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岩本健汰さんと今成さんの試合が凄いから、皆に知ってほしい。格闘技でした。

RIZINから一夜明け。

昨日の記事はたくさんの方に読んでもらえて嬉しく思います。いつもありがとうございます。力になっています。

RIZINの記事を書けば多くの人に読んでもらえて、ありがたいのですが、RIZINだけが格闘技ではないし、いい試合や本気でとり組んでいる選手会上の大小に関係なく日々行われています。格闘技としての競技レベルも多くの人に届いてはいないけれども世界クラスのものもあります。

素晴らしい試合や技術だけれど、届いてないものを少しでも多くの人に知ってもらうことや、見方の解説や提案をしていくのも僕の大事な役割な気がしているので、このままRIZINの記事をもう1本書けば読んでいただけるとは思うのですが、今回は多くの人に知ってほしい「格闘技」を書いていきます。

今回の試合は放送も限られたものしかなく観客も少ないし、SNSでも波及することもさほどないので、せっかくの勝利が届けたいところにすら届かないのは歯痒いし、主催者にはできたら映像を公開してあげてほしいのですが、映像は財産なので判断があるだろうし、媒体も台所事情があるとは思うので、微力ながら青木が少しだけやってみるとします。

RIZINの翌日に大阪から新幹線で直接、新大久保にあるGENスポーツパレスにて行われる「ZST」の会場にいました。いつも練習していただいている岩本健汰さんのグラップリングマッチのセコンドにつくためです。青木がわざわざ舞い戻って、セコンドに付く意味をご理解いただけるとは思います。

岩本さんとは昨年9月くらいから練習を一緒にしていただいて、僕の組み技の大部分を彼との練習に頼っていまして、彼に教えてもらうことでベテランの僕がまだまだ成長できると感じることができました。23歳にして相当な実力者MMAのトップ選手でも彼の相手にはならないし、僕も彼をやっつけることはできないし、彼を根負けさせる為に毎週策を練っています。それがなかなか根負けしてくれないんですよね。

今回は組技ではレジェンドと呼んでいい「今成正和さん」との対戦です。今成さんは足関節技を得意にしている選手で、世界的に流行した「足関節技」を多くの選手が参考にした選手です。海外で日本のグラップラーで聞く名前は「今成」、「桜庭」、「青木」です。

これから世界に出ていこうとする岩本さん(もうADCC世界大会には出ています)が通行手形と言うか、名刺として「今成越え」を果たしておきたいと岩本さんの希望で組まれたカードです。僕は今成さんとも練習していたし、岩本さんとも練習しているので実力的には岩本さんが上回ると思って見ていましたが、サブミッションオンリールールだと引き分けもあるなと見ていました。

足関節対決ではなく、グラップリングで攻める 

セコンドをする上で「足関節対決」を煽られるけれども、「足関節」ではなく、「グラップリング」として闘ってほしいし、楽をせずに苦しいことをやって競り勝つ策を伝えました。

勝負についてですが、博打的な勝負よりも、苦しいことをやり続けて根負けさせるファイトのほうが苦しいですが、堅実です。岩本さんの方が強いのだから、苦しいことを相手よりもやって競り勝ちましょうと伝えました。相手にとって嫌なことをやる策です。

グラップラーとして幅を見せることも大事だし、日本で一番のグラップラーとして客に媚びる試合をすることはなく、強さを見せたらいいと思っていました。

試合がはじまると一方的に攻め続けて、残り1分を切ったところで1本勝ちなのですが、それまでの攻防を解説してあげられたら、観客にもより凄さが伝わるだろうし、見方がわかって面白さも伝わると思ったので、技術のポイントを解説していこうと思います。

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早々に決めた「ボディロックパス」 

開始早々にボディロックパスを決めます。今成選手は下からの攻めが効く選手で、その中でもオモプラッタは得意技なのですが、オモプラッタに合わせてボディロックパスです。

ボディロックパスは相手の腰を潰すので下からのサブミッションを無効化します。セコンドをしていて、ボディロックのクラッチを組めたらいけると思っていたので、引き込みをしてきて、今成さんがきた瞬間にボディロックパスのアドバイスをします。

開始すぐにパスガードをできたので、丁寧に押さえて、相手の体力を削って消耗させつつ、ポジションを失わずにサブミッションの方向の策を投げかけます。このときも岩本さんと僕が意思疎通できていたので、僕としては安心感がありました。ダメなのはポジションを失うサブミッションです。

