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「あらすじ」は四種類ある? <小説執筆>

「あらすじ」には「自分用のあらすじ」「人に読ませるあらすじ」があります。
このところ、たくさんのストーリーを考えては、その「あらすじ」を書いています。そこで気づいたことです。

「自分用のあらすじ」

作者自身のために書くものです。これには二つのタイプがあります。

「自分用のあらすじ」①

一番初めに書かれるものだと思います。詳細な人物や設定情報はなくとも、閃いたアイディアを書き連ねていくもの。この段階で小説のストーリーは幾通りも派生していくので、混乱しないように文章化するものです。
(最近、私はこのタイプのあらすじをたくさん書いています。納得がいかなくてほとんどボツにしているのですが、それはともかく)

自分用のあらすじには、すべてを書く必要がない。全体の流れを俯瞰できればそれで良いのです。極端な話、小説に書かれる事実だけを並べてあれば足ります。そのあらすじに、自分の頭の中にある、心理描写やセリフが書かれ、風景や五感などの様々な情報が加わって初めて創作物になります。

創作物にするパスワードは作者だけが知っているのです。パスワードを入力して作者の脳内の小説世界があふれ出す。それをあらすじに反映しないと創作物にはならない。この段階のあらすじだけがあっても、他の誰にもその小説は作れないと言うことです。
(あらすじ的な小説のスペックを入力すれば小説にしてくれるAIとは、ここが違います)

「自分用のあらすじ」②

これまで私が<小説の書き方>などで紹介してきた「あらすじ」に近いです。プロットと小説本編の間にあるような位置づけのものでした。
時間とともにプロットより本編執筆に近く育てていきます。これについては以下の記事に詳しく書きました。

「人に読ませるあらすじ」

「人に読ませるあらすじ」は性格が違うものです。
小説の中で起こることを並べ立てるだけではなく、その文章の中で、小説のテーマや読ませどころ、読者に伝えたいこと、どこが面白いのか、などを書かなければなりません。
人に読んでもらって、その小説がどんなものかを手っ取り早く判断してもらう材料です。
実は作家としての表現力、文章力、センスが試されます。

これにも二種類あって

「人に読ませるあらすじ」①

いわゆるプロット、企画書に近いものです。
・小説家なら編集者に提出するもの
・新人賞に応募中なら本編と一緒に送るもの(梗概など)
・小説を書き始めた人なら家族や友人などに読んでもらうもの
(恥ずかしくて勇気が要りますが)

どれも、その小説の良いところをしっかりと書かないと意味がありません。
本当に書きたいことは作者の脳内にある、と言っても仕方がありません。
「いや、大事な面白いところは本編で書くから」
「真相はネタばらしになるんで頭の中にあるから」
と言われたら、読む方も困るでしょう。

「人に読ませるあらすじ」②

買ってもらうため、読んでもらうための紹介文
文庫本の裏表紙にある短い文章のようなものです。
これは読者になってくれそうな人に、面白そうだな、読んでみようかなと
思わせるためのものなので、物語の真相や、ミステリならネタばらしは
してはいけません。

その短文で本を買うお金を出させるのですから、文学よりも宣伝、プロモーションに近いかもしれません。「小説の良し悪しは、原稿を全部読んで判断してもらいたい」とは私も常々思うのですが、現実はこのプロモーションの短文で、そっぽを向かれてしまうことも多々あります。

①も②も、本編同様かそれ以上に精魂込めて、自分の持っているもの、その小説の世界を凝縮して伝えることが必要になるのです。
(短ければ短いほど、難しいことです)

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
言うまでもないことだったかも知れません。ただ、
今、自分が書いている「あらすじ」がどれにあたるのか
ということを意識して書かないと往々にして上手くいかないと思うのです。

自戒の意味を込めて書きました。





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