クリスマスも誕生日も一緒に過ごしたけど思い出すのはそんな些細な日の何気ない一場面なんだね。日常って大した物語にならないのに映画にはなるんだね。

思い出すのはあの日のカラオケ。
その日、私は土曜出勤で仕事が終わったら行ってもいい?とねだったら
ご飯食べないで待ってるねと言われた。
もうそれだけで嬉しかったんだ。

仕事終わりに合流して焼肉を食べた。
彼がトングを握ることはなかったけど
それでも私は嬉しかった。
彼が私の時間軸に合わせてくれていたことだけで嬉しかった。
セットしていない髪の毛、片方曲がった眼鏡が待っていた証拠だった。
珍しくお酒が進む彼が帰りにカラオケ行こうかと言った。
広告業界で働く彼は大学生のように職場の人と朝までカラオケをしていたようだけど
そんな姿が想像出来ないくらいカラオケなんて似合わない人だった。
歌は好きだったしバンドとかよく知ってる人だったけど
感情の起伏がなかったから所謂テンションがあがるという姿が全くわからなかった。
探り探り、どんなテンションかと伺って始めたカラオケ。
二人で観終えた天体観測の挿入歌BUMP、懐かしいと盛り上がったB-DASH、リクエストしたら歌ってくれたミスチル。
カラオケボックスの密室に彼と二人。
拳2つくらい空けた隣の彼。
赤らいだ酔っぱらい手前の彼。
勇気出して近寄ったら抱き寄せてくれた。そしてそのままキスした。
あぁ、こんなことする人なんだなと初めて知った。
1時間と彼は勝手に決めたけど、もっといたかった。
日常が特別なんだと思った。
当たり前のような時間が輝いてると感じた。
結局それが最初で最後のカラオケだったけど
今でも思い出す。
そして泣けてくる。
幸せだったなとあの日の空気を鮮明に思い出せることに。
もう戻らないということにも。



ミスチルのoverを歌う彼に聞いた。
「いつか街で偶然出会っても今以上に綺麗になっていないで」ってわかる?と。

悔しいよね、綺麗になってたら。
そう言ってたけど誰を思い出してたのかな。
私とあなたはあまりにも短い関係すぎて、顔すら思い出してくれないのかな。 

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