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武器が壊れるというメリット【ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】

祝ゼルダの伝説ティアーズオブザキングダム発売!
と言う事で色んな人の感想やコメント等を探っていると
「武器が壊れるなんて開発者のエゴだろ」
という意見がありました。

私はブレスオブザワイルドにおいて武器破壊は必然だったと思っているので、良いタイミングだし「武器が壊れるというシステムのゲームデザイン的なメリット」について私の考えをまとめてみようと思います。
今更だしどっかで誰かが書いてるとは思いますが。

■はじめに


まず言っておくと私は武器が壊れるというシステムそのものはあんまり好きじゃないです(一周目は英傑武器保管勢)
でもBotWには必須だと思います。

そしてもう一つ大事な事なので予め言っておくと「合う、合わないはあるから合わなくても全然良い」と思っています。
別に「これが理にかなってるから好きになれ!」というつもりは毛頭ないです。
ただ「こんな理由があるから採用したんだと思うよ」というお話ですのでご理解の程。


■BotWの武器が壊れないと困る仕様


一番わかり易い考え方として「BotWはそのままに武器だけ壊れなくなった場合」を仮定してみます。
(あくまで他はそのままで、新たな調整はしないものとします)
すると色々と困る仕様が見えてきます。


●序盤中盤で強武器に出会うことは出来ない

ゲームバランスがぶっ壊れるので、祠をクリアしても身の丈にあった武器しかでません。

●属性武器が強すぎるのでほぼ封印、または超終盤じゃないと出せない

これもゲームバランスがぶっ壊れるので駄目です。はめ放題です。
弓矢は近距離だと隙だらけなのでまぁ良し。

そしてこれらは序盤中盤での宝箱を発見する喜びの減少を意味します。
BotWは「探索と発見」を主軸にしたゲームなので、「発見」の魅力が削がれるとゲームを進める意欲が落ちてしまいますね。これは由々しき事態。


●存在価値のない武器が生まれる

各地方にそれぞれ片手剣、槍、大剣、盾、弓等がありますが、一度強いものを手にすると他の武器は一部を除いて下位互換になってしまいます。(BotWでもそのけはありましたが、現地調達でまだ活躍の機会がある)

やはりこれは問題点としたのか、TotKでは武器ごとに特性ができましたね
BotWからやっとけ

●戦術が狭まる

武器が壊れないと「武器を奪う、奪われる」というシステムがほぼ機能しなくなります。
自分は武器を少なめにし、常に相手から武器を奪う立ち回りをすれば容易に敵を無力化できてしまいますよね(武器が壊れるなら少数の手持ちという事がある程度のリスクになる)
また、武器投げがかなり強くなるのでバランスも悪くなるかも?(とは言えロングスローは死に要素すぎ)

●戦闘の意義の低下

上記のように宝箱の価値が落ちると敵の拠点を襲うメリットが小さくなります。(鉱石は鉱床でもとれるので、ほぼ素材のみ)
BotWでは「武器が少なくなってきたから敵を襲うか…」がある程度までは成立していました(武器屋もないので)が、それもなくなるでしょう。
強武器が手に入ったら戦闘意義はもうほとんどゼロです(BotWも後半はこの傾向が強く、終盤はライネルとガーディアンとイワロック狩りがメインだった人も多いと思いますが、終盤なのでまだマシ)

TotKでは「スクラビルドという発明」によって素材の価値が爆上がりしたので、敵と積極的に戦闘したくなるようになりましたね。
弱い武器もあまり腐らないし、ストーリーとの絡め方も含めて、はぇ~天才かよとなりました
1つのアイデアで複数の問題を解決する理想的なやつです


細かな所はまだあるかもしれませんが、メインはこれらでしょうか。まとめると
武器が壊れることで得られるメリットは
①強武器が序盤で手に入っても問題ないので報酬を大きくしやすく、一時的な無双感を与えられる(≒マリオのスター)
②下位互換も多少日の目を見る
③敵の武器を奪うなどの駆け引きが生まれて戦術が広がる
④能動的に戦闘する機会が増える

ということになります。
もう一個大事なやつがあるのですが後述します。

でも「そのまま武器を壊れなくするんじゃなくて調整するでしょ普通」と思いますよね。

ではパッと思いつく調整案を上げてみます。


■武器が壊れない場合の調整案


●強武器に出会えない、属性武器が強すぎ

・ハクスラライクにして細かな武器の長所短所を設定し、武器との出会いを楽しみにする
・属性の仕様を見直して強すぎないようにする、明確なデメリットをつけて一長一短に

●下位互換に日の目を

・弱い武器ならではの特性をつける(鍛冶等の成長率が良い等)

●戦術について

・敵も積極的に武器を奪ってくるようにする(うざめ)
・武器投げについて調整、強すぎず弱すぎないように。ただ奪われるリスクは増えるので多少強くてもいいかも(ロングスローはこっちの方が活きる)

