愛知県立芸術大学 奏楽堂、芸術学専攻棟他/吉村順三 建築探訪 その15
愛知県立芸術大学(以下略称、愛知県芸)の2回目は、奏楽堂、芸術学専攻棟です。
奏楽堂は、前回の講義棟の東側にあり、メインキャンパスの軸線に対し反対側にそのバランスを取る様に配置されている。芸術学専攻棟は、キャンパスアプローチの入口付近に位置するので、この2つに関連は無い。
奏楽堂のファサードは、折板屋根の断面が特徴付けている。ふとアントニオ・レーモンドの群馬音楽堂を思い出した。今ではあまり見かけない屋根構造である。多分、型枠工事が煩雑なので、敬遠されるのだろう。
内部エントランスホールから振り返った画像が下記である。折板屋根の山型部や、妻側もFixガラスなので、内部は明るい。
設計年次が1969年なので、ドアはスチール製で、塗装剥がれなどが多かった。その点、年式を感じる。
ホール側はレンガ積みで、上部は地元産の陶製ホローブロック積みとなっている。ホール内面では、低音域の吸収としてレゾナーターとなる。ある意味、こういったディテールのデザインは美しい。吉村建築の真髄であろう。
ここで失敗したのが、ドアを明けて入ったら、暗幕で真っ暗だったので、閉館して暗いので引き返してしまった。
帰宅後、図面集で確認したら、音楽ホールは、ハイサイドライトを持つコンサートホールなので、暗幕の先に行くべきだったのだった。残念至極。
講義棟の南に位置する食堂(大学会館)平屋の上に取ってつけたようなR屋根が乗る。これも外部だけだが、Rのラインが綺麗だった。
上、ノコギリ屋根が特徴付けている日本画専攻・彫刻専攻棟。外観は痛みが厳しく形態的に補修が難しいのだろう。屋根はスチール製にOP塗りなので、耐久性には劣る。右手に新築の現場があった。多分更新されるのだろう。
最後に下記芸術学専攻棟。配置的には、キャンパスの西端のメインアプローチの入口付近にある。
実は帰ろうとしたら、余りにプロポーションが綺麗なので、近づいて観ていたら、出入り口ドアに「故吉村順三氏の建築作品なので、丁寧に使いなさい」と注意書きにあった。
これも、劣化が激しく、ちょっと痛々しい状態だったが、プロポーションは正に吉村建築であり、学校建築と云うより、住宅建築に近い雰囲気があった。まさに軽井沢の山荘に通づるものがある。
帰宅後、再度こうして見ると、もっと見るべきものがあったなと、後悔しながらこれを書いている。やはり、事前のリサーチが不足していた。
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