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025【気候危機とグローバル・グリーンニューディール】を読んで


書籍情報

書籍名:気候危機とグローバル・グリーンニューディール
著:ノーム・チョムスキー/ロバート・ポーリン
訳:早川健治
発行日:2021年12月


内容判定

●読みにくさレベル……【2.5】一般向け~解説書レベル
●参考文献……注付き、巻末に10Pほどの一覧
●内容の偏り……気候危機に対応を求める側から
●内容ページ数……約300P


概要

 まずはよくわからない団体の日本語版へのまえがきが20Pほど、本書の内容とはあまり関係なかったのでスルーでも可(自分としては著者の文が読みたいのであってこういうのはいらないです。内容も本の内容ではなく自分たちが何をしてるかとか、重要なところには注が無かったり、本の質を下げてないか?)。
 気候変動が与える影響から話は始まるわけだが、ここらへんは説明するまでもないような定説が並ぶ、産業革命から加速する技術革新によって温室効果ガスの排出は増え、気候に影響を与えるような人間の活動が盛んに行われている(森林の伐採など)、そしてその結果、気温が上昇し、異常気象が起こっている…、北極の氷が溶けて海面が上昇している…、…などなど、おそらくニュースでも耳にするような内容であろう。その次には主にアメリカで推し進められた資本主義の問題点を指摘しながら、脱化石燃料、クリーンエネルギーへの変革の重要性を説く。そしてタイトルにもあるようにグローバル・グリーンニューディールとして何を行っていくべきかを1章分を使って説明されている。


どういう人が読むべきか

 環境問題に関する現状や問題点が一通り網羅されている。文体も読みやすく、質問に答えるような形式で主張がわかりやすい。著者も海外の知識人であることから日本とは違う視点(主にアメリカ)からの考えを知ることができる。


キーワード

・人新世
・炭素税
・カーボンキャップ
・フードロス
・クリーンエネルギー
・ジオエンジニアリング
・福島第一原発
・気候正義
・脱成長
・欧州グリーンディール


以下、感想

 おそらくニュースで聞いたことがある人も多いであろうCO2実質排出量を2030年までに○○%削減、2050年には実質ゼロに到達するという目標に関しては、環境系の書籍でも必ず触れられているが、明確な、具体的な施策や回答という点では(個人的に)納得できるようなものを見たことはない。現状では問題点や課題がある新技術を例に出し、最終的には科学の進歩によって解決できるだろう…や、政府と民間が協力すれば達成できるだろう…といった、ふわっとした言葉が並ぶことが多い。
 アメリカにおける軍事予算から気候安定化に向けて予算を移転すべきだ、という主張があったが、2022年からのウクライナ戦争や中国との対立、台湾をめぐる問題をふまえれば、この主張はかなり難しくなったと考えられる。もちろんアメリカからすれば関係のない他国のことである、と世界の警察から遠ざかるのは簡単なように思えたが、ロシアや中国の態度を見れば、戦争状態になった国においては気候変動に関する問題は少なくとも優先されない。これは(少なくとも)アメリカと協力関係にある日本にいる人の意見かもしれないが、ロシアや中国が力で台頭する世界とアメリカが力を誇示する世界では、どちらが気候変動という長期的な問題に対応できるのか、を考えるとアメリカの軍事力が縮小することがプラスだとは思わなかった。
 グローバル・グリーンニューディールの章にある脱成長の話は興味深かった。著者がいう事例はくしくもコロナ禍によって引き起こされたわけだが、やはりそれだけでは気候変動への問題点に解決策をもたらすように思えなかった(第4章ではまさにそれを説明している)。また、脱成長のような施策が引き起こす問題点によって

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