記憶は思い出したらまた記憶のどこか奥深くにしまいこまれる。次は元の記憶と結びついたきっかけも一緒に思いだすこととなる。わたしの記憶だけにしまいこまれていく出来事が増えていく。だからわたしは想起する瞬間が久しぶりの友人にあったようで好きだし、形に残ることも残らないこともたくさんのことを経験していきたいと思う。

記憶について書いている間に小説も思いだすことができればと思っていたが、無理そう。存在しているのであれば、またどこかで出会えればと思う。


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