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コロナ問題を契機にイベントをDXしませんか?

「年度末」というタイミングの悪さ

扉写真は昨年9月に招待された中国武漢の観光イベント会場の模様です。そこで感じたことはcomemoに記事も書いています。武漢は日本ではあまり知名度が高くなくて、日本人学生に聞くといわゆる「田舎」というイメージを持っている者も少なくありません。しかし、東京を上回る人口を擁し、近代化が急速に進んだ文教都市であり、衛生状態も良好でした。よもやあそこでこのような事態になるのかと衝撃を受けています。

当初、わたしが勤める大学でも中国人留学生を中心に武漢にマスクを送ろうという動きがあったくらいなのですが、その後ここ日本でも感染が広がり市中からマスクが消えてしまいました。コロナウィルスのやっかいなところはこのタイムラグです。感染から発症に至る潜伏期間が2週間と長く、強い症状が出ていなくても感染すると言われています。治療薬の開発も急ピッチで進んでいるわけですが、発症者が大量に病院に押し寄せてそのキャパを超えた結果「救えるはずの命」が救えないというのが武漢の状況(だから病院をものすごい勢いで作った)で、日本がそうならないという保証はいま誰も出来ないというのが実情でしょう。

わたしはこのやっかいな特徴と「年度末」が重なることが問題をより大きくするのではないかと懸念しています。企業・団体にお勤めの方にはご理解頂けると思うのですが、通常この時期は予算執行にに対するプレッシャーが高まる時期で、イベント等の「中止・延期」の判断が下しにくくなるからです。コロナ感染が広がる中、仮に延期にしても年度内に行なえる見通しが立たない中、先週の厚生労働省から示された「指針」に期待を寄せていた人も少なくないはずです。「国が一律自粛を求めている」となれば、延期・中止も止むなしという判断を後押ししてくれるからです。ところが示されたのは非常に曖昧な、イベント主催者に自己責任を求めるような内容でした。

この曖昧さが現場に難しい判断を押しつけることになり、結果的に問題をより大きくするというのは、いまもそして日本の歴史上も起こってきたことではあります。しかし嘆いてばかりいても仕方がありません。これを契機として地方でもイベントのDX(デジタルトランスフォーメーション)を進められないか考えたいと思います。

「集客・周知」か「協働」か

いま地方では様々な街おこし系のイベントが行われています。それらのイベント開催にあたっては様々な補助金・助成金が活用されており、通常「きちんと執行」し、年度毎に報告することが求められています。単なる中止や年度をまたぐような延期がしづらいのはこういった背景があります。

当然、人が集まるイベントには会場設備利用費・ゲスト招聘に掛かる費用・資料の印刷代・警備費など予算が計上されています。これらの費用をイベントの目的に応じてオンライン化を図り、予算執行とイベントによる成果(アウトプット・アウトカム)を確保できないかと考えるべきタイミングになっているとわたしは考えています。

イベントの目的が「集客・周知」にある場合は、YouTubeLiveなどを用いたネット中継への切り替えを検討すべきでしょう。その際、「人を集めてイベントを行う」というアウトプットだけでなく、「それを契機に新しい取り組みが始まる」などのリアクション=アウトカムまでオンラインでカバーできているかが重要となります。すでにこういった集客・周知系のオンラインイベント開催については、有益な参照情報がいくつも現れていますが、映像配信とSNSを組み合わせること、映像以上に音声のクオリティがアウトプット・アウトカムに直結すること、映像だけでなくテキスト記事としてのアーカイブの存在が重要であることなど、わたしも経験上いくつかのポイントを挙げることができます。そういったリソースに適切に予算を振り分け直すことが大切です。

もう一段階工夫が求められるのは、「協働」系です。いわゆるワークショップなどがこれにあたり、講演などのあと参加者がチームに分かれて作業し、発表するようなスタイルのイベントで、参加者の当事者性が高まるのが利点ですが、濃厚接触を避けようといった制約があるといよいよ開催が難しくなります。

一方こういった協働系のイベントは多くても参加者が100人を超えることはまずないと思います。講師がマネジメントできる人数にはどうしても上限があるためです。そのため最大100名まで利用可能なzoomなどのテレビ会議システムを用いることになるでしょう。

ワークショップ(参加者が各グループに分かれ作業する)の時間帯には、Zoomでの全体配信をいったん中断し、テーブルを見て回るように各グループのビデオ会議に講師が定期的に参加し、意見交換やフィードバックを行い、発表の時間には再び全体配信に戻ると言った時間配分と運用を行うと良いのではないかと思います。

ただこちらは、講師により高い運営スキルが求められます。大学の授業を置き換えるような場合は、同時に多数のビデオ会議が行われるようになるため、「集客・周知」系のように運営スタッフを貼り付けておくわけにもいかないからです。オンライン実施のマニュアル化や講師のスキル向上を急いで進める必要があります。

また地方では、残念ながらこういった中~大規模なオンライン配信に耐えうるネットインフラや、品質上特に重要となる音響設備が古い/弱いままとなっているところが少なくありません。これを契機にこれらの地方の弱点にも補助金・助成金を含めた予算処置が求められると感じています。

つまるところ、「人が集まって同時に話を聞いたり、作業をする」イベントの本質、その意義がコロナ問題だけでなく災害が多発するようになった日本の各地で問われていると言えます。これを契機としてアウトプット・アウトカムの質を落さず、さらに向上させることができればイベントのみならず地方におけるさまざまな取り組みが「DXする」足がかりとなるはずなのです。






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