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019【なぜ男女の賃金に格差があるのか:女性の生き方の経済学】を読んで


書籍情報

書籍名:なぜ男女の賃金に格差があるのか:女性の生き方の経済学
著:クラウディア・ゴールディン
訳:鹿田昌美
発行日:2023年4月

内容判定

●読みにくさレベル……【3】内容は難しくないが、いかにも学術書的で考えて読む必要がある
●参考文献……注付き、約60Pの参考文献一覧と原注一覧有り、資料付録付き
●内容の偏り……特になし
●内容ページ数……約310P

概要

 主にアメリカでの「男女における賃金の格差」に関して歴史的な背景とデータから検証している。女性が社会へ進出し、仕事をし始めるようになった100年間を5つに区切り、女性のキャリアと家庭における関係性がどのように変化したかという視点で研究している内容をまとめている本となっている。
 生活環境の変化、労働環境の変化、ピルがもたらした女性のキャリアへの道筋、いくつかの女性労働者の事例、主に女性が働いている職業の事例など、幅広い観点からなぜ男女の賃金に格差があるのかを考察している。

どういう人が読むべきか

 男女の賃金の格差という問題に関して、深く理解したいという人が手に取るべき本だと思う。著者の意見や思想が前面に出ている問題提起型の本というよりは、あくまでデータをしっかりとまとめあげることで問題点をハッキリとさせる論文のようなものに近い。ネットでのニュースやSNSで見かけるような男女の格差的なものを通して本書を手に取ると内容の真面目さに少し戸惑うかもしれない。
 出てくる事例や統計、データ等はそのほとんどがアメリカのもので、日本の現状とはやや異なった印象を受けるかもしれないが扱っている内容は日本でも当てはまる本質的な問題を明らかにしている。

キーワード

・ガラスの天井
・マリッジバー
・マーガレット・サンガー
・プリンシパルエージェント問題

以下、感想

 なかなか男女格差そのものズバリを書いてある書籍を読む機会がなかったので非常に楽しみだった1冊。ある程度本を読むようになってからこの普遍的な問題に関していくつかのデータと私見を目にすることはあったが、長い間続いている男女間の格差を解消する根本的な処方箋が生み出されていないのが現状なのではないかと感じる。私はこの男女の差なるものに対して個人的な回答を考えてはいるが、別に研究者や専門家というわけではないので、この本である種の答え合わせができるのではないかと期待をしていた…というのが本を読む前までの評価である。
 なんらかの回答がわかりやすく書かれている…というよりは、アメリカにおける男女の賃金格差をその歴史から明らかにした、という印象を強く受けた。書いてある内容自体は誰が読んでも同じことを説明できるだろう。しかし、この内容からどのような感想を抱くかはおそらく千差万別なのではないだろうか。私はこの本、この問題から一貫して書かれているキーワードが頭から離れなかった。そのキーワードは

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