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忽湧 7/7 「電掌」
又聞き話です。
その人を仮にAさんと呼ばせてもらいます。
Aさんは大学生なんですけどね。
そろそろ就職が近いのでインターンとか、説明会に足を運んでいたそうで。
ある日のこと。Aさんが新宿に行かねばならないことになりまして。
Aさん、真面目な人なんでね。もう何社も説明会には出てますから、特に緊張もせず、万丈な状態で向かったそうです。
で、新宿駅って工事してるじゃないですか。西口の方とか特に。
で、工事の足場とか、内部とか、ちょっと見えるところがあるんです。
で、Aさんがふっと目をやるとですね、何かいるんですって。
Aさん、その時はそれがなんなのかわからなかったそうなんですけど。
今思い出すと、喪服の女だったと。
小さい手を握っているんですけど、手の主は暗闇で分からなくて。
で、その女、こっちに手を伸ばしてくるんですって。
「おいでー。おいでー。」
あ、これは人間じゃないな、と直感で理解したそうです。
というのも、声がまるでラジオのような、ノイズが入ったような音で。
声帯から出る声ではないと思ったそうです。
Aさんはそそくさと駅から出て。説明会の会場に向かったそうです。
で、新宿の西の方ってビル群じゃないですか。
だから、景色なんてビルで遮られて見えるわけないんです。
それなのに、駅からアイツが来ていると思ったそうです。
これがさっきのような直感ではないのだというんです。
Aさんには喪服の女が寄って来ているのが見えたそうなんです。
しかも、小さくではなく、大きくなんだそうで。
こう、写真に無理やり人をくっつけたような、コラージュのように。
遠近法を無視している、というのが一番端的でしょうか。
それで今もAさんには見えているそうです。
その女がこちらに向かっているのが。
幸運なことに足は遅いようですが、いつ追いつかれるのか、そして追いつかれたらどうなってしまうのか、怖くて怖くて仕方ないそうです。
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