エナルモンなのに年25万かかった話〜病院選びは慎重に

FTMが投与する男性ホルモンで恐らく一番メジャーなのは「エナルモンデポー」だと思う。
私も打って「いた」。

GIDにまつわる診療は保険適用外だ。
というか条件次第で適用されることになったのだが、制度がザルすぎて対象者がほぼいない
しかもエナルモンは大概、2週間ごと=月2回は通院する必要があるので、
安いに越したことはない。

ホルモンを開始した頃、私はある地方都市に住んでいた。
元々ガイドラインに沿っていないので、GIDへのホルモン投与を扱っている医療機関も自分で探し、
立地的にも行きやすい産婦人科に通っていた。
会社の通勤定期や自転車で行ける場所だったので、交通費は実質無料。
実費だと往復500円。
あくまでGIDは診療項目として表には出していない所だったので、
通院周期などについて病院側が指示してくることは何もなく、
自己判断で月1にしていた(当時ワープアで月2通うのが金銭的にキツかったのもあるけど)。

費用は、エナルモン250mg4020円のみ。
確か初診時と半年ごとに血液検査があって、それが6000円くらい。
単純計算で年6万あれば足りた。

一昨年東京に引っ越してきて、新たに打ってくれる病院を探さなくてはいけなくなった。
日本一の都会いえど、扱っている医療機関は意外に多くない。
その中で、徒歩と電車で片道30分足らず、往復400円以下で行けるC医院を見つけた。
サイトには料金も明示してあり、
検査費用は結構高額だったが、初回だけならいいかと考えた。

飛び込みで受付に行った。
それが一昨年の12月。

ベテランそうだが無表情な受付の人が、開口一番

「初回は検査で約4万円かかりますがよろしいですか」

と聞いてきた。
あの時点では他に通いやすい病院がないと思っていたので、承諾するしかない。
採血と検尿は理解できたが、レントゲンと心電図まで取られ、
これは本当に必要なのかと首を傾げつつ39000円カード切って帰った。
その時は検査のみで、注射はなし。
2週間後、検査結果を聞きに行き、注射を打ってもらった。
エナルモン250mg、税込2700円。

この安さに目くらましされた。

注射代は確かに2700円だが、男性ホルモンを打つと血栓ができやすいという理由で血栓予防の薬を出される。
処方箋代が1600円ほど、外部の薬局でもらう薬が850円。
結局毎回5000円以上かかる。

とはいえ、全てひっくるめて注射代ととらえて5000円なら了解できる。
落とし穴はそこからだった。
話が前後するが、打ち始めてから最初の3回ほどは何故か毎回検尿を指示された。
これはこれで別料金を取られる。
更に、定期的な血液検査は2ヶ月ごと。
検尿は恐らく1500〜2000円程度、採血は4000円足らずだったようだが(明細には注射代とまとめて記載されるのではっきりとはわからない。処方箋と血液検査は保険診療)、
採血をした次の回は診察室に呼ばれ、医師に結果を告げられるわずか1分ほどの「面談」で1700円ほど取られる。

せめて処方箋は1ヶ月分をまとめて出してくれないかと頼み受け入れられたが、
そんなわけで支払いが「注射代だけ」で済むのは5、6回に一度だった。

更に、最初に打ってから2ヶ月目の採血の後、
250を月2ではあまり効果が見えない、
半端な効き目では内臓への負担ばかり増えるので500にしてみようと言われた。

250は2700円。
500は倍の5400円。
他の費用は同じペースでかかる。
つまりほぼ毎回7〜9000円程度かかるようになった。月2で。
しかも、5400円は増税前の額で税込だったが、
10月の増税後は税抜き5600円=税込6160円と、
実質700円以上も値上げされた。

そして見落としていた(というか知らなかった)のが
半年ごとの検査。
これがまた3万

しかし、毎回会計時にモヤモヤしながらも、他の病院に初診でかかるとまた金がかかるよなぁとか、
あの産婦人科が安かっただけで、他の病院は似たようなものかもしれない、と自分に言い聞かせ通い続けていた。

そんなこんなで初診から1年後の昨年末。
「1年目の検査」として1万円強取られた。
検査項目は今まで3万取られていたのと変わらなかったと思うので不思議だが。
その次の回では、今度は採血や結果の通知の面談などでまた1万円以上かかった。

その2ヶ月後の先月、

「次回は半年ごとの検査で3万円かかります〜」

どういう周期だよ??!?!??

実質的に1月から開始したとして、半年後というと6〜7月、
実際「1年目」の検査は年末だったのだから、次は6月のはずではないのか。
いよいよ不満と不信感が爆発した。
確認しても良かったんだろうけど、納得いく説明をしてもらえるという期待を持てないほど既に不信は募っていたので問い質さなかった。
確かに個々の料金はサイトに書いてあるが、処方箋や処方薬については触れられていないし、
そもそも初診料と注射、血液検査以外に項目があることに納得しかねる。

病院全体はともかく個々の看護師さんは感じの良い人たちだったので(受付の無表情の人を除く)、そう告げられた後注射を打ってもらってる間に
「レントゲンとかって必要なんですか…?3万ってキツいですw」
と愚痴ってみたら、
「内科なので(GID専門ではないという意味だと解釈した)色々心配だから仕方ないんですよ〜」
というような返答。
「色々心配」って…?

