第3章 混沌世界を行く川


フランチェスカの狂気

船体は遂に、坂下の水面に接触した。

そして、滝壺へらっかしたかのように、海にそのまま沈没していく、、、かと思われた。

しかし、不思議な力が働くこの空間では、
まるで、個体の上を走行しているかのように、船は沈没することなく、船底を水面につけた。

それから、急降下の勢いのまま前へと進んでいく。

船が水平な海面を走行したことにより、
空を浮いていた船員達の体は、甲板に打ち付けられてしまった。

みな、体を起こしながら、周囲の状況を確認した。
甲板の上には様々な物が散らばり、急降下の惨状を物語っている。

しかし、皆の意識は船の外にあった。
遂に、
 この世界の、
   魔界の景色を、
      目にする時が来たのだ。

船員達は、驚きを隠せない様子で船縁まで行き、その全貌を確認した。

それは、魔界だということを考慮に入れたとしても、あり得ない光景であった。

具象的な物が存在しない、混沌とした世界が広がっているのだ。

数多の、光の筋のようなもの達が、流れ星のように走り去っている。

その光景は辺り一面に広がり、
船を浮かべる海水面さえも見えず、この景色の一部と化していた。

「神秘的です!!
まるで宇宙の特殊な空間に来たかのよう……」
フランチェスカがそう言って目を輝かせた。

「不思議…」
アリスさえも我を忘れて見取れながら呟いた。

最初に、この状況に我を取り戻しいち早く警笛を鳴らしたのは船長である。

「これが魔界なのか?
想像とやけに違うな。

魔法の秘密を探るんだろ?
ただでさえふ可能に近い探索なのに、
こんな混沌とした場所で、人間が認識出来るような具体的な何かが見つかるのか?

そもそも生身の体で本当に生きていけるのか??」

エリカは、暫くこの流れ星のような景色を見ていたが、ハッとしたように言った。
「ここは混沌とした場所なんかじゃない。
この船から見えるのは、具体的な世界の別の姿なんですよ」

「というと?」

船長の問いに、エリカは答えた。

「つまり、超高速でこの船は走行している。
高速すぎるゆえに、周りの景色は、その姿を認識出来ない内に過ぎ去っていくのではないでしょうか。」

船長は、絶句して言った。
「…お前の仮説が正しいなら、俺らは木っ端微塵だ。
生身の体が高速に耐えられるはずがない」

エリカが言葉につまりながら答えた。
「何らかの力が、私達を守っているんですよ、多分。
コロニーの守護魔法とかね。」

船長は、生気のない声で言った。
「だとしたら、オレが研究長にそう提言してやったおかげだぞ。」

その時、アリスがやって来て、謎の怒りをぶつけた。
「これがこの世界の真の姿なわけない!
高速なの!絶対に!
やがて、速度が低下していけば、私が夢見ていた魔界の景色が見えてくるはずなの!!」

