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小説のアイディアをひねり出す<小説の書き方>

アイディアは小説の根幹であって、長い執筆作業を支えるエネルギーです。それだけに良いアイディアをどう生み出すかが小説を書く鍵になります。
特にミステリでは、あっと驚く謎やトリック、犯人などを用意しないと読者は満足してくれません。ところが……
小説の神様が降りてきて、アイディアを授けてくれる
あるとき、ふっと素晴らしい謎とトリックの2点セットが頭に浮かぶ
などと言うことはまずありません(プロ作家だってもちろんそうです)

小説指南本にはなんて書いてあるか?

小説指南本は、ほとんどすべて読んでいます。当然、アイディア出しの工程について書かれている本もたくさんありました。
しかし簡単に優れたアイディアが湧いてくるような、画期的な方法はお目に掛かっていません。それがあればみんな売れっ子作家になれますから。

それでも指南本の中に、何人かの作家さんや編集者さんが勧めている方法で有効だと思う手法があります。いくつかの関連性の無い言葉を組み合わせる、という発想法です。

私は子どもの頃から星新一さんのショートショートが大好きでした。あのユニークな発想はどこから生まれるのかと思っていたら、ある本で、星さんが、異質なものを組み合わせると面白いアイディアが湧くと言うような意味のことを書いていました(その時の例は、キツネ憑きの人を宇宙ロケットに乗せるというものだったと思います)

この星さんの言葉と、指南本の勧めから私が自己流で続けているアイディア出しを具体的に説明します。

私のアイディア出しの作業

私の場合、執筆は
アイディア出し⇒シーン表⇒あらすじ⇒本編執筆
という流れになるのですが、その最初のパートです。

①異質なものの組み合わせ

※貼付した例は、今朝、作ったものです。

左側に「日常」、つまり身の周りにあるものを列記していきます。
部屋にあるもの、雑誌の開いたページ、テレビに写ってるもの……
なんでも構いません。

右側に「非日常」、最新科学、外国で話題になっているもの、トピックスを並べます。

あとは一つずつ線でつないで組み合わせていきます。そこで何かのアイディア、ひらめきが浮かばないか、考えます。

分かりやすく、ミステリやSF用のアイディア出しを例にします。
花瓶・・人工知能、花瓶・・ゲノム編集、花瓶・・火星移住計画ときて、ちょっと引っかかりました。
火星に花があるとしたらどんな花だろう? 美しい? どんな実をつける?
その花が火星移住の鍵になったら? 植物には知性があって、コミュニケーションしている(先日のNHKスペシャルで西田敏行と堺雅人が話していた)らしいからそれを使えないか? などと自由に考えていくのです。

あるいは、ワールドカップ・・・人工知能ときたら、今大会から判定をAIが補助していますね(反則とかオフサイドとか)。面白いと思いますが、それでは新しくありません。
でも逆にAIがワールドカップを企画し、主催したら、どんな大会になるのでしょう? あるいは各国のAI代表のワールドカップってどんな競技になるのだろう? ルールもAIが作ったら?
それを舞台にして、何か大がかりな事件やパニックが起こるのでは……

『一人ブレインストーミング』の繰り返し

この段階では自分のアイディアに、まだ否定や反論をしないようにします。
とにかく何でもあり、自分で自分の発想を「それ、いいじゃん」と褒めて育てる感じです。

こんな風に発想を続けます。良いアイディアが生まれなかったら、言葉の候補をすべて新しくします。この作業を飽きること無く繰り返すと、たまに、これだ、というアイディアが生まれるのです(簡単には生まれません)

ボツにしたアイディアも必ずエクセルに保存しておきます。どこかで使える可能性があるからです。
二つのボツアイディアを組み合わせると何かが生まれることもあります。

ここでお話ししたいことは、漠然と「アイディアはないかな」と思っても見つからないということです。意識的に「アイディアを呼び込む、誘い出す」モードに頭を切り替えること、そのための準備をすることが大切です。

②アイディアツリーを書いてみる

使えそうなアイディア(言葉、イメージ、シーン、謎など)ができたら、それを箇条書きにメモしていきます。この時は内容を深く考えずに、とにかく書きたい思いつきを拡げることを狙います。
枝葉にこだわらず太い幹を伸ばしていく感じです。

少し、アイディアが育ってきたら、アイディアとアイディア(幹と幹)の繋がりができないか、どうしたら繋がるかなどを考えます。初めはいたずら書き、落書きで構いません。その内に見込みのあるアイディアならば、相手を見つけて繋がってきます。
下に私の見本(手本ではありません)をつけます。

これは『ロスト・ドッグ』のアイディアが、大分育ってきた段階のツリーです。これを例にします。
『愛犬の手術に200万円かかる』
『犬の骨に守られた遺体』

という二つの幹が最初にあったアイディアです。そこからほかの幹が揃ってきました。犬を探す青年、ペットの最新治療などの幹も見えてきて、ストーリーに繋がりそうになっています。
それぞれの幹からは、お金の無い主人公のとる行動は何か、とか、遺体と犬の関係は、という枝が伸びていきます。

本当は、この手前に『①異質なものの組み合わせ』があります。
愛犬の手術と○○
犬の骨と○○
というような。それをお見せするとネタバレになるのでご容赦ください。

そして『シーン表』(小説に書くシーンを並べた表)へ

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
これで私のアイディア出しからプロットへの作業の流れが繋がったかと思います。
全体の工程はリンクの記事をご覧ください。


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