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文字をなぞる芝居をするな

先日、とある劇団の舞台を観劇した。
客演もいたが、ほとんどの役者の芝居は酷い物だった。

セリフがスムーズに出てこないシーンがいくつかあった。これは、覚えていないという事ではない。覚えていても陥る物だ。

ただ、これはセリフを文字として暗記していると出現する。
というのは、セリフは本来覚えた後は、捨てていかなければならない物だから、それをやらずに頭の中で文字をなぞっているとこうなる。

頭の中からセリフを捨てるのは怖い。だからずっと他の人のセリフも全部言葉じゃなく文字として認識し、聞いても意味を捉えず、自分の番が来る事を考え、〇〇のセリフの次に自分が喋ると考えている。

そんな事をしている人間がこの世にいるわけがないのに。日常生活で、自分の喋る番は〇〇さんが、△△と言った後に、私が◇◇を言う。なんてありえない。

この思考の時点で芝居として成立していない。にもかかわらず、この芝居をする役者の多いこと。表面的にしか覚えていないから、いざ本番で緊張などをすると、簡単にセリフが出てこなくなる。変なポイントでセリフを区切ったり、詰まったりする。

覚えたら、頭にはセリフなんて必要ない。稽古では飛んでもいいし、間違えてもいいって気持ちでチャレンジしないと。台本の中身を思い浮かべながら、役を生きられる訳ないだろう。

そんな事をやっているから、自分が喋らない時にどうしたらいいかわからなくなるし、居心地が悪くなるし、他の人のセリフや動きに嘘の反応しか出来なくなる。

立ち稽古を1周か2周したら、セリフは思い浮かべないようにして、他の人や舞台で起こっている事に集中する事。失敗してもいいから、怖がらない事。まず、これが出来ないと芝居にならない。

お金と時間をお客さんから貰ってるんだから、「芝居」を見せる義務がある。趣味の集まりやお遊戯会をやってるんじゃないんだから。

基礎がわかってないとか、稽古不足とか、役作りが足りてないとか、そういうのが見える舞台は観たくない。

実力がないけど、やろうとしてるのがわかる芝居は全然OKだ。また次が見たくなる役者だなと思える。

無駄に芸歴だけ長いくせに、ずっと相手のセリフも聞けずにいる役者は可哀相なもんだ。きっと誰も何も言ってくれなくなってるんだろう。それか、芸歴のプライドが邪魔をして何も耳に入らないんだろう。

まずは、しっかりと覚える。稽古を通して、家で、もっと心と体に染み込ませる。そしたら捨てる。頭にはセリフが無い状態にする。
そして、他の人や起こった事を感じ、受け、セリフを発する。これをやる事で、気付く事や知れる事は多い。

役者として、役として、どんどん深くなっていける。

舞台の上で頭の中にある文字を口にするだけの芝居なら、お客さんに台本を読んでもらえばいい。
でも、お客さんが見たいのは役者の心を通した芝居だ。頭でやる芝居じゃなくて、心でやる芝居だ。

演じてる方も、セリフを捨てた方が絶対に楽しいから、どんどんチャレンジしてほしい。

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