「お、お前誰だよ、、、」
船長が引いたようにそう呟く。
それから、
「あぁ、さっき船首にいたガキか。」と思い出したように言った。

「アリス・アリアさんです。
私と同級生の物理学生、途中参加したんです。」
エリカが口早に紹介すると、
アリスはふんっとそっぽを向いた。

「やなヤツだな。」
船長が、アリスの態度に不満を洩らす。

アリスは、横目でちらりと船長を見て言った。
「小さい頃、絵本で見たの。
こんな場所じゃなかった!
何の為に、私が命懸けで研修生になったと思ってんのよ!!」

「知るか!」
船長が憤慨しながら言った。

アリスは、構わず続ける。
「その絵本は、魔界から生還した人物が描いた本なの!
行きの扉しか開かないはずの魔界から!
生還した!たった1人の人間がね!」

エリカがきつい目線を向けて言った。
「その証拠はあるのですか?
本当にその人物が、生還者なのですか?
その絵本は高値で売買され続け、所在不明になったのですよ?」

船長は嘲笑い、アリスを挑発するように言った。
「ペテン師の金儲けということもあり得るかもな!!」

アリスは、船長をきっと睨み付けると、エリカの方を見て言った。
「……唯一の生還者の存在自体も否定するの?」

エリカは、静かに言った。
「否定しません。
絵本のことも、事実かもしれません。
でも、それは、作者本人にしか分かりません」

アリスは口をつぐみ、俯いた。
その様子を見ながら、エリカはふとあることを思い出す。

「あ、ところで、、、話は変わりますが、、、」と前置きしながら声色を変え、低い声で言った。
「アリアさんは物理学生じゃないんですよね。」

アリスは顔をあげて、エリカをにらみ返した。
2人の間に緊張が走る。

船長も、ただならぬ空気に顔を硬直させている。

アリスは、ふっと笑ってから、
やっと口を割った。
「そうよ!
試験問題の情報は全て入手して、今まで学生気取りでいたのよ!」

高らかに、清々しく暴露したアリス。

彼女は一体何者だろうか。。。

エリカも船長も、不信な目付きでアリスを見つめていた。

するとアリスは、急に顔つきを変え、動揺を見せた。
「何よその軽蔑した目は、、、!」

「どうやって入手していたんですか?」
エリカが、アリスを一直線に見つめて、問うた。

その時、
「私ですよ。」
という柔らかな声がした。

フランチェスカである。
彼女はアリスの横に立ち、エリカを見下ろしながら言った。
「試験問題は私が作成していますから、その情報をそのまま、アリアさんに渡していたのです。」

「、、、ちょっと待ってください?」とエリカは片手で頭を抱えた。

そのまま、その場を行ったり来たりする。

「頭が追い付かない自分がいます、、、」
そう困惑するエリカの横で、
船長はため息をついた。

「いい加減、先生の破天荒に慣れろよ。」
船長はそう言うと、フランチェスカに目を向けた。

「で、研究長、なぜそんなことをしたんですか?」
船長がそう問うと、
フランチェスカは微笑を浮かべて話し始めた。
「理由は2つ。
1つは、見張り役です。学生に紛れながら、不審な人物がいないか、見て回るのです。
まぁ、この能力に関して彼女は高くないので、見張り役というのは、2つ目の理由のおまけみたいなものですね。」

「2つ目の理由とは?」
エリカが尋ねた。

「彼女の特殊能力を利用したかったからですよ。」
フランチェスカは、さらりと言ってのけた。

「特殊能力!?」
エリカが声をあげる。

アリスは、こちらを見向きもせずに、小さな声で話した。
「少し未来が見えるの。
でも、いつも見えるとは限らないし、どれくらい未来を見えるのかも分からないわ。」

「す、すごいじゃないですか!!」
と感嘆するエリカ。

フランチェスカがくすりと笑って言った。「それに、彼女は数学だけは得意ですよ。
計算速度も速く、正に歩く電卓ですよ。」

エリカは首を傾げた。
「特殊能力よりそっちの話の方が不思議かもしれません。」

「何でよ。」とアリスが眉を潜める。

「魔法を見すぎて慣れちゃったというか、、、」
エリカはそう言って、疑問を投げ掛けた。
「数学が理解出来るなら、物理学だって理解出来るはずなのに。」

アリスはふんっとそっぽを向いて言った。「数学は物理学を内包してないじゃないのよ。」

「逆じゃないですか?
数学が物理学を内包しているはずです。
数学は、いわば宇宙の言葉です。」
エリカがそう返すと、
アリスは機嫌を損ねた。
「何なのよあんた!遠回しに嫌味言ってる!?」


