見出し画像

夕暮れに、手をつなぐ

【夕暮れに、手をつなぐ】

   ▶︎連続ドラマ


北川悦吏子先生の恋愛ドラマ
ということで楽しみに待っていた作品。

世代的に北川先生の全盛期は知らないけど
過去の作品名を聞くと新作への期待が膨らんだ。


私と同級生のふたりがメインとなる作品で
それだけで自分も大人になったなと思う。

若者が主人公となるドラマのイメージは
私の中では

新垣結衣
長澤まさみ
北川景子
山下智久

などなどという憧れのお兄さんお姉さんだったから。


1話冒頭から映像美に心打たれた。
綺麗な映像にあわせて流れる
ヨルシカの春泥棒が
より一層映像を美しく魅せていた。

映像の醸し出す雰囲気と
音(永瀬廉)の雰囲気がマッチしていて
これは永瀬廉くんが音になるための作品なのだと思った。
(のちに永瀬くんへのあてがきだとわかる💧)

と思ったのも束の間。
空豆(広瀬すず)が出てきた瞬間、一気に空豆の世界へ。
永瀬廉くんと比べてでは全くないので
永瀬くんファンが気を悪くされたら申し訳ないなと思うが…
広瀬すずちゃんの演技力はとてつもないな、と実感した。

脚本を見たわけではないし
あらすじを知っているわけではなかったが
1話を見る前の事前情報では
空豆ってなかなかインパクトが強い人物像でラブストーリーなのに?という違和感があった。
北川先生の作品の女の子はちょっと現実離れした子が多いらしいが、
そういうドラマに慣れていないという
個人的事情も相まって
空豆がどんなものなのか面白半分に見始めた自分もいた。

それなのに、すずちゃん演じる空豆の違和感の無さ。
いま隣に空豆がいたらなかなか違和感があるなと思うくらい現実離れしているのに
なんだかあの空豆はあの世界に違和感なく存在する、この不思議。
だってあのよくわからない方言が違和感なく入ってきたのだから!私は、ですが。

正直、すずちゃんは宇宙語の役が来てもやりきると思うほど。


個人的にすごく好きだったのが
空豆と音のナレーション。
特にはじめの人物紹介を音のナレーションで
音の主観で説明していくところ。

同年代だからこそ
全体を通して音の声や間のとり方や
ちょっと気だるそうな感じが
ちょうど今を生きる23歳に近い気がして
令和の恋愛ドラマの令和らしさが
音という人物に滲み出ていると思った。
何より永瀬くんのイメージが音の気だるさを
持ったイメージに近いものがあったので
音という存在が違和感なく入ってきた。



映像美に感動しながら見ていたが
空豆が夢を追いかけるにつれ
絵やファッションなどのアートとしての
『美』
にも魅せられた。
物語とは関係のないところでも
出てくる洋服の美しさに心動かされた。
劇中では田舎者のダサめな空豆だが
実際に着ている洋服は素敵なブランドのものでそれも見どころのひとつだと思っていたし
響子(夏木マリ)の着ていた洋服も
本当にお洒落なものだった。
ドラマによくあるいつも違う洋服ではなくて
空豆も音も同じ洋服を着回しているのが印象的だった。




ものすごく運命的な出逢いから始まる物語。
その出逢いがふたりの想いが結ばれる最後へと繋がっている。

すごく運命的な出逢いだったけど
その出逢いについて
最終話に再会するまで
空豆と音は話すことはなくて
お互いに出逢ったあの日を覚えているか
確かめないことが言葉に表せない
もどかしさとか切なさを感じさせた。
なんなら、音が家を出ていく時に
空豆は東京に出てきた日が音に初めて会った日だと言っているし。
自分が運命だと思ったことが相手にとって
大したことじゃなかったら悲しいから確かめられないんだろうか。
少なくともふたりには確かめることが怖くて
本当の最初の出逢いをなかったことにしようとしているように感じた。


空豆と音は本当は
お互いに一目惚れだったんだろうけど
共に過ごしていく中で
どんどん好きが増していって
もう周りの誰がみても好き同士で
好きが溢れているのに
本人同士はうまく相手の好きを受け取れなくて
それどころか自分の好きの気持ちにさえも
うまく気付けなくて…
いや、気付かないふりをしていて
ずっとずっともどかしかった。

自分の好きに少し気付いた頃には
それぞれの夢への思いが大きくなって
それに伴って現実も動いていて
23歳というリアルを感じた。

大学生ならもう少し現実から離れたところで好きなように生きて恋愛に全力になれただろうし
20代後半ならもう少し経験もあって
現実寄りになるかもしれないし
もう少し余裕があって相手を見てあげられるかもしれない。

23歳はもう立派な大人だけど
でもまだ少し子どもで難しい時期で。

恋愛も夢も現実も見なければいけないことの難しさがひしひしと伝わってきた。

上手くいくことばかりじゃなくて。
それどころか
上手くいかないことのほうが多くて
夢にしてもふたりはたくさん壁にぶつかったし
そういうときはふたりの関係も噛み合わなくなって7話くらいから心がギュッとなり続けていた。


心がギュッとなるというと
空豆と塔子(松雪泰子)の関係も。
塔子とたまえ(茅島成美)の関係も。
響子と爽介(川上洋平)の関係も。
セイラ(田辺桃子)の空豆への想いも。
千春(伊原六花)が空豆と音に抱く夢を追いかけることへの羨望も。
久遠(遠藤憲一)のファッションへの苦しみも。
マンボウ(増田貴久)の音楽への苦しみも。

みんなそれぞれ色んな思いを抱きながら
苦しみながら戦いながら生きている。

ドラマとしては10話なのに盛りだくさんすぎて
各々の人物が細かく描かれきれなくて
それが残念だったけど主人公以外にも
それぞれに人生があることを忘れさせないでくれた。


そのことは
最終話、一見自由な成功者のように見える立場の久遠が悩みもがく空豆に言った
「どう生きたって
  楽しいだけなんてあるわけない。
  楽しみながら戦うんだよ。」
に詰まっている気がする。
大人から若者への励ましの言葉。



空豆と音が結ばれたシーンの美しさは
出逢った時のシーンと映し出されていた色が
真逆で正反対の美しさが表現されていた。



ふたり会えなかった3年間
それぞれの場所で苦しい思いを
たくさんしたと思うけど
ようやく実った空豆と音の夢と恋が
どうかこの先末永く続きますように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?