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イケメン巨根おじさんについて5〜飲み会編〜人前でイチャつくカップル。



彼の妻、名を「メンヘラちゃん」としよう。
彼女は私と同い年。

メンヘラちゃんは、でくのぼうさんの行きつけのバーで働いていたらしく、
メンヘラちゃんの方から一目惚れをし、交際が始まったらしい。

メンヘラちゃんの他にも、でくのぼうさんに惚れている店の子が何人かいたという。

よくこんなに話がつまらない男に惚れる事ができるな。と思ったのだが、確かに彼の「過去」のルックスの良さは、つまらない話などカバーできていたのかもしれない。


酒が入ったメンヘラちゃんの目に映るのは、でくのぼうさんだけだった。

同じテーブル席には、全校集会で校長の話を聞く学生のような表情をした夫婦と、デンモクで次に歌う曲を選んでいる酔っ払ったチンピラの男が確かに存在していたのだが、そこには無いものとされていた。


ある程度でくのぼうさんが、話を終えたタイミングで、チンピラさんが、でくのぼうさん夫婦に2人で歌ってと、デンモクを渡した。

ナイス、アシスト!
ナイス、チンピラ!
話より歌の方がマシだ!

デンモクを受け取ったでくのぼうさんは、メンヘラちゃんと何やらイチャイチャしながら思い出の曲を選び出し、デュエット曲を歌い出した。

このスナックは、完全に2人の世界へと包まれたのだ。

これはこれで、キツい!!!

その後も距離が近く、今にもおっ始まるのではないかという恐怖心の中、二次会は続いた。

あの、家でやってくんねーかな?!


そんな中、雰囲気をぶち壊してくれたのがチンピラさんだった。
このエロい雰囲気を取っ払うには相応しい、くだらないギャグを全力でやり切る30代男性が確かにそこに居た。

英雄だった。

他の常連客も親しく話し交え、でくのぼう夫婦からデンモクを回収すると、また歌い出した。

歌、ギャグ、歌、ギャグ、歌。

普段の無口で大人しい彼は、飲み会のための休憩なのだと私は悟ったのだった。

この男のおかげで、空気が軽くなった。

しかし時折、でくのぼうさんがチンピラさんの容姿をイジる下りがよくあった事が不快だった。
チンピラさんは男性の中では低身長な方なのだが、それを笑いのネタにしていたのだ。

チンピラさんはそれを特に気に留めていないように、自虐ネタに変えて場を盛り上げていた。


こんの、でくのぼう…。英雄になんて事を言うんだ…。

もうこの時には双方のイメージは大逆転。
私はオフィスで、何も見えていなかったのである。


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