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恥ずかしくって、表紙を裏にして買っちゃいましたよ

 愛知県漂流編集部は、男ばかりだったけれど、時々女の人も来てくれた。イラストレーターの人だったり、大学で美術を勉強しているという学生さんだったり、編集部員の彼女さんだったり、おもしろそうだからってのぞきに来る女の子もいた。
 
 ある女の子は、まだ学生で、ここいら辺では、とても頭のいい大学に通っていた。明るいクリーム色のタイトなカーディガンを着て、いつもニコニコ笑っている感じ。本当によく笑ってくれるから、周りのみんなも明るくなってくる、そんな魅力があった。

 彼女は裏観光マップ特集の第2号を本屋で買ったのが愛知県漂流の出会いだったという。黄色い表紙に「やさしい鬼です、背中にのって」というピンク色の石像の写真が、雑に切り抜いて貼り付けてあるのだ。「恥ずかしくって、表紙を裏にして買っちゃいましたよ」と、ニコニコ笑いながら話していた。それを聞いて、編集部のみんなもニコニコ笑っていた。「恥ずかしいことでは、ありません。」というのは、このエピソードをもとに、第2号を紹介する言葉として生まれた。

 彼女は、ゆらゆら帝国が好きだって言っていたけど、ぼくはゆらゆら帝国が何だかわかんなくて、海の底で揺れるワカメのイメージしかできなかった。バンドの名前だって知ってからも、ライブハウスでみんなワカメみたいにゆらゆら踊っているんじゃないかって、ぼくは今でも思っている。


テキスト:遠藤文庫 (http://www.a-hyouryu.com)

イラスト:あみあきひこ(http://blog.livedoor.jp/amiakihiko/

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