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GODGILLA[2014]からゴジラを考察する

レンタルDVDで映画「GODGILLA[2014]」を観ました。「ゴジラってどのゴジラ?」と言われると思いますが、ハリウッド版二作目のGODGILLA、通称レジェンダリー版のGODGILLAです。
ハリウッド版一作目のGODGILLA[1998]はTVで観ましたが、世界的な評価とは裏腹に全く面白くありませんでした。たぶん多くの日本人はそうじゃないかと思いますが、「こんなのゴジラじゃねえ!」という感じでしょうか。そのため長らく関心なかったのですが、去年映画「ゴジラvsコング」が上映され、GODGILLA[1998]とは別にリメイクされたGODGILLA[2014]があるらしいと知り、評価もそれなりと聞き、それならと機会を伺っていたところ、ようやく観た形です。

結論を言えば、私の映画評価で「2:よくなかった」でした(基準・・・5:大絶賛! 4:もう一度観たい 3:まぁよかった 2:よくなかった 1:二度と観ない)。面白くない。
でも一作目のGODGILLA[1998]に比べれば劇的に良くなっていたのは確かです。良くなっているのになぜ面白くなかったのだろう?と考えた結果、ハリウッド版を観たからこそわかってきた「ゴジラ」とは何なのかを少し深く考えてみます。

なお私は現時点(2022年9月)で全36作の中で6作しか観ていません(初代ゴジラ/ゴジラ(16)/ゴジラvsビオランテ/シン・ゴジラ/GODGILLA[1998]/GODGILLA[2014])。ゴジラファンからすれば「そんなんでゴジラを語ってんじゃねえ」と怒られそうですが、素人の戯言として一笑に付してもらえると幸いです。
ちなみにWikipediaを参考に36作をまとめたのが次の図です。実線はシリーズ、点線はストーリーにつながりがあるもの、上が邦画、下が洋画です。

ゴジラシリーズの全体像

ゴジラが生物的すぎる

GODGILLA[1998]にせよGODGILLA[2014]にせよ、ハリウッド版ゴジラの気に食わない点が「描き方が生物的すぎる」ことです。
「生物だから当然だろう」と言われそうですが、ハリウッド版は発想として「害虫駆除」に徹していると思います。それに対し日本版は、初代ゴジラにせよ平成ゴジラにせよ「怪獣退治」を試みています。
害虫駆除は「上」にいる人間にとって害となる害虫を駆除する発想なのに対し、怪獣退治は抗うことが困難な怪獣に対して多くの人が必死にやっつけるという発想です。
GODGILLA[1998]では大量の魚をエサに誘き出そうとし(このシーンで私はドン引きしました)、GODGILLA[2014]は(さすがに魚をエサにするのはなかったですが代わりに)放射性物質(放射性廃棄物?)をエサにしました。GODGILLA[2014]の方がましなのは確かですが、結局エサで釣るのかとがっかりしました。

日本は怪獣退治を試みていると書きましたが、では怪獣とは何か。怪獣とは「怪物の巨大化した生物」ということができるでしょう。
ならば怪物とは何か。日本には「得体の知れないもの」がいろいろいますので、そのうち幽霊/妖怪/怪物を比べてみましょう。

幽霊/妖怪/怪物の比較

最近は例えば妖怪といっても「妖怪ウォッチ」などさらに多種多様で、これに及ばないものも多いかと思いますが、およそ1950年代を想定するとこんな感じかなと思います。
こうやって比べてみるとけっこう違うなと思いますが、ここで重要なのは「怪物は殺さなくてはいけない」という点です。「人(の生命)に危害を及ぼす生物」だから「殺さなくてはいけない」のです。ゴジラ(怪獣)も同様です。害虫だからではありません。

加えて、GODGILLA[2014]に出てくるもう一体の巨大生物ムートゥはオスとメスが出会って喜ぶシーンがあります(これも私がドン引きしたシーンです)。ジュラシックパーク・シリーズでもオスとメスが出会って喜ぶなんてことはなかったのではないでしょうか。たとえ雌雄が出会ったとしても別の巨大生物ゴジラが近くにいるのに警戒するのがふつうじゃないかと思いました。

