マガジンのカバー画像

謳う魚、騒がしい蟹達

96
稲垣足穂『一千一秒物語』のオマージュ作品です。
運営しているクリエイター

2015年3月の記事一覧

取っ組み合いをした話

 ある夜、ストリートを歩いていると、何やら気配を感じたので、後ろを振り返ったとたん、何かが真正面からドシンとがぶつかってきた。
 あわてて前を振り向くと、今度は後頭部をガツンとやられて地面へと倒れた。
 そいつは倒れた私にさらに一撃を加えようとしたので、私は横へ転がった後、思いきって着ていた外套をそいつに被せると、力一杯に体当たりをして取っ組みあった。
 しめた、つかまえたぞ!と思ったせつな、別の

もっとみる

何かを引っ張った話

 酒場から酔って帰る途中のこと、私が歌を歌いながら歩いていると、電柱の近くで透明で光沢のある猫のしっぽのようなものがぶら下がっていた。空を見上げてみると、そいつはお月さまだか、お星さまにつながっているようだった。私はしめたと思い、そいつをエイっと思い切り引っ張った。
 すると月と星の光と街中の明かりが消えた。
 暗闇で平衡を失い、私はけつまずいてひっくり返った。
 悪態を吐きながら起き上がると、月

もっとみる