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連射撮影(詩?エッセイ?)

窓辺から飛び降りる顔のない人々は
教室の窓越しの青い空を思い出し
真夜中のアパートで雲になって蒸発する
誰も人々に興味がないし
誰も人々のことを知らなかったので
誰も気付かないし誰も悲しまない
行方不明なんてここじゃ日常茶飯事だ
ただ全てを見ていた監視カメラだけは
少しだけ切ない気持ちになった
考える脳も覚えておく脳も無いので
きっとすぐにデータの中に忘れるのだけれど
―時々自分の存在が不確かでわからなくなる事がある。蒸発しそうになる。見失う。
僕には顔が無い
だからカラフルな絵の具で顔を塗りたくった
空虚な言葉に無意味をぶら下げて
虚像の論理を振り回し強がっている
でものっぺらぼうじゃ
あなたの顔さえ良く見ることができやしない
いつか僕も蒸発して雲になるのだろうか
微かにそんな気がする
誰にも認識されずに消えてゆく
水蒸気になるのなら
せめて誰かに記憶して欲しい
サンタさん、もし今年良い子にしてたら僕に監視カメラを下さい。駅前にぶら下がっている薄汚くて重たいやつでいいです。
だからどうか記録しておいてください。
確かにここに存在した絵の具まみれののっぺらぼうのことを。

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