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短歌「読んで」見た 2021/05/31 No.3

死んだことなき人々が群れなして何かあるやうに駅に入りゆく
 志垣澄幸 第14歌集『鳥語降る』(本阿弥書店 2021年)

盲点だった。生きているということの認識が、である。今ここにいる、生きている人達はとりあえずみんな、「死んだことがない」でくくれるのだ。いやいや中には誰か一人ぐらい、と思うもそれは伝聞であったりフィクションで、私は会ったことがないから、それでいいのだと思う。

それにしても、不思議な感じ。人々が大勢意味ありげに駅に入っていく光景。大勢が駅に入るというだけで何かあるように見えることはまあ、ある。そこへきて、ただの人ではなくて「死んだことなき人々」だから、インパクトがあり特別な光景になる。生きていれば死んだことはないのは当然で、何もおかしなところはないというのに。
普通の言葉で書かれているのですっと読めてしまうが、視点を変えたことで見え方が変化し、私たちが気に留めていない「いつも」や「普通」を再認識させてくれる。

*  * 

死がわからない。いや、死という現象は知っている。
なぜ、死という現象に至るかが納得がいってない。それをもっともらしく説明出来る人はいるが、もっともらしいだけだし、科学的に完全に解明されているわけでもない。科学的に説明されてもきっと私にはわからない部分が多かろうけれど、科学的に完全に解明されたと言われれば納得するのだ。
死んでないから生きていて、生きているから死んでない。言葉遊びのようだが納得しているのはこれだけである。
とりあえず、私も死んだことのない人であると思う。

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