マガジンのカバー画像

みちのく潮風トレイル冒険録

23
みちのく潮風トレイルをめぐる冒険に挑んだ記録です。
運営しているクリエイター

記事一覧

固定された記事

みちのく潮風トレイル冒険録1:相馬市から新地町へ(松川浦→あぐりや)

 みちのく潮風トレイルという道がある。青森県八戸市から福島県相馬市まで1,053kmを結ぶロングトレイルである。ロングトレイルとは長い長い距離をひたすら歩くロングディスタンスハイクのための道のことで、みちのく潮風トレイルは2019年に全線開通した比較的新しい道だ。ロングトレイルという文化を日本に紹介したことで知られるライター、故・加藤則芳氏の以前からの提唱を原点として、東日本大震災をきっかけに環境省が震災復興を目的の一つに作り上げたトレイルだそうだ(加藤氏はこのトレイルの全線

みちのく潮風トレイル冒険録23:船越半島・霞露ヶ岳の死闘(岩手船越駅→ふれあいパークやまだ)

 みちのく潮風トレイルのうち、釜石市と宮古市のあいだには、難所と呼ばれる半島が3か所ある。南から順に箱崎半島・船越半島・重茂半島だ。前回の旅では、このうちの箱崎半島を2日かけて攻略した。  箱崎半島の旅は暑かったものの楽しかったので、夏のうちにもうひとつ難所を攻略してしまおうと思いたった。そこで、箱崎半島と船越半島の間にある大槌町のセクションはいったん後回しにして、難所三兄弟の2番手・船越半島に挑むことにした。船越半島は一周約34km、アップダウンもあり一日で回ることは難しく

みちのく潮風トレイル冒険録22:箱崎半島は動物日和(両石→鵜住居)

 今回の冒険の舞台はみちのく潮風トレイルの難所のひとつ、釜石市箱崎半島。箱崎半島一周は約35km。一日で歩けない距離ではないが、途中の千畳敷に寄り道をすることを勘定に入れると、途中でセクションを区切ったほうがよさそうだ。というわけで、途中どこかで野営して2日間に分けて歩くこととし、ザックに野営用のツェルトを詰め、冒険に出発した。 DAY35:両石駅→大刈宿2024年8月24日(土)  JR釜石線快速はまゆり53号釜石行きは混雑している。どうやら途中の遠野でお祭りがあるらしく

みちのく潮風トレイル冒険録21:旅のリスタートは雪の鳥谷坂(釜石駅→両石駅)

 お久しぶりの冒険録の更新となる。  前回、釜石まで歩いた記事の最後で、歩くこととは別な新しい冒険に挑戦することを計画していて、しばらくはその準備のために時間を割きたいので釜石でいったんみちのく潮風トレイルの冒険を歩くことを中断すると書いた。  前の記事では明言していなかったが、実は、新しい冒険とは社会人向けの大学院入試に挑戦するということだった。  トレイルを何時間もかけて歩いていると、歩きながら色々なことに考えをめぐらす。歩きながら自分のキャリアについて考え直した時、かつ

みちのく潮風トレイル冒険録20:3月11日、越喜来、潮目の出会い(甫嶺駅→吉浜駅→釜石駅)

 昨年の3月11日は、石巻市の雄勝半島のトレイルを歩いた。それから1年かけてトレイルを北上してきて、冒険の舞台は宮城県から岩手県へと移った。そして、今年の3月11日は大船渡市三陸町を歩くことになった。これが、私にとっては思いがけない出会いの旅となった。  ちなみに今回の旅は同行者がいる。弟を誘って一緒に歩くことにしたのだ。いつもは一人で黙々と足を前に運ぶだけの旅だが、弟とおしゃべりしながら歩けばいつもとは違った楽しみも生まれるだろう。 Day31:甫嶺駅→三陸駅→吉浜駅20

みちのく潮風トレイル冒険録19:綾里崎に朝が降る(盛駅→甫嶺駅)

 予定では前回の旅で2022年の秋のトレイル歩きを終了にするつもりだったのだが、雨で予定の行程を歩くことができなかったのが悔しかったので、急遽予定を追加して歩くことにした。今回の冒険の舞台は、大船渡市の東部、旧三陸町にある綾里半島である。 Day29:盛駅→綾里郵便局2022年10月31日(月)  今回は、新幹線で新花巻駅まで行って釜石線に乗り換え、釜石駅からは三陸鉄道で盛駅まで南下するという行程で大船渡市へ向かった。盛駅よりしばらく進んだ、大船渡警察署に面した交差点が本日

みちのく潮風トレイル冒険録18:大船渡、夕方5時のチャイム(小友駅→盛駅)

 またしても冒頭から話が横道に逸れて恐縮だが、いい機会なので、この冒険録の書き手である「海老名」とは何者であるのかをここで定義付けておこうと思う。  「海老名」とは、「アイドルマスターシンデレラガールズ」というゲームにおける「ブルームジャーニー」というユニットの担当プロデューサーとしての、私の「分人」である。  説明が必要な単語がいくつか出てきた。  海老名が「アイドルマスターシンデレラガールズ」というゲームにおける「ブルームジャーニー」というユニットの担当プロデューサーであ