言い合う2人を傍らに、
フランチェスカは、厳しい声をあげた。

「リー大佐!!」

彼女の呼びつけの声に、大佐がやって来て、頭を垂れた。

「お呼びで。」

フランチェスカは優しげな微笑を浮かべて言った。

「私たちは、こんな素晴らしいところによく来ることが出来ましたね。

私達がこの世界に来ることが出来たのは、
魔法の雲が魔界へ吸い込まれようとした時に、一緒に引きずりこまれたから、と言って良いでしょう」

それから一呼吸おいて続けた。

「その雲に、メイデン帝国(魔法の国であり公国の同盟国)の女帝は、来た。
ついでに、敵軍まで攻めてきたと。

両者とも魔界へ行くため。

そうあなたは以前報告しました。

今の状況から鑑みると、
女帝は、敵軍と共に、雲もろとも崩れながら引きずりこまれ、生死不明な状態、ということでしょうか」

「おっしゃる通りです。」

リー大佐が言うと、フランチェスカは無言で大佐の前に立ち、それから磁気銃を彼の胸にかざした。

すると、磁気が肺を圧迫し、彼は迫り来る動悸に苦しみだす。

「生死不明ということも言ってくださらないかしら?」

大佐は、苦しみを抑えながら声を絞り出した。
「申し訳……ございません。
混乱の、、、中、、、、遅ればせながらの、、、、報告に」

「言い訳です。」
とフランチェスカは言うと、手を放し、大佐の肺は解放された。

彼が呼吸を整えている間、フランチェスカは、優しげな微笑を浮かべて言った。

「いいですか?
敵国が生きていたら、見つけ次第に殺るのです。
恐ろしい未開の地だからと言って、協力や容赦は皆無。
帝国だけが持つ魔法を手に入れようとしている者達です。
殺るか殺られるか、しかありません。」

その様子を見ていたエリカは、意を決してフランチェスカに言った。
「研究長、僭越ながら、進言します。

帝国の第一皇子、エレン様が敵国にさらわれたことをお忘れではないかと思います。
帝国は、私達、公国の同盟国です。他人事ではありません。

逆にこの状況を逆手に取って、奴等(敵国)に何かしら吐かせることも出来るのではないでしょうか」

フランチェスカは、エリカを見下ろして言った。
「もちろん、エレン様のことは覚えていますよ。」

それから、厳しい顔つきになり、唐突に命を下した。

「リー大佐!!海賊達を監禁して!」

大佐は一瞬意表をつかれた様子を見せたものの、「承りました」と命令に従い、部下に指示を出し始める。

「研究長!」
エリカは、呼び掛けたが、フランチェスカは行ってしまった。
後ろに控えていたマリアも、後に続こうとする。

「ルイスさん!」
エリカが呼ぶと、
マリアは立ち止まり、顔だけをこちらに向けた。

「ここに来て、研究長の危険思想な面が顕著になったと思いませんか?」
エリカがそう言うと、
   マリアは淡々と答えた。
「研究長様の目的は、魔法の謎の解明です。
同盟国への援助でも、人質の解放でもはありません。」

エリカは唖然としたまま呟いた。
「仮にも、同盟国である帝国の第一皇子ですよ?」

しかし、マリアは無言のまま立ち去っていく。

「無視ですか!!」
エリカは、憤りの表情で1人そう呟いた時、拘束され暴れる罪人の手が当たり、よろけてしまった。

海賊達が、次々に帝国軍に取り押さえられているのだ。

賊長が声を荒げ、フランチェスカへと迫っていった。
「なぜだ!!
協力する代わりに、海賊罪を見逃すと言っただろ!」

フランチェスカに今にも掴みかからんばかりの彼を、リー大佐が抑えた。

「はい。確かに、申し上げました。
しかし、監禁も協力の内とお考えください。
海賊が同じ船にいるのはやはり危険ですから。
目的地に着いたならば、解放してさしあげましょう。」

フランチェスカは、微笑を浮かべて静かにそう言うと、突然拡声器で意気揚々と声を響かせた。
「これより、この船の速度を計算します!!!!
国立の物理学生と卒業生は、助手についてください!」

