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BTSの楽曲とダンスジャンルの関係性

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「おい、お前の夢は何だ?」

これは、BTSのデビュー曲、"No More Dream"の歌い出しの歌詞です。

- もう他人の夢に閉じ込められて生きてはいけない
(N.O)

- 夜通し働いていた、毎日。お前がクラブで遊んでいる時
(DOPE)

- どうして隠そうとばかりするんだその仮面の中に、失敗で負った傷跡も全部自分の星座なのに
(Love Myself)

- 世界が大きく変わってしまったと人々は言うけど、幸い僕たちの仲は今もなお変わらないまま
(Life Goes On)


BTSが作り出す曲には、この様なメッセージ性が反映されている楽曲が非常に多く存在します。
デビュー当時から、強いメッセージを楽曲を通して伝えているのもARMY(ファン)の共感を呼び心を動かす要素になっているのだと常々感じてます。

しかしそれは、楽曲スタイルや歌詞だけでなく
ダンスやパフォーマンスに関しても、例外ではありません。

強いメッセージ性と、パフォーマンス内で取り入れられているダンスジャンルがマッチしている

こう言葉にすると当たり前の様に思えますが
今回はARMY兼ダンスオタクである私の目線で、BTSの楽曲とダンスジャンルの関係性について掘り下げていきます。

私はダンスに触れている経験者ですが
個人的にはダンスに正解はないと思っているので、答え合わせとして書く訳ではありません。
このnoteを読んだ誰かが、BTSのダンスにより一層深く興味を持てる様になれば幸いです。
また、他の方のダンス解説は見たことがなく、インタビューの読み落としなどもあるかと思います。
既に伝えられている内容もあるかもしれませんが、ご了承ください。
ダンスと防弾少年団が好きな人の、個人的見解として楽しんで頂ければと思います。

はじめに

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"ダンスのジャンル"と言えど、現在では様々なジャンルからインスピレーションを得て、独自のスタイルで作られた作品も珍しくありません。

また、K-POPは真似しやすいキャッチーな振り付けオリジナリティー溢れる動きが多く取り入れられている為、ジャンルの定義が難しい部分はあります。
そもそも、ダンスは"表現"の一貫なので全てにジャンルの定義をする必要は無いのですが、ダンスのジャンルにはそれぞれ"起源""歴史"が存在します。

そのジャンルの起源や歴史を絡めてBTSのパフォーマンスについて

2013年にリリースされた
We Are Bulletproof Pt.2】

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初のBillboard1位に導いた
【Dynamite】

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前向きなメッセージが込められた
【Permission to Dance】

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この3曲を抜粋して、ダンスのジャンルについてやBTSの楽曲のメッセージとの関係性について、私なりの考察を綴っていきます。

We Are Bulletproof Pt.2 ~怒りをダンスで発散させる~

【We Are Bulletproof Pt.2】
この楽曲は2013年にリリースされた楽曲です。
サビの歌詞を少し抜粋すると

Oh! 나만치 해봤다면 돌을 던져
俺と同じくらい努力してきたなら石を投げろ
We go hard 우린 겁이 없어
全力でやり遂げる俺達に怖いもの知らずだ

少し怒りを感じるかの様な、強い歌詞が特徴です。

ダンスブレイクに注目してください
(3:09~)

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ダンスラインJ-hope , JIMIN , Jungkookの、強く堅い動きとアクロバットを取り入れたそれぞれのソロパフォーマンスです。

このダンスブレイクは【クランプ】というジャンルからインスピレーションを得ているのでは無いかと思います。

クランプの発祥の地はアメリカのロサンゼルス
当時のロスは多くの若者が犯罪に手を染めており抗争暴力が頻繁に発生し、とても治安が悪かったそうです。
その若者のたちに"TOMMY THE CLOWN"という人物がダンスを与え、抗争や暴力を、ダンスに取って代えることで解消させようと取り組んだのが"クランプ"の始まりだと言われています。
つまり、若者が喧嘩しない為に広まったダンス。と言えます。

【We Are Bulletproof Pt.2】の歌詞には先ほど抜粋したサビだけでなく
"学校の代わりに一晩中歌って踊っていたんだ"(Jungkook)
という内容の歌詞や
"HIPHOPだけの兄ちゃんたちには無理だって言ったろ"(RM)という歌詞など
当時の防弾少年団という若者達が怒りをぶつけている様な内容に思えます。

なんだか、クランプの起源歌詞通ずるものがある様に思えませんか?

