基本の大切さ。広さがないと高さがついてこない話。※全文読めます
土曜日の朝8時45分から90分技術の練習をコーチしています。最先端の技術を教えているわけでもなければ、何か特別なことを教えているわけでもありません。基本の打ち込みを淡々と打ち込んで、技術の質問を受けて解決していくだけのシンプルな練習です。スパーリングはしないので肉体的な疲労も少ないです。
この練習に関しては隠すことは何もありません。聞いてもらえたら教えるし、なんなら見にきてもらっても構わないほどの基本練習。固定メンバーは小川徹さんと後藤丈治さんで彼らは国内トップ選手にも関わらず、基本技術の繰り返しで退屈なことをバカにせず、その上で飽きずにやってくれています。
練習をコーチさせて頂いてから2年になりますが、両選手共にこちらが予想していた以上の成長を見せてくれて嬉しい限りです。元々の素材が優秀な選手ではあるし、僕以外の領域のコーチが充実しているので僕の力とは言えないのですが、組技だけに限っても格段に成長しています。何よりコツコツと続けてくれた彼らの努力の賜物です。
基本技術が大切なのは誰もが知っています。
選手も指導者も口を揃えて基本が大事だと言うことでしょう。
MMAは技術領域が広い上、競技寿命が短いために早く結果を求めようとする早熟傾向があります。その影響で実戦練習(スパーリング)と試合用技術に多くの時間を割きます。実戦練習が増えるのはダメージの蓄積を考えてもリスクは高いのですが、短期で結果を求めようと考えたときに基本を疎かにしてでも目先の利に飛びつくことが多いのです。選手も指導者も収穫を待てないのが実情であり貧しさです。
これは格闘技に限った話もなく、他のスポーツでもフィジカルトレーニングと試合技術に練習時間を割いて、キャリアのピークが早くきてしまって将来的に大成しないケースはよくあります。在籍期間に成果を求められる学校スポーツで多く、学校教育とスポーツを切り離して構造から変えていかないと解決しない問題のようにも思います。野球の甲子園やサッカーのフィジカル強化がわかりやすいところでしょうか。
基本がないと必ず限界がきます。そのときは勝てても勝てなくなります。
基本が固まっていなくともそれなりのところまではいけます。素材にもよりますが国内の王者位にはなれるかもしれません。素質と練習量である程度のところまではいけたとしても必ず限界がきます。広さがないと高さが出ないと僕は言うのですが、底辺が広ければ高さはついてきます。逆に広さのない高さは迷惑です。高さ、広さ、深さ、厚みと全て揃ってこそです。目先の利益ではなく、その選手の可能性を最大限使って一番高いところに登るためにも焦らずに積み重ねていきたいところです。慌てる乞食はもらいが少ない。
基本を大事だと僕が唱えるのにはもう一つ理由があります。
基本の集合体が応用技術で、俗に言う最先端の技術です。基本の組み合わせが最先端であって、急に湧き出た技術が最先端の技術ではありません。基本技術がしっかりしていれば創造できるし、概念が理解できていれば最新技術を見れば直ぐにできるようになります。基本技術があれば他のスポーツだったり、仕事だったり、本や映画で学んだことを軸に創造できるし、それが教養が大事とかクリエイティブって話なような気がします。無駄なことがないのですよ。
最後にもう一つ。基本ができていれば「ジャズ」ができるのです。
ここで言う「ジャズ」とは何かを決めなくともアドリブで出来る意味なのですが、僕は試合で細かい作戦も対策もしません。基本技術と知識と経験からくる教養で目の前に起こったことに合わせていきます。それこそが格闘技者の腕の見せ所だとも思うし、格闘技の醍醐味だと思っています。
目先の利益に捉われず、日々コツコツと積み上げが大切です。
無駄な練習もないし、無駄な仕事もないです。若いときは試合で使わないから要らないのではないかと考えたこともあるけれど、要らない技術など何一つなかったし、要らない経験も何一つなかったです。むしろ全てが足りないとさえ思うし、もっとやっておけばよかったと思うことはあれど、やらなければよかったと思うことはありません。無駄なことはないから、何事も斜に構えずに取り組むことをお勧めします。
39歳を目前にして今が一番充実していると思っています。
同世代の選手と比べてもここまでのコンディションを維持できている選手はいません。狂人だとさえ思います。技術も減量などのコンディション作りも短期的な視点で利益をとらずに長期の視点で取り組んできたからこそだと思っています。
周りと比べて焦ることもなかったわけではないし、周りの練習法やコンディショニングが気にならなかったことはないのですが、それでも自分の頭で考えてコツコツと積みあげてきた結果です。コツコツやりましょう。
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