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【ネタバレ感想】トラウマになるか夢中になるか寝落ちするかの三択映画「オオカミの家」

去年観た映画の中で一番惹き込まれた作品だったので、忘れないうちにネタバレしながら感想を書いていきます。
未視聴の方はご注意ください!

~あらすじ~
美しい山々に囲まれたチリ南部のドイツ人集落。“助け合って幸せに”をモットーとするその集落に、動物が大好きなマリアという美しい娘が暮らしていた。ある日、ブタを逃がしてしまったマリアは、きびしい罰に耐えられず集落から脱走してしまう。逃げ込んだ一軒家で出会った2匹の子ブタに「ペドロ」「アナ」と名付け、世話をすることにしたマリア。だが、安心したのも束の間、森の奥から彼女を探すオオカミの声が聞こえはじめる。 怯えるマリアに呼応するように、子ブタは恐ろしい姿に形を変え、家は悪夢のような禍々しい世界と化していく……。

まぁぁぁぁじで「こんな映画見たことない!」良くも悪くもこの一言!
伏線がすごいとか、ラストのどんでん返しとか、キャラの作り込みとか、そんなの関係ありません!!!!!!!「とにかく狂気的で薄気味悪い映画が見たい!」そんな特殊な人間たちのために作られた作品である。

この映画はとても衝撃的だったので鮮明に覚えています。あれはたしか夏だったか…(既に記憶が危うい)
私の住んでいる地域では街の中心部にあるミニシアターでしか上映していなかった。普段なら、中心部ど真ん中にあるビルとは思えない位の過疎っぷりなのにその日はオオカミの家目当ての客が並んでいた。
特殊な人間というのは意外にたくさん存在するものだ…(お前が言うな)

予備知識として、映画のテーマともなった「コロニア・ディグニダ」についてネットで読んできた。それを知らないと内容が分かりにくいと聞いてきたが…正直に言うと、予備知識ありでも分かりにくい映画ではあった。
何とな~く言いたいことは分かるんだけどそれを的確に文章にするのが難しい。「豚」とか「ハチミツ」とか暗に意味しているんだろうけど、数回みただけではこの製作者たちの心髄には近づくことはできない…。

皆、上映前はとても肩に力が入っていたし、はじめに同時上映された『骨』の中盤位までは「置いて行かれないぞ!」と前のめりに見ていた人も多かったが、だんだんとその熱気は蒸発し疑問のモヤとなって劇場内を漂った。
(私はもうだめだ…あとはどこかのネタバレ考察サイトに任せた…)という心の声がどこかの席から聞こえた気がした。
実際、隣のおばさんは途中寝ていた。

この映画は「雰囲気と、ストップアニメーションの制作過程を楽しもう」と割り切れれば楽しめると思う。(というかそもそも、コロニア・ディグニダが作ったプロバガンダという設定なので、内容を深く理解したり共感するという事自体が難しい)
小さな小屋の壁や床にそのまま絵を描いて動かすというだけでも狂気じみているのだけど…
人の造形も完璧ではないし、急に現代の家電が出てきたり、塗料が垂れたままだったり、前の絵がうっすら残ったままでもそのまま撮影され、とても几帳面とは言えないんだけど、その雑さが何だか気持ち悪くてグロテスクにすら感じる。
BGMも特に無く、筆で描く音や登場人物たちの囁くような声くらいしか聞こえないんだけど声が何か立体的でそれもまた気持ち悪い。

オオカミの家は公開からネットで話題になったので色々な人が見ては感想をあげていたが、その中に「制作過程で出る大量のゴミ」について批判している人がいた。そんな、目の前のスクリーンに映し出される映像を通り越して地球のことを思いやるような優しくて博愛主義の人には合わないであろう…。(こういう方は自主制作の人間ドラマなんかを楽しんでもらいたい)

ということで!独断と偏見による~この映画はこんな方にオススメ!~
①内臓モロだし!身体チョンパ!などのグロや、性的なグロは受け付けないけど気味悪い映画が見たい!
②制作側の狂気や執念を感じるような、斬新すぎるアートが見たい!

もうすでに上映が終了している劇場ばかりだし、配信サービスがはじまるという情報も聞かないけども、豪華特典付きのBlu-rayが2024年にリリースされるらしいので、とても楽しみ。
ただ、あれは街のミニシアターで見て、無言の大人たちと劇場を後にし、鬱屈した気分を引きずって街に出てその賑やかさにちょっとホッとする。
そして他の人たちは一体今どんな気持ちなんだろうと思いながら帰宅する…そういう過程も込みで楽しむ映画だと思う。

幼いころ、単にアリスが好きという理由でうっかり見てしまいトラウマになった、ヤン・シュヴァンクマイエルのアリス。今なら何だか見れそうな気がするのでいつか再トライしたい。

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