そして、ダンスブレイクの内容ですが
Jungkookの動きに注目してください

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J-hopeとJIMINは、ビートを取り、堅く強く動いているのがわかりますが
Jungkookは帽子を2つ使って難しいことをしている為、スタイルが前の2人とちょっと違く見える方もいると思います

クランプは攻撃的な動きをしたり、体全体を大きく使いながら踊るのが特徴です。
【日本最高峰のクランプ集団】と呼ばれる、ストリートダンス界で知らない人はいないであろうクルーの動画を貼ります

この動画を見ていただくと発散するかの様な大きなの動きをしているのがわかると思います。
そして、2:20~を見てください。
帽子を使ったパフォーマンスをしていますが、こちらが【ハットトリック】と呼ばれる動きです。
ハットトリックはクランプで多く取り入れられる動きで、クランプのダンスバトルでもよく見かけます。

Jungkookの帽子を使うパフォーマンスは、この"ハットトリック" を取り入れているのが分かります。

J-hope → JIMIN → Jungkook
かなり大衆向けにはなっているものの、3人ともこのクランプの動きを取り入れているのではないかと私は感じます。
同じ楽曲内で、怒りを感じさせるBTSの歌詞と若者が怒りで罪を犯さない為に生まれたジャンル"クランプ"の融合。
非常にオタク心を掴まれる関係性です...!

実際に、クランプの動きを取り入れようと思いこの振り付けを作ったのかや、クランプのカルチャーを楽曲を照らし合わせていたのかまでは分かりかねますし、全然違う意図がある可能性もありますが、楽曲のイメージと振り付けがしっかりとマッチしており"ダンス"の要素をふんだん取り入れたダンスブレイクはとても見応えがあり、デビュー初期の楽曲として"防弾少年団はパフォーマンスに長けている"というメッセージの様にも感じます。

Dynamite ~ディスコの香り~

過去note【BTSのダンスを1秒単位で深掘る
『Dynamite ~ダンスカバー大ブームの理由~』にも似た内容を記しましたが、もう少し詳しく書いています。

【Dynamite】
Dynamiteは、歌詞に大きなメッセージ性があると言うよりかは、このパンデミックの中で"世界中をポジティブな雰囲気とエネルギー爆発させる"という思いの元作られた楽曲だとリーダーのRMは語っていました。
世界中で使われている"英語"で歌われた、とにかくハッピーな歌詞のディスコポップソングには、それがよく現れていると私は感じます。
では、パフォーマンスはどうでしょうか。

Dynamiteは、全体的にノリノリな動きとポージングのシルエットが印象的なコレオに作られています。

その振り付けの中に、【ソウルダンス】と呼ばれる踊りの、ステップやノリが取り入れられています。
(ちなみにかなり根深いお話なのでここでは深く話しませんが、ソウルダンスはジャンルの名称というわけではありません。気になった方は調べてみてください)

ディスコで流れる音楽に合わせステップを踏み、みんなで一緒に踊るパーティーダンスが"ソウルダンス"と言われています。
1970年代頃にアメリカで放送されていたテレビ番組『SOUL TRAIN』で"SOUL TRAIN DANCERS"が踊っていたダンスがきっかけとなり広まり、日本でも話題になったと言われています。
こちらは2年前にアップされた動画ですが、SOUL TRAINフラッシュモブ

