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忽湧 7/2 「家庭科の先生」

小学校で家庭科の授業を受けてたんですよ。

んで、なんだっけな。ケーキの調理実習だったかな。いつもはね、気さくで良い先生なんですよ。
まえせん、なんて言われて好かれてました。

でもその日だけ、

「君はよし」

「お前はダメ」

って、先生が生徒に向かっていうんですよ。

お前なんて言う人じゃないし、生徒にダメだしとかも普段しないんですよ。
その日だけ、おかしかったんです。
なんなんですかね、こう。
品定めしてるといった感じで。
しかもケーキの出来とかじゃないんです。

それで、よし。と言われた人だけ放課後に家庭科室へ来るように言われてて。

普通ダメな子を残すでしょう?
変だなあ、と思って。
私の通学路が同じ友達も残るよう言われてましたから、家庭科室の外で待ってることにしたんです。

うちの校舎は当時かなり古かったもんですから、授業の声とか、それこそ家庭科室なら、泡立て器がボウルにあたるカチャカチャした音とか、チョークを黒板に擦り付けるカッカッという音がするもんなんですけど、
なんの音も聞こえなくって。

そーっと扉の小窓から覗いたら、
皆、前をじっと見て、無言なんですよ。
うちのクラスはいつも騒がしいので異質なように感じられました。
表情もなくって。真顔といいますか。

怒られていてバツが悪いような様子でもないし。

先生も何も話さず、真顔で。

あっけに取られてたら、先生がラジカセを取り出してきて。

え?いやー…内容は覚えてないんですよね。
ただ、なんと言いますか、お経のような、つまらない内容だったかな。

なんだったんですかね。あれ。

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