エイブラハムをかじっただけの男と弟子　その１７　あの頃

エス太　：書類できましたので確認お願いします。

上　司　：ダメ。やりなおし。

エス太　：はい・・・どこが・・・でしょうか？

上　司　：そんなもん、自分で考えろ。

エス太　：わかりました・・・。

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上　司　：エス太ぁ！！なんでこんなことができね～んだっ！！

エス太　：はい、すいません！

上司達の声：ヒソヒソ、エス太はなんであんなにできないんだろうな。
緊張してばかりで全然ダメだよな。
俺たちの頃はもっとヒソヒソヒソ・・・。
　　　　　　
エス太　：全部聞こえてるっつ～の・・・。
はぁ・・・もし、神様ってのががいるなら、高望みはしません。
優秀な人間になんてならなくていい。
どうか、どうか、せめて、人の足を引っ張らない程の普通の力を俺にください・・・。

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エス太　：・・・ん？体が・・・痛い・・・？
なんだ、これ・・・。
どうしたんだ、俺。

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エス太　：先生、俺、仕事を休めないんです。
仕事を休んだら、きっと余計に職場から見放されてしまう・・・。

医　師　：とりあえず、痛み止めを出しますね。

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上　司　：どうした、エス太。体でも痛いのか？

エス太　：ちょっとだけ・・・。

上　司　：ちょっと休むか？

エス太　：いえ、大丈夫です。

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エス太　：痛みで体が、動かない・・・。

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医　師　：悪化してますね。手術が必要です。

エス太　：はい・・・。
くそ、なんで俺だけがこんな目に・・・。
いつだってそうだ。
いつだって俺なりに頑張ってるのに、誰にも認められない・・・。
いつも俺だけ、うまくいかない・・・。
神様なんて、いない。

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上　司　：どうした？エス太。

エス太　：手術を、受けます。長期で仕事をお休みさせていただきます・・・。

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エス太　：ごめんな。夏のこんな天気のいい日に、術後の自宅療養でどこにも連れて行けなくて。
彼氏らしいこともできずに。

モナミ　：いいよ～。小さい頃やってたスーファミしよう。

エス太　：スーファミって、懐かし！

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モナミ　：今月も、アパート代、携帯の支払い、電気代、ガス代、水道代、
エス太君の会社の付き合いの飲み代、もろもろ、支払ったら、赤字だよ。
ここ数日、毎日安いもやしばかり食べてる・・・ぐすん。
結婚生活がこんなに苦しいスタートだとは思わなかったよ。

エス太　：うちは、もやしに助けられてるな・・・。

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モナミ　：結婚してから数年が経つけど、子供を全然授からないね。
不妊治療ももう、しんどくて、やめようかなと思ってるんだけど。
造影剤とかも辛いんだよ。

エス太　：そうだな。別にやめていいんじゃね～か。
これからも、二人の生活で十分楽しめるだろ。

モナミ　：うん。仕方ないよね・・・。ごめんね。

　　　　　
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エス太　：モナミ、聞いてくれよ！！
エイブラハムの教えってのがあってよ！
どうやら、この世界には引き寄せの法則が働いているらしいんだよ。

モナミ　：最近、いろんな本を読んでるのは知ってるけど、私はちょっとこわいよ。
エス太君が変なものにハマってしまうんじゃないかって・・・。
お願いだから、他の人にその話は絶対にしないでね。
変な人だと思われるから。

エス太　：そうか。そう・・・だよな・・・。こんな話、普通は、受け入れられないよな・・・。

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エス太　：いろいろなことがあったなぁ。

つづく