見出し画像

忽湧 7/6 「ボンド」

叔母は2年前に亡くなりました。
叔母は独身で岐阜の田舎に住んでいたもので、
両親と私くらいしか親戚が居なくって。
両親も高齢で岐阜まで行くのも大変ですから、
私が叔母の墓参りに行ったんですよ。

墓地の駐車場に車を止め、水桶と花を持って叔母の墓石の前まで行こうとしたんですけど。

べちょお。

粘着質なものが、靴の溝にしたがって広がる感覚が足に伝わります。
思わず顔を顰めて、靴裏を見ると何か白いぶよぶよしたものがついていました。

ちゃんと清掃してくれよ、と思いましたが墓参りで衝突なんてごめんですから、気にせず向かうことにしたんです。

そしたら、叔母の墓がすごい荒らされてて。

さっきのべとべとしたものがベッタリついてて、

なぜか拡声器が墓石の横に貼り付けられていました。

そこでようやく白くてねばねばしたものが何か気づきました。
ボンドです。

あっけに取られていると、

「やっときてくれたねぇ。」

叔母の声です。あの拡声器から叔母の声がして。

気持ち悪くて、すぐに家に帰りました。

あれ以降、叔母の墓がある墓地に足を運んでいません。

ただ。最近、実家にイタズラがされていると大家さんから連絡を受けてて。

今、私の実家はインターホンにボンドをべったり付けられているそうです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?