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外側に向かうアイドル・内側を見るアイドル

・はじめに

 アイドルマスターシンデレラガールズというコンテンツにはたくさんのアイドルが登場しますが、彼女らは大雑把に分けると外側に向かうタイプと自分の内側を見るタイプに分類できます(あくまで大雑把ですが)。こうして分類することでアイドルに対しての考え方がちょっと深まるので、以下、考えていきたいと思います。

・外側に向かうアイドル

 外側に向かうアイドルたちはアイドルとしての活動(ライブやイベントへの参加など)を通じて、自分のやりたいこと(目標)を実行しようとします。例えば横山千佳は外側に向かうタイプです。

魔法は人間を超越したパワー

 千佳は魔法を使ってみんなを元気にさせたいと思っています。だからこそ魔女っ娘アイドルであることを自分の外側(周囲の人々や社会)にアピールします。みんなに自分を見てもらいたい、魔法の力を届けたいと周りにエネルギーを振りまきます。他者や周りの社会に影響を与えたいという目標がしっかりあって、それを達成したいと思うのが外側に向かうアイドルの特徴です。
 

ゲームというのは道である

 そのほか、三好紗南も外側に向かうアイドルです。目指すところがはっきりしていますし、自分がやりたいこと(欲求)もはっきりしています。外側に向かうということは自分が満たしたい目標や志を立てて進んでいくということですが、逆に言えば、いま現在は満たされていない状態だと自身が感じているために目標を達成させて欠けたものが満ちた状態になりたい、という欲望を持っているとも言えます。
 また、黒川千秋は外側へ向かう欲求が強いタイプです。

頂点を目指す

 すべてのトップを目指すなんて、どうやったらできるのでしょうか!? でも千秋はトップに立つためにアイドル活動という冒険にトライしていきます。これを裏返せば千秋はそれだけ大きな欠落を抱えているとも言えそうです。しかしその欠落を埋めるため、どんなに辛くても完璧に仕事をこなすという勇気を持っているのが黒川千秋です。
 外側に向かうタイプのアイドルは欠落を抱える一方で、それを埋めようとするエネルギーや勇気を持っています。ゆえに彼女たちは前進し、自分の外側にいる人々、社会、世界に対して働きかけていきます。

・内側を見るアイドル

 次に内側を見るアイドルについて考えてみます。内側を見るアイドルたちの代表として、村松さくらを見てみましょう。さくらは具体的に「自分はこういうことがしたい・こういうことができる」と外側にアピールすることはあまりありません。逆に、アイドル活動をする中で自分の内側を見つめ直していきます。

「ふたり」というのはさくらの友達である大石泉と土屋亜子のこと

 自分にできることが全然ない状態から自分を見つめ直してみると……

わからないから答えを求める

 さくらの内側には笑顔というすばらしいものがあって……

さくらの内側にあるパワー

 自分の内側にある、他人を幸せにする力を再発見して……という流れでさくらは自分の長所を見つけていきます。このあたりは小早川紗枝のメモリアルコミュ4と比較してみるとわかりやすいです。紗枝のメモリアルコミュ4では紗枝が身につけていたスキルを駆使することで撮影現場のトラブルを解決してハッピーエンドとなるお話ですが、紗枝がスキルを用いてピンチを脱したのとは対照的に、さくらはごく自然に「笑う」ことだけで自分の内側にある力を見つけました。技巧的なものではなく笑顔という素朴な振る舞いがさくらの力になり、さくらは成功していきます。実際、さくらのメモリアルコミュ4では笑顔をきっかけにさくらが闘志を得る様子が描かれています。
 自分の内側に目を向けるアイドルとしてはほかに和久井留美が挙げられます。留美はアイドル活動を通して自分の内側にある仕事観・人間観を見直しました。また、向井拓海もアイドルの世界に触れて「真剣勝負をやっている奴らの中では自分も真剣にやらねばならない」という自分の内側にある信条を改めて受け入れ、成長していきます。
 内側を見るアイドルたちもまた欠落を抱えていますが、それを自分の中にあるものを再発見することで満たそうとします。具体的な、目に見える成果ではなく「自分がこれでいいから、これでいいのだ」という自己の内側で問題を解決します。自分を見つめ直し、自分を励まし、自分を適切に評価します。これもまた勇気を要するプロセスですが、外側へ突き進む過程とは真逆のプロセスです。

・まとめ

 以上、外側に向かうアイドルと内側を見るアイドルについて考えてみました。冒頭に書いたとおりこの分類は大雑把で、外側にも内側にも関心を持つハイブリッド型のアイドルもいると思います。ただ、シンデレラガールズのキャラクターたちにとってアイドルとは自分を成長させるエンジンであり、アイドル活動を通して心身が向上させていくのをユーザーは楽しみにしています。
 例えばスポーツをテーマにした物語ならば強豪を打ち破って全国大会で優勝する、ファンタジーものであれば勇者が悪の大魔王をやっつける、などなど、主人公が困難を解決して成長するというのは物語の王道を行く展開ですが、シンデレラガールズでもまたアイドルたちが困難を解決して成熟していくという展開が描かれます。その成熟のプロセスとして外側に向かうか、内側を見るか、というアプローチがあるわけです。どちらかが優れているわけではありませんが、たくさんのアイドルが登場するシンデレラガールズはそのアプローチがグラデーションを描き、いろいろなパターンで表現されています。そのパターンの多彩さがシンデレラガールズの美しい点の一つだと思います。
 そんなわけでこの記事はお終いです。最後までお読みいただきありがとうございました!

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