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2016年8月の記事一覧
|Ⅰ|(20xx+0年)7月◆前期課程試験、全科目終了
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目を覚ます。
ここは『洋燈』のカウンター。
大学の試験の最終日が終わった所で、同級生の籘四郎にここまで引っ張られてきたのだ。
(眠っちゃったか)
眠い目をあげると、そこには籘四郎のお目当ての人。
『せいじくん。授業、ちゃんと聞いてないんでしょ。』
多分、彼女は(だから一夜漬けが必要なんでしょ?)といいたいのだ。
少しムッとしてみせ
|Ⅹ|(20xx+6)年8月◆誓いの日
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“本日貸し切り”
そう張り紙された洋燈のガラス扉を開けて、藤四郎が入ってきた。
『ふー、あちい、あちい。』
入ってすぐに葵を見つけた藤四郎は、ズカズカと入ってきてカウンターの椅子にどっかりと腰かけた。
『葵さん、久しぶり!』
『久しぶり、由利君。元気そうね!』
以前より、少し落ち着いた印象になった葵は、にっこりと笑った。
『うーん
番外編 悪い子はいないか?
喫茶『洋燈』。今日は午後の講義が無いので、俺は藤四郎と喫茶『洋燈』に遊びに来ている。
『誠志、これできるか?』
見ると、藤四郎が人差し指と中指、薬指と小指をくっつけてかざしている。
ああ、あれか、他の指をくっつけたまま、中指と薬指だけを離せるか、ってやつか。
『できないけど、、、ていうか、それ意味あるの?』
中学生、、、いや小学生かよ!とか心の中でツッコミを入れつつ、次の言葉を待つ。
|Ⅸ|(20xx+3)年9月 顛末
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ニコロ・マキアヴェリは、ひたすら良心的に、道徳的に振舞うことで他者にそれに習わせ、追従させる方法は効果が無いからやめるべきであると著書で強く禁じている。しかし、権謀術数のみを追求する者が究極的に行きつく先は、同じく権謀術数のみを追求するもののみを、すなわち同族のみを殺すための論理なんだ。
そうなると、もうほとんど力学と同じなんだけど、そこまで
|Ⅷ|(20xx+3)年8月 出雲と誠志
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◆◆と結託して、輸送車両の荷台に乗り込み、存在しない来客となる。
付け入る隙があるのは、▲▲が支配する分野で、それが整っていれば、誰かが、常に自分に代わってそれを実行することを望んでいるものだ。
だから、それをする疑いがあるものは、みんな見てみぬふりしながら、誘導までしてもらえる。
労働組合の■■の手引で、社長室へと足を運ぶ。
そう、偶
|Ⅶ| (20xx+3)年6月 決意
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ルポライターを目指しているという藤四郎の人脈は、測り知れないものがあった。
“コミュニケーション能力と、人脈さえあれば、自分の能力なんてほとんど人の能力で埋め合わせができてしまう。”
以前に藤四郎は俺にそんな助言をしたが、その言葉の通り、霞はセキュリティーのしっかりした病院へと転院し、俺への直接的な加害行動もなくなったように見えた。
(と
|Ⅵ| (20xx+3)年5月 変様/誠志
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『洋燈』のある通りに、一台のスモークガラスの黒いライトバンが止まっていた。
不審な車だな、、、と思いながら横を通りすぎようとすると、突然ライトバンから二人組の男が飛び出してきて、俺の方に向かってきた。男の一人の手元に、スタンガンが見える。
抵抗しようとしたが、2対1では分が悪かった。
スタンガンの激痛が走る。意識は飛ばなかったが、激痛としびれ
本日の『ランプの明かりにコーヒーカップと花束を添えて』は、本編の[Ⅴ]と過去編の[∇]の二話がありますので、よろしくお願いします!
|∇|[(20xx+0)年4月 邂逅の日]◆過去のこと:
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始まりの日(表-1)
横浜港に、大橋出雲の乗る貨物船アストレア・リーダーが到着した。
出雲の乗る船が横浜港に寄港すると、必ずK区にある骨董店に足を運ぶ習慣があることは熟知している。
誠志の羽織るフライト・ジャケットのポケットの中には、ハンティング・ナイフが入っている。ナイフで狙うべき急所は、喉、首筋、みぞおち、睾丸、両のひじ裏や両の手首近
|Ⅴ|(20xx+2)年4月◆変様/霞
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霞の容体が悪化した。点滴のチューブが外れ、逆流した血液が大量に病院の床へと流れ落ちたのだ。
昏睡状態とはいえ、霞は全く動かないわけではない。だから、最初は偶然に外れたものだと思っていた。だが、すぐに2回目が起きた。
異常を感じた俺は、医者や看護婦に頼み込んで霞を起こし、霞と話をした。霞の話では、看護婦さんとは違う感じの人が、点滴のチューブを
|Ⅳ|(20xx+1年)9月◆三渓園観月会の後で
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『うーん、佳月、佳月でした!』
お月見のイベントが終わり、今は、最寄り駅からの帰途。
観月会は葵さん発案だったこともあり、葵さんの機嫌は良かった。
(ま、俺たちは最初からエスコート要員なんだけど)
『佳月って、どういう意味だよ?』
一応、藤四郎が聞く。
『良い月、名月って意味よ。小説でも佳作って言葉があるでしょ?』
もし、葵さんが
|Ⅲ|(20xx+1年)8月◆18日の夕立
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夕立。俺と藤四郎が『洋燈』に逃げ込んだときには、もう二人はずぶ濡れだった。
お店に入ると、葵さんが濡れた俺と藤四郎の服を、お店の裏方にある乾燥機で乾かしてくれることになった。
半裸の二人に、葵さんは大きめのタオルを貸してくれたのだが、、、。
『誠志。お前、その傷は?』
藤四郎は誠志の左の鎖骨の下にある、横一文字の古傷を指差した。
『あ
残暑お見舞い申し上げます。
本日から8/21(日)までの毎日、全話合計で8000文字の短編小説を投稿いたします。
この作品は、とにかく一本、話が完結するオリジナル小説を書こう!ということで、久野史上初の完結した作品です。
もしもしお暇であれば、お付き合いいただけると幸いです。
|Ⅱ|(20xx+0年)10月◆病室にて
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ゾルピデムを投与する。
しばらくすると効果が現れ、病院のベッドに横たわる大橋霞がうっすらと意識を取り戻した。
『おはよう、せいじお兄ちゃん』
『おはよう、霞。起こすなら晴れの日を選びたかったけど、最近は天気が悪い日が続いているからさ。』
できれば、霞には、なるべく多くのお日様の光を見せてやりたいのだ。
『ううん。いいの。じゃあ、いつも