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バックからのチョークとツイスター 

マウントからバックへと移行して、チョークを軸に攻めていくのですが、岩本さんが足4の字の形をとったことで、ポジションが固定されて相手が守りになってしまうので、チョークのアプローチが功を奏しません。

ここで足を解除して後ろ三角でも良いかと思ったのですが、シングルバックに移行して、グランドコブラを狙います。ツイスターと呼ぶのが一般的なのですが、レスラーギロチンと呼んだり、コブラツイストと僕は呼ぶので「コブラツイスト行こうか」と声をかけると観客から失笑が沸きます。

いやいや。元々はレスリングでフォール取る技であって、「知らないのはあなたたちであって、はずかしいぜ!」と思いつつ「カウント取りに行くイメージで」と伝えます。今成さんも堅く守ってくるので、サブミッションまでは至らずです。ここでも股裂きや膝固に行くこともできたのですが、試合では堅実に攻めてしまいますよね。

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レフリーのアクションってなんだよ。アホか。

岩本さんがバックとったときにレフリーが「アクション」とコールするので、「なんなのですかね。」と思ってしまって、「アクションは相手だから。こっちはアクションできねーよ」と返すとこれまた失笑。

バック取っていてアクションっておかしいでしょう。ふざけんじゃねえよ。
レフリーは安易にアクションかけるけど、トップクラスの選手にアクションって意味がないし、失礼だと思うのですよ。だって互いに試合を動かせる技量があるし、少なくとも15分の試合で開始3分のタイミングではない。

選手に任せてくれよ。脱線すみません。レフリー下手なのは仕方ないのですが、格闘技勉強してくれないのはなんだかなぁ…と思うんですよ。ちゃんとやってください。

足関節の攻防は巧者同士はなかなか決着がむずかしい。

足関節の攻防になると岩本さんも今成さんにお付き合いします。
僕から見ると勝負を楽しんでいるというか、意地を張って取り合うというか。僕からするといらない攻防に見えたので、「残り3分のところでしっかりパスして極めにいきましょう」と投げかけるも足関節に行こうとする。これは若さだとは思うのですが、残り2分で聞きいれてくれました。

丁寧にパスから肩固めの形に入ります。ここで肩固めが高い位置でクラッチを組みます。これが気になっていたので仕切りに「下がれ」と強めに指示(命令口調で)を出します。

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肩固めは下がって極める。クラッチは青木教えだ!

肩固めは岩本さんは苦手だったのですが、何回も試行錯誤して、今は極めれる形を身につけています。クラッチは深めに組む形で青木が教えている形です。これはMMAファイターにも評判が良くて、パラエストラ八王子の徳留さんはこれで極めれるようになったと言ってくれています。

肩固めは上に行くと極まるように思うのですが、下に行った方が極まるので最後は下に行って絞まるポイントを掴んで、フィニッシュ。最後取り切ったことはキャリア的にも意味があるし、立派です。頑張ったねーって思いました。

「23歳で道に迷いつつ」この言葉の重さを今も感じる。

試合後に彼はこう言いました。申し訳ない気持ちと共感をしました。


「19歳で大学に入ってグラップリングを始めて、23歳で道に迷いつつも出来ています。一つ言えることは僕はグラップリングには自信があります。今日は勝ちましたけど、全然、満足していないし、もっと強くなれるし、信じてやっていきます。来てくれた人、応援してくれる決して多くはいない人たちに感謝します」  

僕も大学卒業のタイミングで将来を考えて格闘技を生業にすることを諦めて、一度は警察官に就職して、2ヶ月でやめて今に至ります。「23歳で道に迷いつつ」か。そりゃあ迷います。正常な思考だし、この思考があるからこそ、賭けれて強くなれるのだと思います。

確かに格闘技で食べていくのは大変です。それも彼は普通に就職すれば、並以上というか、上位の就職先があるでしょうし、でもそれが幸せかどうかはわからないし、幸せを決めるのは彼自身です。僕はそれがわかるから好きなことをやればいいし、あなたの取り組みの熱量であれば、皆が担ぐから安心してほしいと思いました。一生懸命やってくれる数少ない選手だからこそ。

おじさんたちは一生懸命に彼らのやりたいことができる環境を整えていけるように頑張らなくちゃと感じました。

おめでとう!明日も練習で待ってます。

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