↑この動画を見ていただければわかると思うのですが、70年代当初、男女がペアで踊るダンスとして広まった踊りなので、ステップが非常に多くなっています。
(ちなみにこの動画は本当に見て欲しい。パーティーダンスの良さが詰まっていると思う。)

BTSのDynamiteもソウルダンスフレーバーのステップが多く取り入れられています。

(0:34~)

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(0:55~)

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(1:04~)

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(1:24~)

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挙げだしたらきりが無くなってきましたのでこれくらいにします(笑)

上記のステップのほとんどが、ソウルダンスのステップを彷彿とさせる動きです。

また、ディスコで発祥した踊りの中に【WAACK】というジャンルがあります。先ほどあげたこちらの動画でもWAACKを踊っている方がいました(0:59~)

1970年代にゲイダンサー達がドラッグクイーンやマリリンモンローなど、女優のポージングを真似て発祥したジャンルと言われています。
Dynamiteでも、直接的にWAACKを取り入れているわけでは無いですがそのフレーバーを感じさせるポージングが印象的です。

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(これメインのMVに使われてなかったけど...とても好みです)

Dynamiteでは、当時ディスコで生まれた様々な動きを踊りに取り入れている印象です。

"世界中をポジティブな雰囲気とエネルギー爆発させる"
この思いのまま、世界中でDynamiteのダンスカバーが流行し、パンデミックの中で世界中の人々がそれぞれの場所でも、ディスコでみんなが一緒に踊っているかの様な雰囲気になったのではないでしょうか。

また、Dynamiteはソウルダンスやパーティーダンスからインスピレーションを受けながらも、BTSという大衆音楽に分類されるアーティストの振り付けとしてかなり親しみやすくアレンジされています。
それも、ダンスカバーが大流行した要因なのではないかと私は考えています。

Permission to Dance ~みんなで踊ろう~

Permission to Dance】

2021年7月に公開されたこのMV
国際手話が取り入れられていることでも話題になりました。

全体像を見ると、ミュージカルっぽい印象を受ける人も少なくないと思います。(曲調の影響もあると思いますが)

確かに、冒頭のJungkook→RM→JIMIN→JINのソロはストーリー性がありますし、RMが踊っている後ろでJIMIN、V、SUGAが演技をしているのが分かります。

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この様な演出は、メッセージ性が表現されており、メッセージか伝わりやすいパフォーマンスになってます。
その影響もあって、ミュージカル感が出ていると感じる方が多いのではないかと私は思います。

今回ピックアップしたいのは、(1:14~)

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この2×8カウントには【LOCK】というジャンルが取り入れられています。
ロックダンスも1970年代頃に生まれたジャンルで、突然"カチッ"っと鍵をかける様に静止したりポーズをとる動きから"LOCK()"と呼ばれるようになりました。

SUGAとJungkookがやっている動きがまさにロックと呼ばれる動きです。

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この動きに関しては、インスピレーションを受けているというよりは完全にロックしています。ダンスオタクとしてはめちゃめちゃテンション上がりました。
ハイタッチをする動きもロックダンスで多用される動きです。

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ここではキックウォークと呼ばれるロックダンスのステップをしています。

最初のJ-hopeとSUGAの動きもロックダンスやソウルダンスのフレーバーを感じる動きになっている印象です。

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なぜ、私が5分ほどあるPermission to Danceの中のたった2×8カウントについてピックアップしたかったかというと
楽曲のメッセージ性とマッチしていると感じたからです。

LOCKダンスも、70年代当時に流行していたファンクやソウル、ディスコなどの音楽で踊られてきた影響から、パーティーダンスとしても親しまれています。

Permission to DanceではラッパーであるRM、SUGA、J-hopeがラップをせずに歌を歌っていることでも話題になりました。
ラッパーであるJ-hopeとSUGAが優しい声で歌を歌い、パーティーダンスを踊っている
というカットは、個人的に非常にグッときます。

