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【読書感想】さまよう刃【小説】

『さまよう刃』 東野圭吾

15歳の女の子が花火大会の帰りに男たちに連れ去られ、乱暴を受け後日遺体となって発見された。その事実を知った女の子の父親が復讐をする為、犯人を一人殺してしまう。そしてもう一人の犯人を探しに行く、というお話です。犯人が憎くて憎くて仕方ない、その父親の悲痛な叫びが痛いほどに伝わってきました。

警察に届いた手紙には犯人へ復讐しに行くこと。親戚や友人たちにどうか押しかけないで欲しいということ。迷惑をかけたくない、それが終われば自分はどんな罪でも受け入れる、死刑でも構わないと綴られていた。

もちろん復讐をしたからと言って娘が帰ってくるわけでも、娘の受けた痛みが消えることはないということは分かっている。それでも父として命より大事な娘を己の欲望で弄んで遺体を隠し川へ流す、そんな残虐な事を平然でする犯人たちが許せず復讐をせずにはいられなかった。犯人達がもし未成年であれば法律で犯人は守られてしまう。しかも犯人の顔を知ることすら出来なくなってしまうかもしれない。法律は被害者の為にあるのではなく、加害者の為にあるのだと父親は嘆いていました。必ずこの手で娘の復讐をすると、犯人を捜しに行きます。その道中で父親に手を貸してくれる人も現れました。

この本とは全然違うのですが、以前観た「藁の楯」という映画を観た時も、衝撃を受け一体何が正しいのか考えさせられた記憶があります。犯人の命を狙う者からSPは犯人を守らなければいけなかった。その中で仲間がだんだんと命を落としていく、仲間内の裏切りもある。殺された女の子の父親が復讐するその時も守らなければいけなかった。この父親に殺されるのが一番いいのではないかという気持ちになっても生きて護送しなければいけない。なぜこの残虐な犯人の為に、仲間たちが死ななければならないのか、復讐をする親から犯人を守らなければいけないのか。何が正しくて何が正解なのか分からなくなってくる。映画を観終わった後もしばらく放心状態だったのを覚えています。

その時に見た映画と同じような気持ちだったと思います。手紙が来た時に警察も内心ではそのままにしておきたかった、父親に復讐を果たしてほしい。でも立場上誰もそんなことは言えない。彼は娘の復讐とはいえ殺人犯である。
もしそれが自分の娘だったら自分はどうするのか。

最後の展開はびっくりしました。謎の密告があの人だったとは。うーん、終わり方はすっきりしない。悲しいです。
このお話自体悲しくて救いがないのですが、もうちょっと救いがあってもよかったのかなと思いました。

とても苦しくて理不尽で考えさせられる本でした。東野圭吾さんの作品は前にも読んだことがあり、心乱される作品や感動する小説も読ませていただきました。
東野圭吾さんの作品ももっとたくさん読みたいと思っています。
たくさんの人に読まれている理由が分かります。

今回読んだのは重たくて辛い内容でしたがきっと他人事ではない、色々考えさせられました。読んでよかった本でした。



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