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あえて、障害者とお金についてちょっとだけ。

以前、友人とたまたま「障害者」についての話になった時、

「何もしなくても金がもらえる」

「不正受給が多い」

「犯罪をしても罪を問われない」

「病院に我慢して通ってれば障害年金が通る」

と言った言葉が発せられた。



でも、ネット経由で他の不特定多数にも聞いてみたところ、割とみんなそう思っているようだった。

「失業保険10ヶ月&年50万の高待遇だから、ガイジ手帳がほしい。精神科通って申請するほどの行動力はないけど」

「(障害年金をもらっている人間は)迷惑極まりない。税金の無駄だ」

などなど。




私は、ネットを通じて得た意見の方が、実際に対面で会って得た意見より信憑性があると思っている。

「ネットはゴミ箱。不幸な人間が日頃の憂さ晴らしにやっているだけだから放っておけ」

と言う人もいるが、その「ゴミ」は本物である。嘘を裏で言う必要などないからだ。それに、ゴミかどうかは関係ない。肝心なのは本物かどうかだ。

まともな人間はその「本物」を


「周りから変に思われたくないから」


と言って表には出さない。


その、変なところで「常識的」なのがなんとも人間らしくて気持ち悪いと思う。みんな死ねばいいとすら思う。


私から見れば、人々が、自ら思ってることを素直に吐き出してくれる場がネットである。
そのため、それに目を通すのはもはや盗み聞きしている感覚に近い。




話を戻す。

友人の話も不特定多数の話も、私は全部が全部間違っているとは思わない。

確かに障害年金は生きているだけで口座に金が入るシステムだし、

「心神喪失状態にあったため責任能力がない」と判断され刑事上の罪は問われずに済んだ判例はいくらでもある。

失業保険は条件を満たせば最大1年受給できるし、

掛金から障害年金は拠出されている。


私自身、福祉に一定程度守られている身としては、確かに同世代の一般の人から見たら遥かに「低負担」では生かしてもらっていると思う。それは事実だ。




私だって、こんな、プライバシーに関わる話なんてしたくない。当たり前だ。だから、この場限りの話にしてほしい。だから、現実の私とは一切切り離してほしい。



それでも、今回は先程一番最初に紹介した主張

「何もしなくても金がもらえる」

をあえて受け取り、こちらも思っていることをそのまま伝えてみたいと思う。

だって、障害者に関して、まず第一にお金の話を取り上げて穿った見方をされているのだとしたら、手段はこれしかないから。

そこまでしなければ、分かってもらえないから。

それでも分かってもらえなかったら、
それでも分かってもらえなかったら、それはそれで仕方ないとも思う。




例えば障害基礎年金の一番下の級は月7.0万円ほど、厚生年金の同条件は月5.5万円ほどが支給される。一人暮らしの成人と仮定して、仮に一月13万円は必要とする。すると、前者は6万円、後者は7.5万円を稼がなければならない。
しかし、そもそもなぜ障害年金の制度ができたのかといえば、それは「健常者との賃金格差を是正するため」である。年金事務所の職員がそう言っていた。

障害者雇用は、基本どんな仕事でも最低賃金(換算を含む)での雇用で、ボーナス、昇給、昇進はなし。おまけに求人数は健常者の10分の1以下。
日頃の求人チェックはもちろん、1年半障害者枠の仕事を探し続けた私だから言える。


求人を出す側が規定する障害者の勤務時間は、週20時間が3割、30時間が4割、40時間以上が3割くらい(肌感覚)。

肌感覚というのは、公式なデータもあるが、私が得たい情報が明らかにされていないからだ。


さて、ここから少し話が政府の統計資料への指摘へとずれるが、少しお付き合いいただきたい。




PDF版資料
「平成 30 年度障害者雇用実態調査結果 3(8) 図3-5」(以下、①とする)

https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000521376.pdf

厚生労働省

では、

「週所定労働時間別に見ると、通常(30時間以上)が47.2%と最も多く、次いで20時間以上30時間未満が39.7%となっている」

とあるが、「週所定労働時間表」から非正規雇用と正規雇用の境目を読み取れるようにすべきだ。約74.5%(後述)もある精神障害者の非正規雇用の割合を強調するために。

雇用保険が適用されるのは週20時間からであり、社会保険が適用されるのは週30時間からである。障害者雇用の非正規の場合も雇用主側がそれを考慮し「週20時間(ちょうど)」「週30時間(ちょうど)」の設定がほとんどだ。

非正規雇用の多くを占める「週30時間(ちょうど)」の層が、ある種のかさ増しとして「通常(30時間以上)」の枠に含まれており、「通常」が強調されている。
それとは別に、分布を知るための資料、つまり、労働時間を1時間ごとに表した分布表が必要である。非正規雇用と正規雇用の境目を可視化させるためだ。

また、同調査の「Web版資料 (2) 」 (以下、②とする)

では、

「雇用形態をみると、身体障害者は52.5%、知的障害者は19.8%、精神障害者は25.5%、発達障害者は22.7%が正社員となっている。」
とあり単純計算すれば、働いている精神障害者の約74.5%は非正規雇用(週40時間未満の勤務)ということになる。
そのため、①の
「『30時間以上』に含まれる『40時間以上』の数」
は少ないと推測される。
だが、①では「週30時間以上」と一括りにしてしまっているため、これでは「40時間以上」がどれだけいるかが分からない仕様となっている。
正規と非正規の境目を可視化させるため、①においては「週30時間以上週40時間未満」と「週40時間以上50時間未満」と「それ以上」に集計項目を分けるべきだ。