このPermission to DanceもDynamite同様に世界中の人にポジティブな影響を与えたと思います。
"踊ることに許可はいらない"という歌詞の楽曲に、LOCKダンスの様なハッピーな要素は、とてもメッセージに合っていると私は感じました。

Permission to Danceは国際手話を取り入れていたり、英語で歌われている事から、まるで世界を繋いでくれているかの様な楽曲とパフォーマンスになっています。
また、MV冒頭に出てくる紫の風船

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そして、つい先日公開された
 【Permission to Dance (Shorts Challenge ver.) MV】

まるで、先ほどのMVで飛んでいた風船を受け取るか様なシーンから始まるこの映像には、世界中のファンがPTDの振り付けを踊っている映像が集められていました。

PTD、世界だけじゃなく宇宙までも繋いじゃっている.............すごい(語彙力)

世界中を繋いでいるこの楽曲の一部分に、人と人を繋ぐ様なスタイルの"LOCK"が取り込まれているという点も、非常に暖かく、楽しい要素だと感じます。

さいごに

本noteで取り上げた楽曲は、ジャンルの取り入れ方が分かりやすかったのでピックアップしましたが、これらのパフォーマンス以外でもBTSは様々なメッセージ性を踊りに落とし込んでいます。

先日公開されたButter (feat.Megan Thee Stallion)Meganのラップに合わせた3Jのダンスは、歌詞に合わせたジェスチャーを取り入れた振り付けだというのが話題になったのも記憶に新しいです。

歌詞や音楽スタイルなど、言葉や音色で伝わりやすい要素に合わせ
ダンスやパフォーマンスにもしっかりとメッセージを込めている振付師やパフォーマンスチーム、そしてそれを表現するBTSのメンバーには脱帽です。
抜かりない。

キャッチーな動きに頼り切らない、メッセージに忠実なコレオは
彼らが世界中の人々に大きな影響を与え続ける要素になっていると私は考えています。
特に、パーティーダンスやノリが大事になる踊りで、ここまで見応えのあるダンスができる彼らのスキルは、アーティストとして非常にレベルが高いと常々感じます。

このnoteでは、"ジャンル"について語ってきましたが、結局はBTSが作り出す作品は"BTSスタイル"です。
私がこのnoteで伝えたかったのはパフォーマンスごとの"答え"ではありません。

先日公開された、コールドプレイのクリス・マーティンとPTDチャレンジについてなどを対談している映像で、RMはこの様に語っていました。

実際に"ダンスの許可"なんて存在しない。体を動かせばいい。
誰でも音楽を聴いて、表現することができる。
好きな様に表現していい。

この言葉の通り、考え尽くされたコレオの中でも自分たちの表現をパフォーマンスに落とし込んでいます。
"ジャンル"に、歴史や軌跡が存在すのも事実ですが
結局、表現をしているのは踊っている本人たちです。

例えば、Permission to Danceには
ロックダンスというパーティーダンスの要素がほんの少し入っていたり、国際手話という聴覚障害がある方も一緒になって楽しめる要素を盛り込んであり、サビの跳ねるようなダンスも多くの人が楽しんで踊れるダンスになっています。
ただ単純に一曲で色々な姿を見せる様に作られているわけではなく、意味があり、それが直接メッセージに繋がっているように思えます。

ダンスに限らずですが、ジャンルやルーツというのは歴史深く、掘れば掘るほど様々なストーリーがあります。
それと同じ様に、BTSのダンスは各楽曲に合った動きを取り入れているものの、その時の彼らの状況、ファンの状況、世の中の状況に沿ったパフォーマンスを作り上げ、それがBTSのオリジナルスタイルとして確立しているのだと私は思います。

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世界がどの様に変わり、彼らがどの様に感じるのか
今後も、歌とダンスでどの様に見せつけてくれるのか、とても楽しみです。

ここまで読んでくださりありがとうございました。
意図を予測する言い回しもしましたが、ここに記した内容は私自身の
個人的見解、個人的な考察となります。

誰かの楽しみが、膨らんでいます様に...

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