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恋愛のことと心のこと 5

 順調にデートを重ね、2、3度目に彼と一緒に言ったのはレイトショーだった。映画が終わった後、彼は私を夕食を一緒に食べて帰ろうと言ってきたがそれを断った。というのも、私は度々健康的に生きる方法のようなものを試している。それをする一番の理由はダイエットではなく、精神的に安定して生活が送れているという自己暗示をするようなものだ。そういう訳で夕食を摂る時間を決めているのだが、彼が誘ってきた時刻はそれを越えた22時だった上に、明日は仕事なので早く帰りたかった。

「ごめんごはん食べる時間ある程度決めているんだ、あと明日仕事なんだ」
そう言うと彼は
「え〜残念だな、じゃあ一人で食べて帰るよ」
と言った。
 私は申し訳ない気持ちになった。折角誘ってくれているし、私と一緒にいたいという意思を示してくれるのはありがたいことだ。だがここで無理をしてこの時間に夕食を摂るのは気持ち的にも、明日の身体的にもまずい、と思ったため
「じゃあ途中までは一緒に歩こうか、駅の近くになったら私は曲がるから」
 と言った。


 そしてしばらく話をしながら歩き、帰るために道を曲がる段階になった。
「それじゃ」
と私は言った。すると彼は
「え〜」
と言った。私は驚いて「えっ、何」と言うと
「いや、一緒に歩けば食べる気になると思って」
と返してきた。私はさらに驚いた。
「いやいや、はじめに言っていた通り、もう時間も遅いし、明日は仕事だから帰るよ」
彼はまた「え〜」と言った。しかし私はここで折れるのは明日の仕事的にもまずいと思ったので「いや、ごめんね。それじゃ」と言って意見を曲げずに帰った。


 帰りの電車の中、はっきり言ったものの胸の中にもやもやが残っていた。私は自分の気持は話している。彼も自分の気持は話している。嘘をつかれたい訳ではないし、相手にあわせて無理をしてほしい訳ではない。でも私は都合よく相手がうんうん自分の話を聞いてくれるのを求めている。「え〜」ってなんだ、と思っている。そして彼に「え〜」と言わせてしまう自分に罪悪感ももっている。なぜ人にあわせられないのか、そう思っている。じゃあ私も「え〜」といえばいいんだろうな、そうやって気持ちのすり合わせをするべきなんだろうな。
 人と関わっていくのって本当に難しい。私のいま周りにいる人はどうだったかな、友達とは「いいよいいよ」「そっちこそいいよいいよ」が多いかな「じゃあ私が譲ってもらっちゃおうか」こんな感じだっただろうか。友達とは違うんだな。「距離が近いからこうやって「相手に合わせてほしい」でもやもやすることになるのかな。
 もっと言い合うことに慣れないといけないんだろう、それが恋愛するということなんだろう、そう思った。

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