みちのく潮風トレイル冒険録17:遂に岩手県へ・雨の陸前高田と広田崎(唐桑大沢駅→小友駅)

 遂に冒険の舞台は宮城県から岩手県に移ることになる。今回の冒険の舞台は岩手県最南端の自治体、陸前高田市。東日本大震災の被害の甚大さで全国に知られたまちの海岸線を歩く旅となり、またしても震災遺構を訪れることになる。  みちのく潮風トレイルは確かに震災がきっかけで整備された道であり、震災の被災地を自分の足でめぐるというのが私の旅のひとつの目的であることは間違いない。旅の記録を綴っていくと、どうしても震災について触れることが多くなってしまう。しかし、みちのく潮風トレイルの魅力はほか

みちのく潮風トレイル冒険録16:唐桑半島ソロキャンプ(早馬神社→唐桑大沢駅)

 本題に入る前に、前回の最後に訪れた早馬神社に展示してあった、詩人梶原しげよの詩を再度引用しておこう。  この詩の、"ゆめがあるから歩む"という一節が、みちのく潮風トレイルをめぐる私の冒険に通じるものがあるような気がして、妙に心に残っている。  トレイルを歩むにあたっての”ゆめ"とは、第一義的にはもちろん、ゴールである八戸までの全線を歩き通すという目標である。  しかし、私には他にもいくつか"ゆめ"がある。  ひたすら歩くという行為はともすれば単調になりがちだが、贅沢な時間

みちのく潮風トレイル冒険録15:おかえりモネの舞台・気仙沼大島(鹿折唐桑駅→早馬神社)

 今回の冒険の舞台は、大島(通称:気仙沼大島)という離島だ。大島は東北地方最大の有人島で、かつては汽船で気仙沼と結ばれていたが、2019年に気仙沼大島大橋が架橋され陸路で行き来できるようになった。トレイルは、そんな大島を一周する。また、大島は2021年のNHKの朝の連続テレビ小説"おかえりモネ"で、主人公の出身地とされた亀島のモデルでもある。 Day22:鹿折唐桑駅→龍舞崎入口2022年4月29日(金)  気仙沼に仙台方面からJRでアクセスするには、2通りの方法がある。ひと

みちのく潮風トレイル冒険録14:桜舞う気仙沼(本吉駅→鹿折唐桑駅)

 春の陽気に誘われ、前回に引き続き2週連続で週末のトレイル歩きに出かけることにした。折りしも東北は桜の季節、今回も天気に恵まれて気持ちのいい旅となった。 Day20:本吉駅→大谷まち駅 2022年4月16日(土)  JR気仙沼線BRTで前回の中断地点である本吉駅に降り立つ。駅の周辺は旧本吉町の中心市街地、津谷という名の集落になっている。トレイルは津谷の市街地の外周をぐるっとまわっていく。津谷は海岸線からは少し離れた集落だが、東日本大震災のこの集落まで津波が襲来したことを示す

みちのく潮風トレイル冒険録13:信仰の山・田束山(志津川駅→本吉駅)

 前回、遂に難敵雄勝半島を攻略した。これで、福島県相馬市から宮城県南三陸町までの区間を一筆に歩き切ったことになる。石巻周辺は旅程の立てづらいセクションが多く、攻略する順番を入れ替えたり南北を逆に歩いたりと、色々と工夫が必要で苦労した。しかし、南三陸町から北のセクションはしばらくあまり苦労せずに攻略できそうなセクションが続くようだ。さあ、旅をどんどん続けよう。 Day18:志津川駅→入谷簡易郵便局2022年4月9日(土)  高速バスでJR志津川駅に降り立つ。プレハブの志津川駅

みちのく潮風トレイル冒険録12:雄勝で迎える3月11日(おがつ・たなこや→新北上大橋)

 みちのく潮風トレイルのルート上で、3月11日の14時46分を迎えてみたい。そんなことをぼんやりと思っていた。それもせっかくなら、これまで私を悩ませてきた難所雄勝半島で3月11日を迎えてみようと思った。それが、前回雄勝半島攻略を一旦後回しにすると述べた理由である。そういうわけで、あの震災から11年という節目の日に、私は雄勝半島に降り立った。 Day16:おがつ・たなこや→大浜峠2022年3月11日(金)  前にも述べたが、雄勝半島へアクセスする公共交通機関である石巻市の住民

みちのく潮風トレイル冒険録11:美味しいから揚げに癒される旅(新北上大橋→志津川駅)

 3月。天候も少しずつ春めいてきたので、冒険を再開することにした。  少々思うところがあって難所雄勝半島攻略は一旦次回に回して、今回は雄勝半島の北側、新北上大橋から南三陸町志津川までの区間を先に歩くことにした。 Day15:新北上大橋→志津川 2022年3月7日(月)  朝、前回の帰り道と逆の行程をたどり、仙石線石巻あゆみ野駅からバスで道の駅上品の郷へ、上品の郷からはおがつたなこや行きの雄勝地区住民バスに再び乗車、谷地というバス停で降りる。谷地バス停から本日のスタート地点”