その声量に何人かが声に耳を押さえる中、
マリアが無表情で羊皮紙と計算器をエリカに押し付けた。

速度計算

数分後、海賊らは全員監禁され、船室外にいる罪人は船長だけとなった。

甲板に羊皮紙が広げられ、
研修生のエリカ、マリア、アリス、
それから卒業生のリー大佐、の4人がかりが助手となり、
船の速度という1つの解を導く試みが始まった。

それを遠巻きに眺める船員達。

フランチェスカは、彼らの顔を見て回りながら話し始めた。

「光速度不変の法則、、、。
これを仮定し計算しています。

光の速度は変わらない。
この言葉を聞いても、何も疑問は沸かないでしょうし、わざわざ法則などという言葉をつけるまでもないと思う方もいるでしょう。

しかし、それは止まった状態で速度を考えているからなのです。
光速は変わらない。
であるとしたら、変わるのは時間です。」

早口に連動して、フランチェスカの足はいつしか忙しなく行ったり来たりしていた。

「秒速2mで走る馬を、秒速1mで走る犬が追いかけているとします。
犬からしてみれば、その馬の速さは差し引き秒速1mとなります。

しかし!
光の場合は、そうはいかないのです!

例えば、光速の半分の速さで光を追いかけたとします。
すると、追いかけている人間からしてみれば、光速は半分の速さになって見える、、、はず!

しかし実際には、その人間からしてみても、静止している人間と同じ速度に観測されてしまうのです。

まるで、光だけ時間がないかのように、、、。

いえ、実際にないのかも、よもや時間軸そのものなのではないでしょうか。

いかなる速度で動いたとしても光速は変わらない。
であるとしたら、変わるのは時間です。」

「速さが異なる二艘の船があったとしましょう。
すると、速い方の船がゆっくり時間が流れるのです。
何故ならば、速度は、時間に対する移動距離だからです。
つまり、どちらの船から見ても光速が変わらないのであれば、時間が変わらなければならないということなのです。

絶対的なのが光速で、それに相対するのが時間ということ。

そうなると、時間と空間を一緒に考えなければならない。
それが、時空という概念です。」

フランチェスカは、立ち止まり、意味深な笑みを浮かべて言った。

「魔法が誕生するより遥か昔に、アインシュタインという偉大な科学者が発見した理論です。

魔族の産みのまた産みの親とでもいいましょうか。
そして時空は、4次元空間に存在していると考えられます。(※)

4次元空間を、私達人間は、、、認知出来ません。
みなさんは、3次元の、縦、横、奥行きの空間以外に、空間が見えますか?
見えませんよね。

しかし、魔族は、それを認知することができる。
だからこそ、高度な魔法数学や魔法物理学が扱えるのです。
こうして魔法は誕生したのです」

それから、いつもの優しげな表情になって穏やかに言った。
「しかし魔族といえど、時空の存在を認知は出来ても実際に見ることは出来ません。

魔法で出来ないこと。
それは時間と空間の超越です。

この旅は、魔法の謎と共に、それを探るものでもあるのです。」

隔たりの川

それから、随分と時間が経った。

船から見える景色は、少しずつ変化していく。

気づくと、混沌としていた世界が、何か色ごとにまとまりを持つようになっていた。

エリカはその様子を見ながら、アリスに耳打ちした。
「この景色は、やはり高速によるものだったのですね。
ほら、今は速度が低下しているのか、少しずつ秩序だった景色になっていっています。」

