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父親との再会②


勇気を振り絞った電話で
否定され続けた私。


それでもここまで意を決したから
引き下がるわけにもいかない。

引き下がったらまた母親の洗脳のままだ。

私はなんとか
父親と会う約束をした。



でも、1人ではとてもいける気がしなくて
主人と行くことにした。

向かうまで吐き気が止まらなかった。




父親の自宅に着き


再会。


電話の時のきつい口調はなく
穏やかな父親。



離婚後に一度だけ来てくれた時の面影は
正直ない。


いつのまにかおじさんだ。


父親って言うより、他人のおじさんって感覚。


そもそも父親がいないまま育ったから
お父さんって感覚がわからない。

父親の感覚がわからないうえに
空白の20年がすっぽりと抜けていて

最後に見た父親と
今目の前にいる人は同じなのか?


とも思う。



旦那も一緒にいたことから

初めましての挨拶はそれとなく
穏やかに終わらせた。



その後

20年の空白を埋めたい気持ちや
父親にとっての娘とはどんな感覚なのか


母親と祖母の問題解決や
母親から離れるために頼れるところとか

とにかくどうにかしたくて
私は何度か父親の元へ遊びに会いに行った。


確かに母親目線だけじゃない
父親からの話は聞けた。

母親から聞いていた話とは
全く別の話しもあった。

でも、やはり母親への不信感がある父親。



父親に会ってみて
再会に喜んではいる様子は分かったが


父親の元に来ても母親同様

今度は父親から
母親、母方の祖父母の悪口を聞かされる。


父親の祖母からも
母方の祖父母の悪口を聞く。




大人たちがみんな

自分を守るのに必死だ。



私は何人の大人たちから
愚痴を受け止めなきゃいけないの?


なんで

自分の家族から
自分の家族の悪口を聞いているの?



誰も
私自身を見てくれている気がしなかった。



何度か父親と会ううちに
あることをお願いされた。



署名がほしい、と。


父親が亡くなった時に
遺体を研究所に送るための書類。

その書類に、血の繋がりのある人たち
全員の署名がいるらしい。



私には、私の署名と
兄と妹にサインをもらってきてくれと。


父親は離婚後に再婚しており
1人娘がいるらしいが

そこも離婚して縁が切れていると言う。


この状態で
その血の繋がりがある全員のサイン。




残酷な話しだ。

こんな話を聞かされる娘の私。


普通の家庭に育っていれば
別になんてことない。

でもこの状況でこの話は、自分のことだがさすがに残酷な話だと思ってもいいのではないか

と、どこか他人事に感じるほどだった。


でも、その話をされた時は
母親側の今後を考えていない様子から

父親は亡くなった後に
迷惑をかけないようにって考えてくれてるんだ

父親なりに
私に迷惑かけないようにしてくれているんだ


そんなふうに
自分の感情はしまった。



父親の遺体を研究所の送るサインなんて出来るわけもなく、しかも兄と妹に
なぜ私から掛け合わなければいけないのか。

そんなんだったらうちで引き取る。


旦那に相談した上で
そう答えた。


もう嫁に出た私。
旦那のとこに嫁入りした。


20年ぶりの再会。
でも罵倒された。

子どもなのに
無条件に受け入れてもらえない。


それでも父親の死を看取る約束。



もうこの出来事から何年経っているのだろう。
5年近く経っている気がする。


それでもその時からずっと、ずっと
心に引っかかっているのかな。

父親と再会したことで
母親からだけでない事実を聞けた。

その中で自分で判断出来た。

それはとても大事なことだったとは思う。


でも、その変わりに私に残った現実は

父親に、いらない子と思われていると思いながら育った子ども時代にさらに、喜ばれると思った再会でまた否定された。

あとで本心じゃないと分かっても
否定されたことは心をえぐった。


父親の死を看取ることを伝えたら
父方の祖母はとても喜んでいた。



その気持ちも分かる。


分かるというか…
子を思う当たり前の感情なんだろう。



でも
私の気持ちは?


どこに向けたらいいのだろう。



母親から離れたくて求めた父親からも
無条件には愛してもらえなかった。


両親はそんなつもりがなかったとしても
「私」は置き去りのまま。



きっとそろそろ
自分自身で認めないといけない気がする。


両親から
子どもの私を拾ってもらえることはない。




母親からは離れたけど

父親からも、自分の意思で心理的距離を置かないといけない。



最後だけは看取るけど
それでも自分の人生を生きる覚悟。


世の中の当たり前に逆らう覚悟。


子どもが親から愛されてないことを認めないといけないなんて、残酷な話し。


愛してくれてはいたかもしれないけど
それ以上に両親も愛情不足だった。



両親のせいにしたところで何も生まれない。


誰のせいにも出来ない。



それでも背負って生きていくのは私だ。

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