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020【デマの影響力――なぜデマは真実よりも速く、広く、力強く伝わるのか?】を読んで


書籍情報

書籍名:デマの影響力――なぜデマは真実よりも速く、広く、力強く伝わるのか?
著:シナン・アラル
訳:夏目大
発行日:2022年6月

内容判定

●読みにくさレベル……【2.5】基本的には読みやすいがページ数は多い
●参考文献……注付き、巻末に40Pの参考文献一覧有り
●内容の偏り……特になし
●内容ページ数……約540P

概要

 シナン・アラルが現代の、つまりはネットを介した情報の拡散に関して「ハイプ・マシン」という独自の観点から解説している。インターネットが普及した現代をニュー・ソーシャル・エイジとし、ソーシャルメディアを通して行われるリアルタイムでの情報の拡散をハイプ・マシンと称し、ハイプ・マシンによって生じる影響を考察する中で、フェイクニュースやアテンションエコノミー、デジタルマーケティングなどの身近な事例を紹介する内容となっている。今や私たちが生活する中で必須とも言えるネット環境からどれほどの影響を受けているのかを理解できる1冊。

どういう人が読むべきか

 「デマの影響力」というタイトルを見るとそれこそフェイクニュースや悪質な切り抜き、誹謗中傷みたいなものを想像し、それらがどのように広まるかという話を想像するかもしれない。ただ、この本はそういった少し外側の話というよりはもっと身近な部分に焦点が当てられている。私たちが利用しているスマホやネット、SNS、そういったものの仕組みがどうなっているかという説明がかなりのページ数を占めている。
 ネットを介したマーケティング手法やそれに準ずる心理学的なアプローチ、それらを検証している研究やデータを集め、説明することによって、私たちがなんとなくネットを利用し、知らず知らずのうちに受けている影響を知ることができる。特に10代~30代は本書に記されている事例を自身の体験として理解できるだろう。この本の内容はマーケティングや心理学に興味がある人だけでなく、ネット利用者の全員に読んでほしい内容である。

キーワード

・サーベイランスキャピタリズム
・フェイクニュース
・アテンションエコノミー
・モラー報告書
・反ワクチン
・エコーチェンバー現象
・シンセティックメディア
・GAN
・人工知能
・禁じられた三者関係
・閉じた三角形
・ハイパーソーシャライゼ―ション
・メトカーフの法則
・ダンバー数
・データ・ポータビリティ
・アトリビューション分析
・統合デジタルマーケティング
・反射問題
・リファラルマーケティング
・ケンブリッジアナリティカ
・群衆の知

以下、感想

 さて、まずこの本はコロナ禍の中で書かれたものというのがまえがきで説明されるところから始まる。そしてSNS、もしくはインターネットの利用に関する良い点と悪い点、ハイプ・マシンという聞き慣れない単語が目を引く中、2014年のクリミア半島を紐解く。…この本が500Pを超える辞書のような分厚さじゃなければもっとオススメの本として紹介できたかもしれない。いや、そんなことはともかく言いたいことは、私たちは気軽に使用できるインターネットやSNSに関してもう少し理解を深めるべきだということで、この本はまさにそういった目的に沿う内容となっている。タイトルは「デマの影響力」だが、内容はSNSやソーシャルメディアの仕組みの説明といった方が正しいかもしれない。タイトルを内容そのものに則するならば「デマ」というよりは「ネットそのもの」がどのように私たちの行動や考えに影響を与えるか、といった方がわかりやすいだろう、
 冒頭でもっとも目についた言葉は、政府が

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