アリスは何も言わずに静かに頷いた。

今、研究長により、最後の集計が行われている。

そして遂に、計算結果を確定させる時が来た。

フランチェスカはマリアに資料を手渡す。
マリアは、拡声器を手に、声を響かせた。

「計算結果が出ました。
この船は、高速で進んでいます。
海の坂を登る際、研究長様が行使してくださった、守護魔法により、船体は高速による圧力から守られています。」

誰もが少なからず予想していた内容に、みなが納得した表情になった。

しかし、次に出たのは、予想を遥かに越える信じがたい言葉であった。

「この世界の時間の進み方が人間界と一致すると仮定したならば、

その速さは光を超越しています。

現在、光より速い物体は発見されていません。
しかし、計算結果としてそのように出ています。」

とんでもない報告に、その場がざわめいた。
  ー光速を超えるものは存在しないー
誰しもが知る当たり前の常識である。

物理学生達は勿論のこと、航海士や軍人でさえ、驚きを隠せない様子でいた。

アリスが声をあげた。
「そんなこと、本当にあるわけ!?
秒速30万キロ超えってこと?
実際、いくつになったのよ」

マリアは、アリスを一瞥して言った。
「具体的な数値はふ明です。
分かっていることは、光速を超えているということだけです。」

それから、声色を変えて続けた。

「ここからが緊急性のある内容です。

具体的な速度が分からないということは、減速の上にいつ止まるのかも、ふ明ということになります。

更に、止まった先で瞬時に行わなければならないことがあります。

それは、右に行くか左に行くかです。

この船は、船体よりも狭い幅の水面を走行しています。
両側は、恐らく、滝となっていることが予想されます。

速さがあるために、おちることなく進んでいますが、止まってしまえば、右か左、どちらかにおちることになります。

どちらに舵をきるべきか、減速して景色が見えてきた時に、判断しなければなりません。」

「海賊から没収した、魔界の地図を見てはどうでしょうか?」

そう言ったのはエリカだった。

「魔界の地図なんてあるの?」
アリスが尋ねた。

「海賊がどこかからか奪った、魔界の地図といわれる白紙の羊皮紙です…。
この世界に来たことで、見えるようになるかと思ったのですが。」

エリカが答えると、
アリスはツンとして言った。
「如何わしいわね」

エリカは、地図を所有するマリアにも尋ねた。
「地図は浮かびあがっていませんか」

「残念ながら、地図は浮かびあがっていません」
マリアは、冷徹な表情で白紙を見せて言う。

エリカは、その紙を受け取ったまま、成すすべもなく立ち尽くした。


それからどれほど経ったことだろうか。。。

混沌とした世界から、色ごとにまとまりだした景色は、更にくっきりと具象的な物へと変化していた。

減速と共に、次第にこの世界の本当の姿が見えてくる。

狂っていたコンパスは、指針を示し出した。
北を示したのは、船の進む方向であった。

船は、北へと続く長い水の道を走行していた。

そしてその道は、遥か高い位置にあり、地上を展望することが出来た。

水の道を挟んで、東側と西側の景色は大きく異なっている。

東側は、不気味な巨橙が点在し、黒々とした森や山脈が広がっており、
西側は、美しい自然や、それに囲まれた建物が見えた。

それ以上に具体的な景色は、望遠鏡を手にしたフランチェスカにしか見えないなかった。
ここはそれほどまでに、高所にあるのだ。

しかし、詳細は見えなくとも、空から見える西の美しい景色、東の不気味な景色の大体の様相は肉眼でも分かる。

船員はみな、東西ではっきりと景色が異なる不思議さに、見惚れていた。

その時、エリカは手に違和感を覚えた。
いや、手に持つ紙に何かがさっと走るのを感じたのだ。

手にしていたのは、マリアから受け取った、魔界の地図といわれた、白紙。

ハッとして、それを見る。

すると、地図らしきものが浮かび上がっていたのだ。

そこには、この船が走行する水の道が描かれ、東と西で名称が添えられていた。

東は、゛悪魔の国゛、西は゛妖精の国゛と。

エリカは、フランチェスカの元へ行くと、優雅に座る彼女に地図を見せて言った。

「西です!
西に行くべきです!」

フランチェスカは立ち上がって言った。
「ブラウニーさん、お手柄です。
西に舵を切りましょう」

「この景色を見りゃ大体分かるだろ?」
船長が横槍を入れる。

エリカは彼を睨んで言った。
「見た目に惑わされるなってことですよ!」

その時であった!!

突如爆風に襲われた。

それは、西からの風である。

船は成すすべもなく東側に転覆していった。

船の沈没と共に、船員達は生身のまま滝へと投げ出されていく。

エリカは、体が吹き飛ばされる瞬間に、空に何かを見た。

それは、不思議な雲であった。
まるで、綿が空に浮かんでいるかのよう
に、実体があるように見える雲。。

そう、それは、皇帝ヴァイオレットと、敵国を乗せた、魔法の雲。。。



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