顎が外れることはある

19歳ある日の深夜、口を開けたら閉じなくなった。
あれ、もどらないな、と顎が外れたことに気づいた。外れたのはこれが初めて。

もともと噛み合わせが悪く、歯ぎしりもしていたのもあって顎に負担をかけていたのだと思う。

どうしようかと思い、とりあえず検索してみた。だけど、直し方はネットに載っておらず、自力では無理だと悟った。

深夜12時くらいだったから、歯医者もやってるはずもなく、とりあえずこれは私にとって緊急事態であり、焦っていたので母親に電話をした。「あおあはうえあ(顎が外れた)」と伝えた。

そこで助言もらい、とりあえず、救急のコールセンター(?)に電話でなにか聞いてみようと思って電話をしてみた。明け方5時。電話の人は冷笑という感じの態度だった。今医者はやってないのでどうすることもできないみたいだった。今どうにかするなら何万円かかるとか言われた。ただ顎が外れたことを笑われただけで、ショックだった。ひたすら朝まで耐えることにした。

だんだん顎も痛くなってきて、口が閉じないので涎を垂らして、泣きながら6時間くらい耐えた。

8時になって、ようやく歯医者に電話をし始めた。
ちゃんと喋れないのに電話するのは大変だった。
1件繋がったところは顎を直すのはできないらしく、「お気の毒に」と言われた。とても恥ずかしかった。

そして9時頃、予約できた歯医者に向かった。涎が垂れないように口にティッシュを詰め、顔を隠すためにマスクをして、異様に顔が長い人になりながら、チャリで歯医者に向かった。

そこはとても優しい歯医者さんで、色々試みてくれた。だけどそこでは治らず、大きいところを紹介された。そこへはバスで向かった。

そこは、大きい病院だったから、周りの目線を気になりながらも、なんとか問診書いて、顎のレントゲンなどを撮り終え、先生に診てもらうときになった。

先生は暫く顎を触ってから、「力抜いてね」と言った。次の瞬間スッと顎が嵌っていた。

思わず、 あ!と歓喜の声が漏れた。10時間ぶりに顎が嵌った感覚は、決して忘れられない。

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