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[恋愛小説]2002年の二人の妻達.../5. 上野公園のリトマス試験紙

Two wives in 2002
登場人物

福山雅春  :大手N設計事務所 第1事業部 部長 46歳(1956)
石橋優香  :N系列設計事務所 住宅設計担当   27歳(1975)

有村かす美 :福山雅弥の元妻              40歳(1962)
有村香  :雅弥の一人娘            17歳(1985)
斉藤修   :石橋有華の婚約者、大手電機会社営業27歳(1975)
石橋吾郎  :優香の父             52歳(1950)
石橋桜   :優香の母                                       46歳(1956)
田口雅美  :福山雅弥の高校時代の友人     46歳(1956)

雅春と優香の2回目のデートは、都内・上野公園になった。

雅春が優香に上野公園はどうか?と言うと、優香は「はい。」と返事した。

優香には、今更上野公園の何が面白いのか、雅春が何処へ連れて行くのか、ある意味、興味があった。

上野公園と言っても広い。待ち合わせ場所は、東京文化会館の入り口と言われた。
雅春は待ち合わせ時間よりも早めに行った。

やはり、早めに来た優香は、黒のテーラードジャケットに白のフロアースカートと今日はシックな装いだ。

優香「今日は何処へ行くんですか?」

雅春「そこ。」と向こうを指さす。指の先に西洋美術館が見える。

雅春がチケットを買い、西洋美術館に入る。

企画展示は、素描展だった。常設展示へ行くようだ。

雅春「いつものモネの睡蓮や舟遊びなど、いつ見ても穏やかな気持ちになる。これだけでも、ここへ来る価値があると思う。」と20世紀ホールのスロープを歩きながら、優香に話しかける。

優香「そうですね。本当にいい絵ですよね。夢の様な..。」

実は、雅春は女性と付き合い始めると、必ずここへ彼女たちを連れてきていた。

この美術館に来て、モネの絵を見て、どう思うか。

何も言わない女、関心も示さず通り過ぎる女。

一方、それらの前に佇み、じっと見つめる女性がいる。

やはり、自分と同じ、感性や趣味を持つ女性とは、長く付き合えるが、そうでない場合は、その付き合いは短命に終わる。

それは、雅春の女性を見るリトマス試験紙だった。

そんなことだが、実は大切なことだと思っている。

そういう観点から見ると、優香はきちんと絵を向き合い、画家が何をそこに提示しようとしているのかを、真剣に見ている。

だから、この娘は、大丈夫だ。と思った。長く人生を共に歩けると。

優香は雅春のリトマス試験紙にブルーでパスしたらしい。

だから次に考えていた、国立博物館は省略した。

噴水の向こうに博物館が見える公園のベンチに座った、ふたり。

雅春「今日は、天気が良くて良かった。」

優香「わたし、晴れ女なの。」

雅春「自分は雨男だから、優香さんの晴れ女は強いんだ。」

優香「この後、どうします?」

雅春「晴海へ行こうか。」

優香「晴海に何があるの?」

雅春「自分のマンション。」

優香「お邪魔して良いんですか?」

雅春「優香さん、が良ければね。」

優香「はい、雅春さんの部屋見てみたい。」

雅春「45階だから、景色だけは良いよ。」

優香「へー、45階か。」

雅春「夕食は、自分が作るよ。何食べたい。」

晴海に着くと二人は、近所のスーパーマーケットで食材を買い込み、45階へ上った。

玄関のドアを閉めると、優香が抱きついてきた。買い物袋を置くや否や、唇を重ねてきた。玄関からリビングへ抱き合いながら移動する。

景色が楽しみとか言っていたが、景色なんて見る間もなく、一戦交えそうな勢いだった。

雅春「ねー、ちょっと待って。」

優香「なんでー。」

雅春「寝室、向こう。」

優香「抱いて行って。」

雅春が優香をお姫様抱っこし、ベットへ下ろす。

濃厚な交流が終わり、3度優香は行った。

優香「ここ、高かったでしょ。」

雅春「値段?社員価格で値引きしてもらった。」

優香「ここなら、私の市ヶ谷の事務所まで30分だね」

雅春「一緒に通勤できるね。」

優香「そうね、そうしようかな」

雅春「何か作るよ」

優香「料理出来るの?」

雅春「一人暮らしが長いからね」

優香「どうして、奥さんと別れたの」

雅春、しばらく考えて「僕が悪いんだ。あの頃は、馬鹿だったよ」

優香「ねー、もし、仮によ、私と結婚しても、浮気する?」

雅春「優香を悲しませることは、絶対しない。ここで、誓うよ」

優香「ちょっと、待って。」といい、自分のiPhoneを持ってくる。録音アプリをオンにする。

優香「さっ、もう一度、言って」

優香は録音していたが、やはりあれだけ噂があり、離婚歴もある40男を、伴侶として選ぶには、それなりの勇気と覚悟が必要だった。

当然親、特に父親はいい顔はしないことは、最初から分かっていた。

だからそのためにも、自分の信念は揺るがない物にしたかった。

どうしたら、この人をずーと自分のものにしておけるか。

どうしたら浮気をさせないように出来るのかを、真剣に考えた。

妻になって、一度も浮気をされない、させない、妻達は居るはずだ。

彼女たちはどうしているのか。色々教えてくれる先輩達に聞いてみた。

まず浮気する理由だが、性欲を満たしたい、魅力的な異性がいる、マンネリ、パートナーに飽きる、不満がある、異性からのアプローチが多い、家庭に居場所がない、等々だという。

ならば、その逆を行けば良いのか?

常に性欲を満たしてあげる、言い寄る他の女達の誰よりも魅力的になる努力を怠らない、パートナーとして飽きさせない、趣味に付き合う。という結論になった。

なーんだ、そんなことか、それなら出来ると思った。

それを努力と考えるのか、それとも楽しみと考えるのでは、天と地の差位ある。

そして前妻のかす美がどうして浮気されたのかも調べた。

当事者のかす美に聞きたいところだが、それも出来ないので、雅春にそれとなく、聞いた。

優香「ねー、かす美さんって、美人だったんでしょ?どうして浮気したの?」
雅春「うーん、結婚してから、なんか壁が少しづつ出来たような気がした」

優香「それって、Hの回数が減ったの?させて貰えなかった?欲求不満だった?」

雅春「まー、そういうことかな」

優香「雅春さんって、女性からのアプローチが多いでしょ?」

雅春「うっ?普通じゃ無い、多分。」

普通の男は、そう聞かれたら、いやそんなことは無いと否定するが、雅春は否定しない..ということは、かなりアプローチが多いと見た方が良い。

優香「ねっ、雅春さんってトライアスロンやってるよね。あたしもやろうかな。」
雅春「ああ、いいんじゃない、女子選手の知り合いがいるから、今度紹介するよ。」

優香「でもね、問題があって、スイムが上手くないの。」

雅春「それじゃー、スイミングスクールへ行こうか。」

ということで、優香もトライアスロンに挑戦することになった。

これで、同じ趣味をやることで、寄ってくる女達から、少しは監視できると思った。

優香の防御策は万全に思えたが..。

雅春のトレーニングを聞いて、優香は驚いた。ほぼ毎日、朝練でランニング、金曜日の夜はスイム、土日は、バイクとほぼ毎日だった。

だからあれだけ縦続力があるのかと、納得した。

取り敢えず、雅春のトレーニングに付き合うことにした。

これが2003年6月の出来事だった。

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