ピープルマネジメント：コーチングスキルはなぜ必要か？

前回は、マネージャーは高い基準を設定し、メンバーにフィードバックすることの重要性を説明した。

今回は、ピープルマネジメントにおいてコーチングスキルがなぜ必要なのか考察する。

ピープルマネジメントにおいてコーチングスキルが求められる理由は、現在の組織運営の変化に対応するためである。従来のピラミッド組織では、生産性を追求するために、マネージャーには優秀なメンバーが昇進し、自分の知識やスキルをメンバーに教える職人的なマネジメントスタイルが主流だった。

しかし、現在の組織運営においては、複雑性・不確実性の高い状況においてスペシャリストがチームで取り組む必要がある。そのため、マネージャーは特定の分野ごとに自分よりもスキルの高いスペシャリストをチームとして束ねる必要がある。特定の分野で高度な専門知識を持つメンバーが多くなることで、マネージャーには「教える」だけのアプローチではなく、「導く」ためのアプローチであるコーチングスキルが求められるようになった。

コーチングスキルは、下記のような理由で現代のマネージャーにとって不可欠である。

1. メンバーのポテンシャルを引き出す
   コーチングは、メンバー自身が自らの強みや可能性を発見し、それを最大限に活かすためのサポートのプロセスである。マネージャーは「問いかけ」を通じてメンバーの考えを引き出し、メンバーが自律的に問題解決する力を育む。

2. 自己成長とキャリア開発の支援
   メンバーが自己のキャリアを主体的に考え、成長し続けるためには、マネージャーからの一方的な指示や教示では不十分である。コーチングアプローチを通じて、メンバーが自身の目標を設定し、達成に向けて主体的に取り組む姿勢を促す。

3. 多様なチームを効果的にマネジメント
   現在の組織は、多様なバックグラウンドや専門知識を持つメンバーで構成される。コーチングスキルを持つマネージャーは、個々のメンバーのニーズや動機を理解し、それに応じたサポートを提供する。これによって、チーム全体のパフォーマンスを向上させる。

このように、現代のマネジメントにおいては、メンバーの力を引き出し、チーム全体の力を最大化するために、コーチングスキルが重要である。マネージャーは、教えるだけでなく、メンバーをサポートし、メンバー自らが主体的に成長できる環境を整える役割を担うことが求められている。