身体的には異性の性ホルモンを投与し元々身体から分泌されているホルモンとぶつけるのは、身体にとっては害でしかないので、
プロに管理してもらって大病のリスクを回避するのがトータルでは安い、
と自分に言い聞かせてきたが、
GIDのホルモン治療は基本的に一生続けるものだ。
今は幸い収入が安定しているので、高いと不平を漏らしつつも打てているが、
今後どうなるかはわからない。
というか今も「出せなくはない」だけで、正直かなりキツい。
毎回7000円に加え半年ごとに3万はもう許容できなかった。

折しも世は大確定申告時代。
昨年一年にかかった医療費を、交通費まで全てExcelに打ち出した。
皮膚科など他の病院にもかかっていたので、それら全てを合わせると

28万円。

手術や入院はしていない。
他の病院は多くて月1程度、診察台が1000円前後に薬代が1~3000円程度なので、
C医院に支払った額と処方薬代、交通費だけで、25万にはなるだろう。
月2回いろんな予定を調整して通院して、安いのがメリットのエナルモンを打って月2万。

私はC医院に行くのを止めた。

「検査3万円」がなくても、別の病院を探して様子を探って、
C医院には引っ越すのでもう来れないとでも言って紹介状をもらって穏便に去ろうと思っていた。
しかしこの病院じゃ紹介状出してもらうのにも1万とか言い出しかねねぇ
と思ったので無言で去ることにした。
(産婦人科からの紹介状は約2000円だった)

とはいえホルモンは打ちたい。
どうしたもんかと思っていたところにネビドの存在を思い出した。

ネビドもエナルモンと同じく注射だが、
エナルモンは先述の通り2週間おきなど短スパンでの投与が必要で、
そのため生理的にもホルモンの波が激しいというデメリットがある。
一方ネビドは、投与周期が3ヶ月ごとや、人によっては5ヶ月ももち、
効き始めるのもゆっくりだが波が穏やかというのがメリット。
デメリットは高いこと。
相場は概ね1本3万円。
ホルモンを打ち始める前に別の病院で聞いていたエナルモンの料金と比べても、
当時は4000円を月2回すらキツい財政状況だったのもあって、
3万は高すぎると思い、最初に切り捨てた選択肢だった。

でも冷静に月割りで考えると月1万である。
今のエナルモンの半額じゃね?

ネビドより高くつくエナルモンって何だ?

そう気付いてネビドを扱っている病院を探したら、相場よりかなり安い所が見つかった。

こちらの記事です。ありがとうございます。

試算してみると、倍近くなる交通費を合わせてもC医院でエナルモンを打つより年10万近く安い。
少なくとも定期検査で3万取られることはない。(3万でネビド+血液検査ができる)
もしそれほど安くならないとしても、通院回数が減るのは、月2を1年続けた後だとありがたみの感じ方が違う。
予約しようと電話して、念のため
「今行ってる所が定期的にレントゲンやら何やらで3万取られるんですが、そういうのはないですか?」
と聞いたら、
「それって何を調べるんですか…?うちは血液検査だけです」
と実に怪訝そうにお答え頂いた。デスヨネーーー!!!

というわけで無事予約。
ただ、かなり予約で埋まっているとのことで、C医院での最後のエナルモンから2ヶ月半ほども開いてしまうことになった。
ネビド開始まではC医院に行く、ということができればいいのだが、
次に行けば検査3万である。
検査を拒否して注射だけ打ってもらうことは恐らくできない。
この記事を書いている時点で投与から2ヶ月弱。
250を月1とはいえ、1年打っていても少量ながら毎月生理が来ていたほどの健康体なので、再開しないことを祈るのみである。

それにしても通院しないと財布がしんどくない。
月2万はやはり高い。

更に、思い返すほどにC医院がヤバいのは、ここもネビドを扱っているのだが、
提携先の医療機関でSRSを受けた人だけを対象としていたこと。
SRS済み、というだけならひとつのポリシーかと思うが、
提携先で受けた人のみというのは何か勘繰ってしまう。
と思っていたところへダメ押しのようにこんな記事を見かけ、不信が確信に変わった。

プラセンタやってるよそこ!!

因みに、胸オペの担当医にも相談したところ、
「(エナルモン)500って多くない…?聞いたことない」
と怪訝な反応だった。
それから、産婦人科では年6万あれば足りると書いたが、
月1はやはり少ないから月2にしたとしても、単純計算で倍の12万。
実はネビドと大差ないではないか。

結論。ネビド、まともな病院にかかればそんなに高くない。
通院開始する前から言うのもあれだけど、多分。

さいごに。
GID診療は、需要に供給が追いついていない(という印象がある)ので、
足元を見ようと思えばいくらでも医療費を吊り上げられる。
少なくとも勤め先などで健康診断を受けているなら、自費診療で3万も出して必要かどうかもわからない検査を唯々諾々と受ける必要はない。
他にも病院はある。

※C医院の実名を出すのはちょっとアレなので、ここでは明かしません。
エナルモンを考えていて、この病院を知りたい方は、個別にご連絡ください。
ついでにサポートしていただけると嬉しいです!

響いたらサポートください!通院費などに充てさせていただきます!