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迷子... / ショート、ショート その1

キャンプ地で迷子になったエマを必死で探していた。昨晩から姿が見えなくなってしまい、家族みんなで手分けして探していた。もうすぐ夜明けだ。

「こんなことになるんだったら、連れてくるんじゃなかった」と後悔していた。
大体無鉄砲で、場馴れしていないエマを連れてくることに、何となく嫌な予感はしていたのだが、神様にどうしても連れていきたいとせがまれて、連れてきてこのザマだ。もう二度とこんな混雑した所に連れてくるのは、ようそうと思った。

それにしても、エマを見つけられない。段々焦ってくる。もう夜が明けて来る時間だ。
北の方を探していた、息子が帰ってきたが、全く分からないと言う。

「『インフォメーション・センター』に行って聞いてみたら」と、息子が言うので、人混みを掻き分けてインフォへ向かう。途中で食堂の人に、こんな風な犬を見かけませんでしたか?」と聞いてみたが、「見かけないね」と連れない返事しか返って来ない。

漸くたどり着いたインフォも混んでいて、5人ほど並んでいた。焦っていたので、知らない振りをして、担当者らしき人に、聞いてみる。
「白茶のシェルティーが迷子に成っているんですが、こちらに連絡来てませんか?」藁にも縋る思いで聞いてみると、
「ああ、その子でしたら、先程来てますよ」と言う。
ホッとして、全身の力が抜けた。
奥から、薄汚れたエマが出てきた。
駆け寄ってくるエマ。
強く抱きしめた。
思わず「駄目だよ、勝手に行っちゃったら、心配したんだよ」
と言う。
「ごめんね、パパ。もう二度としないよ。」と返事をするエマ。
「分かった、分かった」とエマを抱きしめる…
あれっ、エマって喋れたっけ!?

という、ところで目が醒めた。
今日、エマを花見に連れて行こうと神様に言われたのが気になっていたのが、こんな夢を見る原因だったのかもしれない。連れて行くのは止めようと思った。可愛い子を迷子にしたくないから。

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