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キモノと祈りの形

上の写真は、先日制作しておりました「古事記ちらし」の完成したもの。

正確に言えば、こちらを細ぉーく裁断して、型(紋)にはめ込み、織りあがった時が完成といえるかもしれませんが…

いや、もしかすると帯などの実用品は、締めていただいた方に寄り添うように使われて初めて完成するといえるのかもしれません。


西陣織だけでなく、キモノの文化には、染めつけたり縫い込まれたりする柄の中に、様々な祈りが込められています。

振袖などの美しくて華々しい衣装にも、そこに選ばれるモチーフ一つ一つに意味を込めて、それを身にまとう人の健康や長寿や幸福への願いが形となっています。

そのような、願いや祈りの込められたキモノを身にまといハレの日を祝う。

また、日常的なことで言えば、自分自身のモチベーションを上げたいときに、縁起のいいモチーフの柄が入った帯を背負い、気合を入れる。など。

私などは普段モノづくりをしているので、動きやすいパンツとラフなシャツのスタイルが多いのですが、人と会う時やお出かけをするときなどに、スーツやオシャレ着代わりにキモノを着ることが多いです。

キモノを着ていて、お洋服と決定的に違うと思う部分。それは、お洋服は体に合うものを着るのですが、キモノは体に沿わせて着るということです。

身にまとった平面的な布を体の寸法に合わせてたくし上げ、ひもで結び、体に沿わしてひだを作ったり、布のしわを伸ばしたり。そして、またひもを結び、沿わせ、布を巻きつけて結び、結び…を繰り返します。何本ものひもで結び、体に沿わせて着つけていきます。

それらは端から見れば、一見めんどうくさいような一連の動作ですが、一本一本のひもがくくられていき、最後、帯の形を整えて帯締めをキュっと結びあげる瞬間に、気合が満ちてくるような心持ちとなります。

まるで、着つけるという行為そのものが、祈りや瞑想の時間となっているようにも思えます。

着つけるという動作自体が、自分自身を見つめる時間であったり。

そして、その動作の際に、どんな柄のものを身にまとうか、帯を結ぶかということで、随分モチベーションは変わってきます。

なので、私なども無作為に柄を作っているように見えて、その中に、それの帯を巻く人への幸福への願いを込めています。

「古事記ちらし」などは、もう、神話を背負うということで、最強のお守りとなるではありませんか?


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ちなみにひきつづいて、別の引き箔(よこいとの一つ)の原紙を作っています。


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こちらの、いちばん上に重なり文字が書かれている和紙は、能の「高砂」という演目の謡本。

夫婦愛と長寿を愛で人生を言祝いでいるという。夫婦愛という限定的な形ではあるけれど、「仲良きことは美しきかな」と武者小路実篤先生もおっしゃっていますし、美しさの形は様々であると私は思っております。


さて、こちらの和紙は銀箔を施した上に「立涌」と呼ばれる文様を刷ったもの。こちらは、二本の曲線で水蒸気を表現し、水蒸気が涌き立ち上っていくという様子をあらわしたもので、縁起の良いものと言われています。


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これらのような数種類の和紙をちぎり、またまたコラージュしていきます。

無心に和紙をちぎっていって、立涌く柄の和紙の上にちらします。


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白や金色の透けた和紙は、糊で貼ることで銀の光沢を抑え、下の立涌柄をうきたたせてくれます。

あまりに銀が過ぎると派手に光りすぎてしまうので、調子を抑えるのによい効果を与えてくれるものでした。

もちろん、ちぎって貼るという動作に、「仲良きことは美しきかな」と祈りを込めながら進めさせていただいております。



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フランスからスペインに抜けて進む、サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼旅へいつか出たいと思っています。いただいたサポートは旅の足しにさせていただきます。何か響くものがありましたらサポートお願いします♪