核とゴジラ

さて、初代ゴジラは核兵器反対がテーマであり主張でした。初代以降はどうだったでしょう。初代ゴジラ/平成ゴジラシリーズ/GODGILLA[2014]/シン・ゴジラの四つを比較しました。

歴代ゴジラの比較

核兵器使用は日本版では一貫してタブーなのに対し、GODGILLA[2014]は全くためらわないのがさすが(?)アメリカです。しかし核兵器使用を散々ちらつかせながらも使わなかったのはなぜなのかよくわかりません。
軍の描き方は、日本版とも異なりますがハリウッド的にも工夫したのかなと思います。ちなみに初代ゴジラ以外は自衛隊の活躍が一つの見せ場になったようで、シン・ゴジラもそれを受け継いでいます。それ以外の点で、シン・ゴジラは初代ゴジラをけっこう踏襲しているように思います。

やはり核に対するスタンスが日本とアメリカで違い、それが日本のゴジラとハリウッド版ゴジラとの違いになっているんじゃないかと思います。
先に「描き方が生物的すぎる」と書きましたが、もしかすると、凶悪な野獣(日本でいう怪獣)ではなく親しみのある生物として描くことによって「原子力はもちろん核保有も良いものだよ」と暗に主張しているのかなとも思いました。
そう考えるとGODGILLA[1998]で核に全く触れなかったのもどこかうなずける気がします。

ゴジラのこれから

今でもそこそこ人気のある日本のゴジラ。人気の理由は何でしょう。現時点で私が思いつくのは次の三点です。
1. 象徴的教訓
「核は怖い、止めるべきだ」「ゴジラは核兵器の危険性を象徴的に示している」、だから人気という説。
でも、初代ゴジラはそうだったかもしれませんが、平成ゴジラシリーズでほぼなくなったのではと思います。原点回帰したとされるシン・ゴジラでも、核兵器に関して全く触れられていませんでしたが、代わりにフクシマ=原子力利用の危険性は描いていました。
2. 破壊欲
自分の住む街が壊されていくのを見て「自分の世界も壊されればよいのに」と思う、だから人気という説。
世紀末は主流だったかもしれませんが、2000年になり早くも20年以上経過しています。しかも911テロというシャレにならない事件が起きたこともあり、今は下火ではないでしょうか。
3. 自衛隊万歳
生命を(平和を)脅かす存在から軍が守ってくれる快感から人気という説。
平成ゴジラシリーズ以降徐々に増えてきている気はします。でも「自衛隊万歳」と公に口にするのは、多くの人にとってはまだ抵抗があるかもしれません。

シン・ゴジラにより核兵器から原子力利用の危険性に衣替えし、あとはおよそ原点回帰したことにより、けっこうな人気を博したものの、10年以上経っても続編や新たな作品が作られる気配はありません。シン・ゴジラの次に制作されたのはアニメ映画で、広告によると「地球を支配したゴジラに追われて脱出した人類が地球奪還を目指す」という話のようです。これでは上に書いた三点すら満たしていませんね。2021年からTVアニメ「ゴジラ S.P <シンギュラポイント>」を放送しているようですが、「核エネルギーとは無縁の存在となっている」(Wikipedia)とのことです。
政府は「原子力利用を止める」と言ったり「改良した軽水炉を使う」と言ったりよくわかりませんが、いちおう数十年以内には原子力利用を縮小・廃止する方向のようです。とすれば「原子力利用の危険性」を改めて訴える必要はない、故にシン・ゴジラの続編を作る必要はない、だからアニメ映画やTVアニメのような原点とは離れたゴジラを模索すべき、とするのも無理からぬことかな、とも思います。
逆に、核から自由でありエンタメ性だけを追求するハリウッド版の方が作りやすいかもしれません。私も今回のGODGILLA[2014]がイマイチだったからといって、毛嫌いせずに観ていこうと思っています。

なお数十年後、原子力利用が廃止された暁には、日本として堂々と「核兵器廃絶!」を訴えることができるかもしれません。そのときこそ、本物のゴジラが復活するかもしれません。その日ができるだけ早く訪れることを切に願っています。

【参考】
ゴジラ(Wikipedia)
ゴジラ S.P <シンギュラポイント>(Wikipedia)


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