●戦闘意義の低下

・スキルツリー等の成長要素の導入
・鍛冶等で武器を強くできるようにし、その素材を敵に持たせる


等でしょうか。
どうでしょう。まぁまぁ面白そうじゃないですか?
じゃあ何故これらを取り入れないのかというと、それは「大衆向け」というBotWのとても重要な(割に忘れられがちな気がする)要素が、武器破壊においてのキーとなるからなのです。


■「大衆向けのゼルダ」という重要なポイント


任天堂及び制作チームはBotWにおいて大衆向けをかなり重要視していた様に思います。

BotW以前のゼルダは、初期のゼルダ以外は大衆向けではありつつもややマニアック寄りのゲームでした。
それは謎解きだったり、ちょっと不気味だったり、緑だったりと様々な要因があったとは思いますが、近年は特にその傾向が強かったように思います。

しかしBotWでは
服を青くしたり、トゥーンレンダリングにしたり、グロさ控えめにしたりと見た目をキャッチーに。
謎解きを小さく、ゴリ押し可能にして、散りばめることで詰みを防止。
料理とマックス素材、バクダンとビタロック+を用意して戦闘下手でもゴリ押し可能に。
と、誰でも遊べるような工夫が多く見られます。

なので戦闘面においても「大衆向けは大前提のもと、複雑な要素はなるべく省いた上で誰でも楽めるゲームデザインが求められた」と考えるのが自然ではないでしょうか。

実際BotWの武器や盾には耐久値の他に特性があるものも多々ありますが、ゲーム上でデータを参照できるものは攻撃力のみで、あとは僅かなテキストだけです(弓に至っては射程すらないし、盾サーフィン特性とか普通は気付かん)
この事から如何にプレイヤーに複雑な情報を与えないようにしてるかが分かるかと思います。
そしてそういった使いみちに気付くことも「発見」にしてしまっているのです。強い。

そして、こうなると上記の調整が途端に難しくなるのが分かりますよね。

「ハクスラ?そんなのガキと老人は分かんねぇだろ!強い武器は強いでいいの!」
「属性武器?そんなもん強いに決まってるだろ!
終盤だけ?バカ言ってんじゃねぇ早々に渡せよ楽しいんだから」
「武器は沢山出せよ。下位互換?知らねぇよ上手いこと全部持たせるようにしろ!」
「敵は馬鹿にしろよ、じゃないとめんどくせぇから。数が多いと厄介くらいにしとけ。武器を奪う?うーん程々で」
「武器投げ?強いに決まってんだろ!?お前は武器投げられたら弱いと思うんか!?」
「鍛冶?武器強化?複雑すぎる、却下」
「成長要素?いやこれゼルダなんですけど?ハートの器とがんばりの器で十分でしょ。
戦闘の意義?素材…じゃ弱いから…なんか良い感じにしとけ!」
「フックショット?それは崖登りが楽しくなくなるので駄目です」


まぁここまでは冗談としても、本質的には近い工程があったのではないかと思います。
そしてこれらの問題は武器が壊れることで全て解決するという話でしたね。

つまり、武器が壊れるメリットの最後の一つは
⑤大衆向けでありながら、多くの問題を解決できるシステム
という事です。一番でかいですこれが

個人的には、モンハンが世間に受け入れられてるあたり「もう少し複雑でもいいのでは?」とは思いますが、今作が明らかに普段ゲームをしない層にも届いてるあたり正しい選択だったのかなと思います。ゲーマー的にやや物足りないですが。

あとスキルツリーや成長要素を省いた理由として「今までのゼルダ像から離れすぎている」という点もあるのかなと個人的には思います。

■まとめ


改めてまとめると、武器が壊れることによるメリットは
強武器が序盤で手に入っても問題ないので報酬を大きくしやすく、一時的な無双感を与えられる(≒マリオのスター)
②下位互換も多少日の目を見る
③敵の武器を奪うなどの駆け引きが生まれて戦術が広がる
④能動的に戦闘する機会が増える
⑤大衆向けでありながら、多くの問題を解決できるシステム

となります。
これらの理由によってBotWに武器が壊れるというシステムが採用されたのだと私は思うのですが、ご納得いただけたでしょうか。

あとこれは憶測ですが、BotWはかつてドラクエ1がした様に「オープンワールドを再解釈し、大衆に届ける」こと自体がテーマだったのではないかなと思っています。

そしてTotKではドラクエ2と3がしたように「大半が前作経験者だろうし、多少複雑でも(難しくても)ええやろ」の精神で色んな要素を盛り込んでいます。

BotWでの不満や要望も結構拾い上げている印象なので、修理や鍛冶屋等もあるかもしれません(まだ出会ってないネタバレ厳禁派)
TotKはお気に入りの武器を壊さなくて良いゲームだと嬉しいですね。


それではここまで読んでいただきありがとうございました。
武器破壊のメリットについて他に見落としがあったらコメントください。


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