そして、②は、精神障害者と発達障害者で分けて算出しているため(手帳の区分は「精神」しかないのにも関わらず)、更に正確な数字は読み取りづらい仕様となっている。




お待たせした。話を賃金計算の話に戻す。

最低賃金を分かりやすく1000円
(R6.02.03現在、最低賃金改定額の全国平均加重平均は1,004円)
とし、「週20時間」で働いたとすれば月8万が最低でももらえ、13万円生活が可能となる。

一旦、「13万円生活」が幸せか否かは置いておく(同じ収入でもライフスタイルや家族構成、価値観、感じ方は人それぞれ違い比べられないので、できれば永遠に置いておきたい)。

要は、「障害年金だけで食べていけるほど障害者は甘やかされてはいないし、稼げる額もたかが知れている」ということだ。
障害者雇用は一般の人の雇用とは全く世界が違う。
求人も非正規雇用がベースのため最低賃金の「週30時間」が主流であるし、障害者の就職は就労移行支援を使わなければ地方では職につけないと言ってもよい。それは私が身をもって体験してきた事実だ(時間のある方は、以下をご覧いただきたい)。

中には正規雇用で働きながら障害年金も受給し、豊かな暮らしをしている障害者もいるそうだが、
それはあくまでもレアケース中のレアケース中のレアケースである。本当に。




最後に、精神障害者のハンディにも触れておきたい。
障害の手帳には身体、療育、精神の3種類があり、
「令和5年版 障害者白書 参考資料 1(1)」(以下、③とする)によると、

「複数の障害を併せ持つ者もいるため、単純な合計にはならない」とした上で、

「各区分における障害者数の概数は、身体障害者(身体障害児を含む。以下同じ。)436万人、知的障害者(同上)109万4千人、精神障害者614万8千人となっている(図表1)。
これを人口千人当たりの人数(※)でみると、身体障害者は34人、知的障害者は9人、精神障害者は49人となる。」

とある。
つまり、単純計算
(34+9+49=92   49÷92=0.532…)
すると、現在障害者と呼ばれている人々の約半数は精神障害者だということである。

精神障害者の特徴として、一般的には「疲れやすさ」が挙げられる。原因はストレス耐性によるもの、発達特性によるもの、運動機能の特性によるものなど様々である。

疲れやすいとどうなるか。無論、長時間勤務が難しくなる。そのため、障害者の勤務時間は基本20時間からと短く、それに対する措置として「障害年金」が国民健康保険及び厚生年金などの制度として定められているわけである。
疲れやすさの上に、パニック、不眠、問題行動、発作、リタイア、投薬治療、生活習慣の乱れ、希死念慮、周囲からの目、自傷、依存、幻覚など、様々なハンディを背負いながら毎日働きながら、精神障害者は生きている。
その上での「13万円」である。
多分、前述の友人やそれに似た人々は、
「幸せじゃないか」というのだろう。

苦しみは移すことができない。
精神的な苦しみは、あなたのが私の目には見えないように、あなたの目にも私のは見えない。

なので、これ以上は中々伝えるのが難しい。


ハンディはあるのに障害認定がなされないがために、健常者と同じ、あるいはそれ以上の負担の中、生きざるを得ない人々はたくさんいる。
それも、この混乱の世情の中で、だ。
むしろ、そのような人々がこの社会に「いすぎる」から、支援を受けられている私達に対し、

「うまいことやってるな」

と一定数の人々が感じるのではないかと私は考える。


となってくると、解は

「社会全体の負担を減らす」か、
「支援の幅を広げるか」

の2択となり、
もはや、社会のあり方、制度のあり方の問題となってくるわけである。
中にはもう1択、「リソースは限られているから、今いる障害者を減らしてそこに新しい障害者を入れればいい」というものもあるが、では、どうやって障害者を減らすのかという話である。これ以上は言わない。


…と、障害者に関する声の最初の一つ目
「何もしなくても金がもらえる」
に返すだけでこれだけの情報量と知識がいる。私は論理や数字に弱く、むしろこれではエビデンスとしてボロボロのボロだが、これは論文ではないのでこのくらいで勘弁してほしい。


私は、きちんと病院に行って、きちんと調べて、きちんと制度を活用することは、なんら問題のないことだと思っている。

一方で、自分を深く見つめることなく、病院に行って治療を受けても勝手な自己判断でやめてしまい、自暴自棄になって、
「自傷他害(自分を傷つけ他人に害を与える」
を永遠に繰り返す人も沢山いる。むしろ、そういう人間の方が問題であると感じるし、逆に「迷惑極まりない」とすら感じてしまう。

「支援を受けることができている者」と「支援を受けることができずにいる者」。

もし問題があるとすれば、「制度を活用している人」ではなく、「制度そのもの」にあると思うのだが、どうも「人」の方に不満をぶつけたがる人々がいる。そういう人に限って選挙には行かないし、運動も起こさないし、不満に思っている制度をきちんと調べることすらしない。

まあでももし、それでも、どうしても、障害者が羨ましくて憎かったら、一度大怪我でもしてみたらいいと思う。自殺未遂でもしてみたらいいと思う。

障害者として生きるって、結構大変だよ。
絶対伝わらないと思うけど。





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