見出し画像

時間の流れを考える 宇宙と西表島のサガリバナ

西表島に咲く花"サガリバナ"

太陽が水平線に落ちていく夕方から夜にかけて咲き始め、夜明けとともに散ってしまう儚さを持ったこの花は、半日しか咲くことができない幻想的な花です。

この花は夜にカヌーで行った先でみられ、バニラのような甘い香りに包まれて澄んだ星空の下で観ることが出来たなら、その時はどんな感情に包まれるのだろうか。

花言葉は、幸運が訪れる。

いつか大切な人とこの花を観に訪れることができるのならば、それはきっと幸運なことなのでしょう。

惑星の誕生の時間軸から生命の発生を考えると、今生きているのは一瞬の出来事で、その中の一日はとても儚いものです。

私の生きている時間軸で、私は何人の人と出会ったのだろうか。
大切に思える人はどれくらいいるだろうか。
地球上に78億人もいる今、私が知っている人を考える。全員とは到底出会えないことを確認する。

時間は誰にでもだいたい平等と思っていたけれど、平等と感じるだけで実は不平等で、さらに個体差がある不思議なものでもある。
時間の流れは年齢によって感じ方は異なるし、男女間で寿命も違う。
国によってサマータイムが導入されれば1時間ズレるし、"自由に使える時間"は人によって様々である。
苦痛は1分を永遠に感じさせることが出来るし、幸せは1日を一瞬にさせる。

私と会ってくれた人との時間の共有の仕方と選択を、最近ではよく考えてしまう。


サガリバナにとっての一日はとても大切な一日で、雄蕊と雌蕊が受粉したら半日で花が落ちてしまう儚さが、より大切にしたいと思う時間の使い方を教えてくれた。

"消えた星の光を見ているのかもしれない"

光の速度と惑星間の距離を考えると、星が消滅していても光はまだ私の目に見える形で進んでくる。

消えた星の光という表現に少し動揺したのは、それは別れを意識した表現方法なのに、現在も存在する星を観ていて、切なさと儚さが入り交じっていたからかもしれない。

広大な宇宙の中の地球のヒトという生命体に生まれて、78億人もいるなかで、あなたに出会えた奇跡を感じる。
それはとても不思議で、少しでも何かが違えば起こりえなかったことかもしれない。

だから、会えるだけで嬉しかった。

時間の流れ

時間の流れを考えると、地球上でも時間の流れが違う場所がある。
その中の一つは東京スカイツリーである。

東京大学の研究チームが2020年4月に専門誌に発表した論文で、東京スカイツリー展望台の時間は地上より速く進んでいることを明らかにしました。
アインシュタインの相対性理論では、光の速さに近づくと時間は遅れ、重力が小さい場所では、大きい場所より速く時間が進むことが実証されています。

スカイツリーと地上の時差は1日あたり10億分の4秒で、だから日本で1番宇宙に近い場所で空を見て地上にいた時よりも少しだけ私が時の流れのはやさを感じたのは、もしかしたら物理的だったのかもしれない。
けれど、感覚的にもあっという間に過ごせたのはきっと幸せを感じたからだと思う。

スカイツリーの眼下に広がる"生活"の、例えば200年前には無かった光景を観る。
ヒトが世代交代しながら蓄えてきた富の、積み重ねてきた結晶の、その豊かさの上で奢侈する。

この景色は、例えば江戸城の天守閣でみる景色よりはるかに高い。
数百年前の権力者たちの食事よりおそらく豪華なものを食べれる現代で、彼らをはるかに見下ろすことができる施設が建築されていて、それはとてもすごいことだと思う。

江戸城の天守閣は大火で消失しているが、そこの再建がなされていないのには理由がある。
軍事力や権力の誇示が必要なくなり、平和になった証として天守閣という櫓が無くても良くなった。

平和を感じる。
争いがない社会の、発展した国の豊かな生活。
餓死者の少ない現代を先人たちが作り上げてきた。
その当時から変わらない川の、日光に照らされてキラキラとした流れを見ながら美しいなと思ったのは、建築されたビル群と、たくさんの人の小さな家が日々の労働と生活を連想させたからであり、はっきり見える富士山を写真に収める人々が、昔から変わらぬ信仰心と、この瞬間を残そうとする行動が儚さを帯びたからである。

きっと大切に過ごす時間はあっという間で、振り返れば一瞬の出来事に思えるかもしれないけれど、それは確かに訪れた一日で、その一日は遠い過去からの積み重ねでできている。

大きな日時計のように、スカイツリーが影を街中に落としたのを眺めた。

月の話をよくした気がする。
月はとても面白い天体で、成り立ちから伝承、比喩まで話題に尽きない。

月と地球の距離が約2万キロだった時は1日は約4時間だった。月は毎年4cmほど地球から遠ざかっていて、月が遠ざかるほどに、地球の自転が遅くなる。
だから、1日が1日で有り得るのは、月と地球と太陽の微妙なバランスが作り上げているもので、数十億年後に地球の衛星ではなくなったら、地軸がズレて地球では大きな変動が起きる。
さらに月は隕石からも地球を守っている存在である。

月がなかったらと考えると、やはり微妙なバランスで成り立つ世界の幸運と奇跡を感じる。
太陽を反射して優しく照らす月の裏側を、私は時々観たいと思ってしまう。
安らぎと優しさをくれる人の裏側にはたくさんのクレーターがあるのかもしれない。

心が疲れた時は宇宙や海をみるのが私はやっぱり好きだ。
それは遠く離れていても世界は1つで、地球は丸くて、同じ宙を観れて、宇宙と海は未知で広くて、果てしなさがあるからだ。
果てしなさを感じると、儚さが際立つ。

幸運が訪れるといわれるサガリバナと出会って、時間の流れを感じた。

あなたのそばにも幸運が訪れますように。

本が欲しい