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寺山修司のアイドル市街劇

もし寺山修司が今も生きていてアイドルグループをプロデュースしたら? 通称「もしテラ」、小説「TRY48」を文芸誌「新潮」に連載しております。第1〜3章まで、こちらのサイトで全文無料公開されてます。ぜひ、ご一読を!


https://www.shinchosha.co.jp/shincho/special/try48/

さて、いよいよ物語もクライマックス、最新回の第8章は<寺山修司、アイドル市街劇を仕掛ける>。アイドルたちが劇場を飛び出して、ストリートでスキャンダルを巻き起こします。これは1975年に寺山の劇団・天井棧敷が杉並区の阿佐ヶ谷一帯でやった市街劇「ノック」に由来します。マンホールから怪人が現れたり、ミイラ男がマンションの扉をノックしたり、銭湯で突然劇が始まったり…30時間連続で決行され、警察が出動して新聞沙汰の大騒動になりました。これが47年ぶりに阿佐ヶ谷・高円寺・中野一帯でアイドルの女の子らが大暴れする「アイドル・ノック」に転生するという次第。

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「新潮」2022年7月号に掲載ですが、ぜひ手に取ってパラっとめくってください。ちょっと大変なことになってます⁉︎

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そう、小説の中で突然、新聞が現れる! 「TRY48新聞」と題するアイドル少女らが作った新聞という体裁です(新聞の中にこの小説「TRY48」の広告も入ってます!)。これは寺山の劇団・天井棧敷が発行していた新聞を模したもの。1975年の市街劇「ノック」を特集した号がこちらです。

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この号をデザインした寺山偏陸さんが「TRY48新聞」の題字を描いてくれました。うれしい。なんだかページに「魂」が入ったかのよう。
市街劇「ノック」ではチケットの代わりに地図が売られました。この地図を頼りに観客たちが街を歩き、劇に遭遇するというわけ。

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これが榎本了壱さんによる「ノック」の地図です。お〜、すごいですね。
で、こちらが…

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「新潮」に掲載の「アイドル・ノック」の地図!
私が描きました。何度も現地に足を運んで取材して…稚拙なものですが、がんばって完成させました。いや〜創刊118年のもっとも歴史ある文芸誌「新潮」(太宰治『斜陽』、坂口安吾『堕落論』、三島由紀夫『金閣寺』も載りました)に掲載の小説で、太宰も安吾も三島もやらなかったことをやった! との思いです。
小説の中に架空の新聞や手描きの地図が登場する…何も単に気をてらっやったわけじゃない。寺山修司は多彩な人です。詩・短歌・ラジオドラマ・演劇・映画・競馬予想まで様々なジャンルで活躍しました。その寺山の才能の一つに編集者というのがあります。こんな本もあるんですよ。

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久慈きみ代『編集少年 寺山修司』(論創社)。中学時代に寺山が編集した学級新聞の内容などが紹介されています。編集少年として出発し、その後も劇団の新聞や雑誌「地下演劇」、日刊ゲンダイの新聞内新聞「人生万才」まで…寺山は多彩な編集活動を展開しました。小説「TRY48」ではこの多面体・寺山修司の全体性を描きたい…と構想し、編集者・寺山の側面をパフォーマティブに表すため小説内新聞、手描き地図の登場と相成った次第。
市街劇は突発的・刺激的でスキャンダラスです。けど、それを小説として表すとなると、どうしても文字表現の限界があって地味になる。そこで、えいやっ! とこういう反則的な手段に出たわけです。ああ、寺山ならいかにもこういうことをやりそう…やるんじゃないか? いや、やるに決まってる! そうだ、寺山を「批評する」んじゃなくて、小説が「寺山修司を生きる」こと…を実現したようで、ああ、著者ながらとてもわくわくしました。
相当に手間もかかるし、担当編集者の方の労力も大変なもの…けれど、提案すると即座に「やりましょう!」と受け入れていただき、完璧な誌面にしてくれた。「新潮」編集部に大感謝です。歴史ある純文学雑誌の誌面でこれをやるから、いいんですよね! まだまだ、この作品では面白いこと、実験的なことをやりたい…行けるところまで、行く…思いっきり突っ走ります!
「新潮」7月号、小説「TRY48」…ぜひ、ご一読ください😄👍

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