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むき出し

『むき出し』完読しました!

私が個人的に感じたことをレビューしていきます。ネタバレ注意。

主人公である石山の生まれてきた環境

幼少期の石山はどんな環境で育ったか。
これがこの小説の主軸になる部分です。

両親と兄弟姉妹と祖父母と主人公。
家族の関係性はもちろん、風景描写や心理描写にこどもながらの視線が散りばめられています。 主人公にとっての当たり前がまず衝撃。

読む前に、他の人のレビュー見て、めちゃくちゃ泣いたとか、胸が痛いってコメントが多かったんだけど、殴られることが当たり前だった暴力に耐える幼少期、誰にも助けを求める事ができなかった少年を哀れむ声。

ただ、これは第三者の視点で、石山本人はそれが日常だった。それが普通=当たり前だと思って生きていた。でも第三者からするとそれは普通ではない。つまり、石山はマイノリティな家庭環境で育ったという事。

いや、もしかすると、私達が気づかないだけで、周りにもこういう家庭環境が普通にあるのかもしれない。でも石山の生まれ育った環境が想像の世界でしかない私の心にストレートに刺さるのはなぜだろう。これが見えていない知らないという世界なのか。確かにEXITかねちーのエピソードで聞いたことがあるところもちらほら。個人的に妹とのエピソードがかわいくていちばん笑ったとこ。ほんとかわいい。

一生懸命働く母の姿をみて、助けたいのに
理不尽な変えられない日常。不条理な世の中。
こどもって本当に周りの大人たちを結構見てる。
影響を受けるというか、生まれ落ちた環境って
大事だなって思う。石山にとってのキーパーソンは間違いなく母親ですね。家族の存在、特に母親の存在って大きい。

寂しさを感じながらも甘える事を知らないというか、一生懸命働く母親を助けたくても、家族を助けたくても、誰かに相談するという方法も知らない。一般のあたりまえを教えてくれる人がいない環境。それでも毎日、楽しく生きる術を探して、何かとイタズラや嘘をつく事で人の気を引いて…寂しさ悲しさ虚しさ自分の事を理解してほしいと溢れる石山の心の声が聞こえる。

暴力で支配する事が当たり前だった少年

歳を重ねるにつれ、色んな人と出会い、色んな事に巻き込まれ、世間の当たり前と自分の育った環境のギャップに苦しみ、飲み込まれていく。

特に10代で仕事を始めたあたり。ここの描写は
特に胸にぐっと堪えるものがあった。
学校に居場所がなく、唯一楽しみだった野球も
金銭的に続ける事がてきず、新聞配達をしながら学校に行く生活。職場のいじめ、同世代の他の子と違う家庭環境。他の子が羨ましい。
なんで自分だけこんな目に合うのか。悔しい、苦しい、痛い、辛い、全部背負ってきた石山。

いちばん多感な時期にいっぱい我慢してきたんだね。気づいたら、私は泣いていました。
ケンカに強くなることだけが正義だと決めつけ、自分を見失い、結果、自分がいちばん傷ついている。誰よりも優しい心を持っているのに。

誰を信じていいか分からず、人に騙され、汚い大人をたくさん見てきた。何度も周りや母親に迷惑をかけてしまい、自分は周りとは違うという
コンプレックス。相手を暴力でねじ伏せる事で、
自分の存在を見せつけてきた石山。

そんな石山が気になる人との出合いが初恋として描かれている。気になる女性との出合い。
そして、親の愛情に気づき、殴った相手の抱えているものを想像して後悔したり、少しずつ成長していく。石山の心の成長は本当に大切なものが何なのか教えてくれる。

本との出合い

ここも大事なシーンで石山に知らない世界を見せ、夢中になる夢を与えてくれたのが本。
好きな人が差し入れてくれた又吉さんの本。
この本を読む事で彼の人生は変わっていく。
(むき出しの帯が又吉さんってエモすぎ)

最終的に今の環境を捨てないと、今の自分
未来の自分を変えることはできないと気づく。

このままじゃダメだ。変わりたい。
と、必死にもがく。でも、変わり方も分からず、
いつも上手く行かない。現実と心の葛藤のシーンがすごくリアルに想像できて、ちょっとだけ私は懐かしい気持ちになった。内容は違えど、思春期ってみんなコレあるよね(笑)

そして、夢を現実にするために、芸人になるめに、東京にやってくる。
まるで漫画の中の主人公みたいなストーリー。

やっと来てくれましたね

このセリフが忘れられない。
やっと本当の自分を見つけてくれましたね。
過去があるから未来がある。繋がっている。

記者の追っている過去の自分は変えられない。 未来なら変えられるってメッセージ。すごい伝わってきた。途中、漫才のセリフや描写にEXITっぽいところやセリフが散りばめられ、相方の名前が中島(笑)ってところは、そのまんまだね。

彼にしか書けないストーリーだなって改めて思いました。

石山には幸せになって欲しい。
好きな事全力でやって笑っていてほしい。
心の底からそう思った。

読んだら優しくなれる1冊です。

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