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ペケペケ


  ○○✕✕〇✕✕


 その日は子供が心理検査を受ける日でした。


   社会生活を行ううえでの能力を知る検査だとか。


 親の私にも、質問に答えるための用紙が渡されるのです。


   ✕  ✕  ✕  ✕  ✕  ✕  ✕


   8問連続✕で終了してくださいそうかいてあった。


その発達段階に達してないとみなすそうだ。


社会生活不適合者、とでも言いたげな記号が8つ並んで、検査終了。


世間一般と我が家では少し時空が歪んでいるのかも知れない。いや成長なんて千差万別、多様性の世の中さ。


並んだ記号を見て私の胸が痛むのは、ジンジャエールもバラの花も関係ない、かといって一児の母としての役割からの痛みともいえない。


   ✕  ✕  ✕  ✕  ✕


去年の私。


きっと✕ばっかりだ。


家事育児仕事。


どれか一つ満足にできていただろうか。



座礁したクジラがかろうじて息をしているように、


その哀れとしか言えない姿で、ただ日々時間ををやり過ごしていただけだった。


そんな一年間だもの、✕ばっかりに決まっている。



並んだ✕が咎めるのは私のような気がしたから。


だから胸が痛みました。




空はとてもよく晴れていました。


高い高い秋の空。


鱗雲が素早く流れていました。



「僕もう疲れちゃった、頑張ったからケーキ買いに行こう」



体力は底なしなのに、人の話を聞くのは10分ほどで限界を迎える我が子は、疲れたという言葉とは裏腹に、車に向かって駆けていく。






 ペケペケ親子。



 まあ✕ばっかりなのは去年の話。


 今はそうでもないけどね。


 


おしまい。

 

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