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お題【共感】*言葉のちから

世界中で、花火の代わりに、
在庫整理の、爆弾だとかミサイルだとかが打ち上げられていて、
だけど、テレビでは戦争にいたる経緯の説明は片手落ちだ。

あちこちの災害のニュースは、感傷的な物語ばかりがあふれて、
政府のその後の対応も、どのように復興していくべきかも、
具体的な提言も、なにひとつ継続しない。

共感するということは、大きな「世論」といううねりを引き起こすから、
恐れる人々が存在するせいだ。

だから共感を許す物語や、ごく浅いニュースだけを垂れ流しつづける。

言葉は思いを刺激する。

「可哀想で見ていられない」という思いは、
生きている人の最大公約数で共感できると思う。

それは誰の、どんな非難も封じ込めるほどに。

喜びよりも、悲しみで、人と人は繋がってると思う。

悲しみ以外の思いは、それぞれの価値観や好みがあるので、
共感するストライクゾーンが広くて迷う。

価値観でいうならば、たとえば「お金がなくて困ってる」という場合。

「資産が三億円しかない」ので困る人もいれば、
単純に「手元に現金が無くて」困る人もいるし、
「通帳の残高すらマイナス」で困る人もいるし、さまざまだ。

誰に共感できるかと言えば、自分の生活環境や経済状況、
さらに価値観、と順を追って比較する必要が出てくるので、
実に「共感」という言葉を口にするのは難しい。

「思い」だけに限って抜き出してみると、「可愛い」を、
御しがたい言葉の筆頭にあげたいと思う。

これに綺麗な形容をすれば、変幻自在の魔法の言葉だと思う。

「可愛い」は本来、気の毒だとか不憫だと言う意味であったせいか、
その言葉の使用範囲は恐ろしく広い。

「健気だ」という感情の発露に使えば、
もはや愛らしいというような意味とは、少々ベクトルが異なってしまう。

「あの人可愛い」と年代を問わず誰かを評する場合、その真意は不明だ。

「若作りをしてイタイ」という皮肉もあれば、
会話が通じなくて、遠慮がちにバカにしている場合もある。

おまけに「ブサかわ」「キモかわ」と評されては、
不細工は不細工でしかなく、「そこがいいのよ」と言えなくもないが、
「キモかわ」となると、気持ち悪いと可愛いがせめぎ合った表現なのか、
その割合は7:3なのか、6:4なのか、まさかの5:5なのか理解しがたい。

分からなくなるということは、
世の中の人間関係を潤滑にするために、
オブラートに包みすぎるのを越えて、
目くらましの魔法をかけているのかも知れない。

とりあえず「可愛い」を付ければ許されるだろう、というような。

「可愛い」を使う時に、かように多くの人が共感を覚えるのか疑問だ。

「可愛い」は褒め言葉の範疇に入れるには、微妙だ。

褒め言葉で使うとしたら、前後の文章や会話に充分気を付けて、
明確な意図を表さなければいけない。

例えば赤ん坊は、小さいせいだけでなく、
そのむっちり具合が等しく可愛いのだけれど、
単純に外見的な容貌を指していると誰もが思う。

100%の自信はないけれど。

しかしむっちり具合はふてぶてしさを感じる場合もあるし、
髪もなかったり、湿疹に見舞われていたりすれば、
「可愛い」が使いづらくて「元気そうね」と誤魔化してしまう。

「可愛い」は明確さが必要だからだと思う。

反対に、漠然と当たり障りなく「可愛い」と発言することもできる。

そうすれば「どこが可愛いと思ったのか」を、
聞いた人や文章を読んだ人に、答えを預けることができるからだ。

こういうところが可愛いと思う、という自分の意見に対して、
100人が100人共感してくれることはありえないので、
「小さい」「幼い」「愛嬌のある」人や様子が、
「可愛い」に当てはまるものなのだ、と最低限、熟知する必要がある。

しかし「小さい」「幼い」は誰もが分かりやすいが、
「愛嬌のある」という意味はこれまた難しい。

「しつこい」「精神年齢が低い」「無駄に笑って誤魔化している」など、
ものおじしないことや、愛想の良さとも似ているからだ。

「可愛い」と自分が評された時、
どこのどんなところをそう思うのか、かなり気になるところである。

子供に使う場合には大抵問題はないが、
大人に可愛いと使う場合に、かなり込み入った筋道を明確にしたとしても、
価値観と好みが一致していなければ、共感を呼ぶには、
かなり遠い道のりを目指さなければいけないかもしれない。

常日頃、多くの人が納得する言葉のセンスを研ぎ澄ます必要がある。

ここまで考えていたら、(もしかしたら、子供向けの童話は、
共通の価値観を植えつける洗脳道具なのかもしれない)と、思い至る。

「カエルとは結婚したくない」「カエルは醜い」
「カエルは嫌われ者」とかね。

私はそのせいか、先天的な感覚か、カエルは苦手。

カエルのどんな物語も、
主人公がカエルだというだけで、内容がなかなか頭に入ってこない。

今、もしもこのパソコンの陰からカエルが生まれて来たら、
きっと二度と生まれないようにと、パソコンを即処分してしまうと思う。

アンパンマンは子供達に愛されているけれど、
大人になってから知ったので、顔をちぎって食べさせるなんて、
鬼太郎に負けず劣らず、ホラーだと密かに思う。

共感するということは、
このようにとても難しいことなのかも知れません。

万華鏡


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